第13話
アジトの場所を聞き出した凌馬は、荷台にいるミウを外へと連れ出した。
「パパ、おじちゃんたちどうしたの?」
「うん、なんか具合が悪くなっちゃたみたいなんだ。とりあえず、馬車の荷台に乗せておくよ。」
(いや、お前がやったんだろうが!)
盗賊たちは心の中で突っ込んだ。もちろん怖くて声には出さないが。
「おじちゃんたちかわいそう。」
「そうだね、ミウは優しいね。」
ミウの頭を撫でながら、盗賊たちに視線で余計なことをしゃべったら殺すと威圧していた。
盗賊たちは、激しく首を縦に振りながら愛想笑いをしていた。
アジトの近くまで来た凌馬は、どうしたものかと考えていた。
(ミウをこの場に一人で残すのは論外として、ミウを連れていってどうやってゴミ掃除をするかだな。入り口の見張りが二人か。)
「ミウ、ちょっとパパとゲームをしようか?」
「ゲーム?」
「そう! ミウがここで目を瞑って十数えてからパパを探すんだ。見事見つけられたらお菓子を一つゲットできるんだ。どう、やってみる?」
凌馬の提案にミウは頷きながら答えた。
「うん、やる~!」
「じゃあはじめるよー。」
「いーち、にーい────。」
「うおおおおおおお!」
「な、なんだてめえは!」
「そこで止まりやがれ!」
「うるせー! 時間がないんじゃー!」
ズドン! バシン!
見張りの二人を高速で吹き飛ばした凌馬。
「じゅーう! パパ見つけた!」
「あちゃー、見つかっちゃったか? ミウはすごいなあ!」
そう言って駆け付けてくるミウを抱っこすると、頭を撫でる。
《なんだこれ?》
兎に角、無事に入り口を確保した凌馬は、ミウを連れて盗賊アジトに侵入した。
中に入ると通路が延びておりしばらく進むと、広間へと辿り着いた。
そこには、五人の男たちがたむろしていた。
「なんだ、貴様は?」
「さあミウ、もう一度かくれんぼをするよ!」
「うん! いーち、─────。」
「いきなりなにやってんだお前らは?」
盗賊たちが侵入者の行動に戸惑っていると、凌馬は再び動き出した。
「じゃかあしいわー! てめえら全員死んどけや、ボケ~!」
バキ!ドゴ!ズドン!バタン!ゴーン!
盗賊たちは壁や天井、床に頭を突っ込んで全員伸びていた。
「じゅーう! パパまた見つけた!」
「あちゃー、ミウは見つけるのが天才だな~。」
ミウを誉めまくる凌馬。
「パパ、おじちゃんたちどうしたの?」
地面や壁、天井に頭を突っ込んでいる盗賊たちを見て、ミウは凌馬に尋ねてきた。
「おじちゃんたちもかくれんぼしてるんだよ。直ぐに見つけちゃうと可哀想だから、気づかない振りをして上げようね。」
「うん! みんなどこに隠れたのかな~?」
ミウが一生懸命気づかない振りをしていた。
そんなミウを抱えた凌馬は、奥にある扉を開けた。
その部屋の中には牢屋があり、その中に閉じ込められている人達が十人近くいた。
「貴方たちは誰ですか?」
「お願いします。どうか助けてください。」
牢屋に閉じ込められている人達が、凌馬に助けを求めてくる。
凌馬はミウを下ろすと、徐に日本刀を抜き放ち鉄格子を斬り裂くと、鉄格子は音を立てて床に転がっていた。
「なっ!」
「鉄を斬った?」
皆が驚いているところ、凌馬は話始める。
「貴方たちが盗賊に捕らえられた人たちで間違いないですね? 他に人質は居ませんか?」
「この部屋に連れてこられたのはこれで全員です。他の方は見ていませんので分かりません。」
代表して女性が答えた。
すると、部屋の入り口から男たちが数人入ってくる。
「誰だ? 俺たちの仲間にこんなことしやがったのは!」
そう言ってきたのは、髭を長く伸ばしたいかにも盗賊の親分といった風貌の男だった。
「お前たち、ここから逃げられるとでも思ったのか? 死にたくなかったらおとなしく中に戻っていろ!」
そう脅迫をして、人質たちを中へと戻そうとする。
「おじちゃんたちもかくれんぼするの?」
「ああ? なに言ってんだくそがき!」
「みゅ!」
ミウが怯えて凌馬の後に隠れる。
「ミウ、大丈夫だよ。このおじさんちょっと興奮しちゃってるだけだから。少しだけ、お姉ちゃんたちのところで待っててくれる?」
凌馬は人質の女性の一人にミウを託す。
「ちょっとの間ミウを見ていてくれ。外の音が聞こえないように耳を塞いでてくれ。」
「わかったわ。貴方は?」
「ちょっと
「さてと───、てめえ人様の娘になにしてんじゃボケが! ミウが対人恐怖症になったらどう落とし前つけるきじゃワレー!」
ドゴン!ドゴン!ドゴン!ドゴン!
凌馬はそうぶちギレると、盗賊の親分の頭をつかみ壁に何度も打ち付けていた。
その後壁に顔を擦り付けながら言った。
「てめえ、ミウに謝れや!」
「ひい、ゆ、許して!」
「許してだあー? なに上から目線なんだよ、殺すぞハゲ!」
凌馬は親分を床に転がすと、股間を目一杯蹴り上げる。
バゴン!
「ぎぃえええええ!」
ガク。
親分はあまりの痛さに気絶する。
凌馬は以前取り出していた、地球産のもっとも辛いと言われるソースを取り出すと、親分の口に流し込む。
「&<$&!#¥=@&#─────。」
声にならない悲鳴を上げる親分。
「てめえ、なに寝てんだよ。眠いならミウに謝った後で永遠の眠りにつかせてやるわ!」
あまりの凌馬の酷さに、人質や盗賊の仲間たちはドン引きしていた。
親分は、ミウの近くまで凌馬に引き摺りながら連れていかれた。
「さあ、ミウ。おじちゃんがミウを驚かせたのを謝りたいって言ってるよ。」
ミウは凌馬の声に顔を上げる。
「お、お嬢ちゃん。驚かせてすみませんでした。」
だが、その親分のボコボコにされた顔を見てミウは怯えて顔をそらすと女性の体に抱き付く。
ブチ!
「てめえ、ミウが余計に怯えただろうが! 百編殺したろかー!」
「ひいいい! ずみまぜん。」
どう考えても、今回は凌馬のせいなのだがそんなこと聞く耳を持つはずもなく、親分は凌馬にさらにボコボコにされ気を失ってしまった。
「さてと、残りの奴等も
そう言うと、実に良い顔で嗤いながら盗賊たちの方を振り向いた。
盗賊たちは、部屋を飛び出すと我先に外へと逃げ出そうとする。
その先は地獄だった。
後に、このとき助け出された人質たちは語った。
あれは人の所業ではないと。悪鬼羅刹がそこには存在したと言い、詳しいことは決して語らなかったと言う。
一つ確かなのは、盗賊団は壊滅しその多くのものは精神を病みなにかに怯えるようになっていたらしい。
「ふうー、さっミウ。もう怖いおじちゃんたちを懲らしめたから大丈夫だよ。」
凌馬は、ミウを抱き抱えるとあやしながらそう話し掛けた。
「ほんとう?」
ミウは顔を上げて周囲を見渡すが、人質となっていた人たちは顔をそらすとなにか見てはいけないものを忘れるかのように、何処か遠くを見つめていた。
その後、人質たちを救出した凌馬は
他には人質になっていた者もおらず、商人たちの乗っていた馬車も取り戻せ、凌馬は商人たちに感謝をされていた。
若干凌馬の事を怯えた目で見ていたのは、きっと勘違いだったんだろう。
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