第2話

中学三年生 春

僕は卒業式を終え、玄関で姫花を待っていた。

隣では不良達が何故か殴り合いをしていた。

その様子を冷めた目で見ていると。

「ごめんなさい待ったよね?」

背後から声がした。勿論、姫花の声だ。

「そんなことないよ。じゃあ帰ろうか」

僕達はあまり歩きながら話す事は無かったが、それは嫌な沈黙ではなかったし、むしろ幸せな沈黙だった。

それに、赤いマフラーをした小柄な彼女が隣に居るだけで幸せを感じた。

だった。

突如強い風が吹いた。

雪を被りながら電線に止まっていた烏は、冬の空に飛び立ち、少し前を歩いていた女子高生達は驚きの声を上げた。

不意に上の方から軋む音が聞こえた。

しかし、気付いた頃には遅かった。

と鉄と鉄が擦り合う音がした。

次の瞬間、

鉄の塊が姫花の上に覆い被さった。

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彼女が居なくなった後の物語について はとむぎ @hatomugi720

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