ウケモチシステム:20

「ソフィー。申し訳ないんだが僕の頭から出てくれないか。ソフィーが僕の眼を使っているせいで未来がよく視えない。焦点を結ばないんだ」

未来視が上手く行かないのか、不満げに文成がソフィアに言う。

『私、あなたの電脳をそういう風には作らなかったんだけど、そういうものなの?』

「ああ。今まさに未来視を使っている最中なんだが、君の使っている眼に未来は見えるかい?」

『ううん、普通の視界が視えるだけ。電脳を同期させている時みたいな見え方はしないわ』

「ほら、だから焦点を結ばないんだ。電脳は電脳でも生身の時にはこんなことにはならなかったから、間違いなくソフィーが僕の電脳を間借りしているせいだ。分かったらどいて欲しい」

それに対し、ソフィアも少し不満げな声を出す。

『仕方ないか……。未来視のせいでどこか変なところに行ったりしない?』

「大丈夫だと思う。駄目だったらその時はその時さ」

『文成がこっちに来て私たちを守ってくれた方が助かるんだけど』

まだソフィアの声は不満げである。

「義体を調べるときに『わかった』ってソフィーは言ったよね?僕はそれを『僕の代替になるような秘密兵器を隠している』という意味に受け取ったんだけど、僕は何か間違えたかい?」

『……秘密兵器の出番があったら文成に費用を請求することにする』

「ああ、それでいい」

『通信回線は繋げたままで大丈夫?』

「問題ない。そっちの方はとっくの昔に慣れてる」

文成は深呼吸をして、改めて未来視を使った。そして、未来視を使ってみた文成は、自分の眼を人生で初めて疑うこととなる。

「ソフィー。今視た未来が飲みこみきれないんだ。聞いて欲しい」

『どんな未来を視たの?』

「僕は未来視をする時に、少し両目に力を入れる。細かい物を見る時のように両目に意識を集中させて、遥か彼方の地平線の向こうに焦点を合わせるんだ。この腕を使った魔法も、それとほぼ同じだった。意識を集中させる先が、両目か腕かの違いだけだ。僕はずっと魔法を使ってきたのか……?」

『文成。とにかく試してみたら?』

「そうだな、その通りだ。やってみなければ始まらない。行くぞ、白雪文成」

自分にそう言い聞かせるように言って、文成は右手に意識を集中させた。

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