ウケモチシステム:19

その木材パーツは船のような形をしていた。

『もう手の支配権は返すから、持ってみて』

「右手の方はどうする?」

『右手の方は左手と同じ分解の仕方を今実行してる。直に分解終わるはずよ。それで、どう?何か気がついたことある?』

「ふむ……」

その木材パーツは、とても軽かった。縁の部分がそれぞれ尺骨しゃっこつ橈骨とうこつの代用として機能しているように見える。細かい傷が多くついていて、パーツ全体を覆うように墨のようなもので文様が書いてある。

「これは文字だ。西暦1000年代の古代文字が書いてあるんだ。どこから始まっているんだろうか……」

『文成、古代文字が読めたの?』

「実家にそういう書物がたくさんあったからね。ソフィーもたまにはもっと昔のことにも目を向けてみたらいい……『空に天神、森に地祇ちぎ海神わだつみの音よ響け』という言葉が少し形を変えながら繰り返されているんだ。一番多いのは今の言葉の繰り返しだな。ソフィーは聞いたことあるかい?」

『ない。ごめんね。右手の分解も終わった頃かしら。どう?何かエラー発生してる?』

「いや、何もエラーはない。右手の分解も全部終わっている。やはり同じパーツが右手にもあるみたいだな」

分解されたパーツ群は左右対称に並んでいた。木材パーツがあるところも同じである。同様に文様が書いてあるのだろう。

「ソフィー。僕の右手をこのNEの右手と換装することはできるかい?」

『できるけど、違和感が出るわよ?試してみるの?』

「やってみよう。何か分かるかもしれない」


『――換装終わり。どう?動く?』

文成は自分の右手を開いたり握ったりしてみる。手は動くので、手首や肘や肩を回してみる。やはり問題なく動く。力をこめて見るが、やはりタイムラグが全くなく動く。

「動くけど、大分短いな。違和感がすさまじい」

『当たり前よ。体格が全然違うんだから』

「さて、推定魔法の腕を手に入れた、んだよな?」

『たぶんね。もしかしたら足の方も何か関係あるかもしれないけど、ひとまずあからさまに怪しいのは木材パーツだもの』

「……どうやって魔法を使うんだろうか?」

文成は試しに未来視を使って探ることにした。

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