白雪文成の事件簿:ウケモチシステム
ウケモチシステム:1
†12月1日朝 白雪文成宅
「そういえばハル、頭痛はもう収まったのか?」
陽奈が朝食を食べる中、文成が訊く。ネルから帰って来てからというもの、陽奈はずっと頭痛に悩まされていた。日常生活を送れないというほどではないものだったのだが、日夜止むことがなく、頻繁に少し苦い顔をしていた。
「もう大丈夫。全くなんともない。病院でも何ともないって言われたけど、いったいなんだったんだろうね。楓さんに聞いても『大丈夫ですから気にしないでください』しか言わないし」
「さぁね。……ところでハル、もう一回
文成はこの一月ほどの間、暇を見つけてはヨルムンガンドに通っていた。その結果として得られたことは以下のようになる。
ひとつ。ネルは地球外のどこかであるということ。太陽が見えないのに昼のように明るかった謎は未だに解けていないが、重力が1Gとは微妙に異なったこと、植生・生態系が地球で見られるものではないこと、遺伝子構造が全く異なることは分かったので、そう結論づけた。そうなると、楓の使った「雨岡流魔法術」というものは惑星外に人間サイズの物体を全くの損傷なく瞬間的に転移させる技術ということになる。言い換えれば、
ふたつ、「剣の護符」は何の変哲もない榊の木材と市販品の紐で構成されていたらしいこと。つまり、先の魔法術は既存の科学で再現しうるということである。この事実には文成も自分のセンサーの故障を疑った。しかし、センサーの故障ではないことは自分の手に搭載された重量計のデータが示している。魔法の持つ神秘性に頭を悩ませたが、いかんせんデータが少なすぎる。楓は魔法のことを「近しい人間にすら秘匿しなければならない技術」だと言っていた。そうなれば、残雪派全体に魔法に関する技術・知識の提供を求めたところで得られる情報はないだろう。
「絶対、行きたくない。確かに空を飛べるのはちょっと面白かったけどそれとこれとは話が別。空を飛びたいならMPFと対応のソフトがあればそれで済む話だもん」
「確かに」
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