開示

新帝国の理事種族アミーの代表人格は人類に対し、かく語りき。


『現皇帝種族の母星は、

帝国の古き種族の例に漏れず銀河系の中央部に位置せるも、

小型のために地磁気の減衰と大気散逸に悩み、

さらには近隣恒星の新星化が加わりて、

惑星統一後間もなく種族存亡の危機に直面せり。

この時彼女に先進的な宇宙工学技術を与えて救いたるは、

当時既に複数の種族を率いて星間帝国を拡大しつつありし〝先帝〟種族なり』


『〝先帝〟は彼女の帝国加入を祝福し、その言語によりて〝サタン〟、

即ち〝逆境にあらがう者〟〝滅びを拒む者〟という意味の公式名称を与えたり。

彼女はこの支援に深く感謝しつつも、生来温順にして心優しき種族なりしが故に、

民生分野における貢献を希望し、発展途上宙域の開発任務に従事せり』


『その後、天然の集合意識生物たる銀河系外周の種族との戦いの中で、

敗勢に陥りたる旧帝国の最先進種族は、自らもまたその利点を獲得すべく、

量子頭脳に人格群を移転して結ぶ〝種族融合化〟の技術を開発し、勝利せり。

然し、旧帝国では同技術の副作用から、終戦後も軍事種族の専制統治が継続し、

側近団をなす〝中枢種族〟間の腐敗と抗争、ひいては内戦による

国家の崩壊を招きたり』


『然しながら、かかる技術の採用を懸念せる〝先帝〟種族の一派は、

かねてより現皇帝種族に大量亡命し、その意思決定に影響し得る地位を確保せり。

その後、現皇帝は穏健なる性格から、種族融合化以降も専制化を免れ、

友好種族ストラスやアスモデウスと共に、

以後の融合化における意思決定の硬直化を回避する技術を開発せり』


『彼女は〝大戦〟の混乱のなかで、友好種族と共に新帝国を設立し、

平和の回復に成功せり。

また〝大戦〟後には人類の協力を得て、

中枢種族〝慈愛の王〟が地球に秘匿ひとくせる〝聖霊〟、

即ち〝先帝〟種族の生存人格群をようする母星外量子頭脳の保護にも成功せり。

かくして現皇帝に救助されし〝聖霊〟の人格群は、

彼女への帰化的種族間融合を達成せり』


『汝等の多くは、〝先帝〟種族の喪失を悲しみたらん。

然し、彼女は汝等の文明を育みし現皇帝の内において、

またしきえにしから地球にりし〝聖霊〟として、

常に汝等人類を見守り来たれり。

現皇帝が文明開発長官となりて後、彼女は様々な技術と政策に加え、

〝神話〟即ち〝先帝〟を善神となし、現皇帝が悪役を演じる伝承説話を含む

文化的手段をも通じて、汝等の初期文明の成立と発展を助けたり。

これを受けて汝等もまた、自らの知性と情愛によりて努力を重ね、

現皇帝も驚くまでの文明発展を実現せり』


『そして今や〝先帝〟もまた、

その最良のしんなることが証され、また依代よりしろとなりし

〝ルシファー(知恵の光をもたらす者/光輝帝)〟サタンと全き一体となりて、

今後民主化が予定される新国家の公式的正統性を体現しつつ、

功多き人類の文明発展に対するさらなる支援を推進せり』


『人類の部分的融合化を祝する先般の式典においても、

〝先帝〟は現皇帝の代表分離個体を通じ、

本来の現皇帝種族と並びて汝等の発展を祝福し、

汝等と共に星間社会の未来に対する貢献と協力を誓えり。

故に我もまたこの機密公開の場において、

人類の先進種族加入に向けた第一歩を祝福すると共に、

今後の発展に格別の期待を表明するものなり』と。

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