第20話 コネコネくちゅくちゅ


 多分、最初から付けていなかったのだろう。

 それを付ける必要性がなかったのか、或いは付けるという習慣がないのか、どちらにせよ言えることは一つ。


 リッカはさらけ出した胸を隠すつもりはないようだった。


 僅かな膨らみを見せる胸は未成熟で、官能的というには程遠い。

 だからこそなのだろう、先端にある淡紅あわべに色をした突起は小さな胸の上で殊更ことさらに性を主張していた。


 ロリ顔の猫耳獣人が巨乳という爆弾級の光景ではないことに、禎太はほっと胸を撫でおろ――している場合ではない。


 例え小さくても胸は胸である。

 全国一千万のケモナーが発狂しそうな、幼い獣人ネコ娘の生まれたままのおっぱいである。


 当たり前の事実を受け入れたとき、その胸を見続けていた罪悪感と羞恥しゅうち心がどっと溢れてきた。

 禎太は視線を下に向けると、リッカに声を掛けた。



「ご、ごめん、その気はないから取り敢えずワンピースを着てくれないかな?」


「なんでそんなこと言うのですか? 誘ったのは禎太さんです。男の方にあんなに強く押し込まれたの初めて、です」



 リッカが一歩前進。

 禎太は一歩後退して、手をブンブンと振る。



「いやいやいや、誘ってないしっ。それに強く押し込んでって言ったのはリッカだし、大体耳の付け根が性感帯だって知ってたら押さなかったよっ!?」


「でも押しました。……リッカ、すごく気持ちよかった。気持ちよくて、だから……禎太さんともっと気持ちいいことしたくなっちゃいました」



 リッカが更に前進。

 禎太も歩幅を合わせるように一歩後退した。



「したいって何を――わっ!?」


 

 そのとき、右足のかかとが石か何かに当たる。

 体勢を崩した禎太は、後方に倒れ込むと尻餅を付いた。


 2度目の尻への衝撃で、消え去ったはずの痛みがよみがえる。

 それは一瞬、自分の置かれている危機的状況を忘れるほどの――。

 だから意識が再びリッカに向いたとき、彼女の予想だにしない姿勢を目にして、禎太は驚きから口をあんぐりとさせたのだった。



「……したいって、コネくちゅに決まってるじゃないですか」


 

 眼前のリッカは四つん這いになっていた。

 上半身を下げて、下半身を突き上げたその様は猫の伸びそのものであり、ネコのアニマライトであるリッカには何の違和感もない、むしろ様になったポージングと言える。



「コ、コネくちゅ? コネクトじゃなくて?」



 上にグイっと突き出したまん丸のお尻から、尻尾が伸びているのが見えた。

 ゆっくりと不規則に動くそれは単なる尻尾であるのに、やたらとなまめかしい。

 そしてリッカという全体像を見れば、それは妄想を形にした獣人系同人漫画のようにの一言に尽きるものだった。



「リッカの中でするから、コネくちゅです」


 

 そしてエロいことを臆面もなく言い放つリッカ。



「ま、待てっ。コネくちゅもコネクトもダメだってのっ! 落ち着け、リッカ。君には絶対まだ早いから……っ」


「禎太さん、さっき自分が具体的に何をすればいいのか教えてくれって言ってましたよね? それ、リッカが教えてあげます」


「へ? リ、リッカが?」



 リッカのあどけない顔に、小悪魔のそれが宿ったような気がした。



 「リッカといっぱいいっぱいコネくちゅして、たぁくさん子供を作るんです。それが男である禎太さんの役目です」


「いや、確かに具体的なんだけどそんな少数増やしてもなー、はは」


 

 にじり寄ってくるリッカから逃れようと、禎太は腰を地面に付けたまま後ろへと下がる。

 しかし後頭部が何かに触れてそれ以上、下がれなかった。


 ハッと振り向く禎太。

 そこには、リッカによって発現された魔法の壁があった。


 そして魔法の壁の向こうには大量のグレムリン。

 いつの間に増えたのか、数にして30数匹のグレムリンがまるで禎太とリッカの情事を観覧するかのように、黙って突っ立っていた。


 しかし朝までぐっすりのはずなのに、なぜ起きているのだろうか。



「コネくちゅを見せつけてやるのです。だから魔法は解除しました。さあ早く始めるニャァ」


(なーるほどね。――いやいやいやっ!)


 

 リッカが四つん這いのまま更に迫り寄る。

 あっと思ったときには、彼女は禎太の腹の上にスルリと乗っていた。

 

 肘を地面に付けて僅かに背中を上げている体勢の禎太を、見下ろす形のリッカ。

 つまり、禎太の目と鼻の先にはリッカの淡紅色の突起があるわけで、彼女が少しでも体を前にすれば禎太の顔に触れてしまう状況でもあった。


 離れてくれ――ッ!!


 そう声を出そうとしたとき、禎太は自分の股間にも言われぬ違和感を覚えて、思わず「ぬほぉっ!?」と間抜けな声を出す。


 感覚的に自分の股間に巻き付いているであろうそれは、柔らかい何か。

 一言で言えば“モフモフ的”なものであり、一体何なのだと横から自分の下半身に目を遣る禎太は、そしてその光景に絶句した。


 





「ふふ、驚きましたか? ネコ系のアニマライトは自分の尻尾を自由自在に動かすことができるんです。こんな風に――」


 リッカの尻尾が動く。

 同時に禎太の股間がキュゥゥっと緩く締め付けられた。



「はぅあっ!!?」



 痛くはない。

 痛くないどころか、気持ちよかった。

 

 正に異次元の体験。

 これは癖になるッ!!

 

 と、言っている場合ではない。

 どう乗り切るかはあとにして取り敢えず――、



(『Eエロティックモザイクフィールド』発動せよぉぉぁあぁっ!!)

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