第四十話
王都へと迫る、
俺達は劣勢を覚悟の上で、それぞれ手に武器を持ち、奴らに向かい駆けていく。
だが……。
「さてと、それじゃまずは圧倒的数的不利をどうにかしねぇとな」
ギスタは突然、駆けるのをやめ立ち止まり、地面を凝視した。
その行動に俺とヴァイツ、ノルンも振り返るが、地面を見ていたギスタはやがて「よし!」と何かを思いついたのかのように、地に指を突き立てた。
「見てな、アラケアさんよ。気を操る技術は何もあんたらライゼルア家の専売特許じゃないんだぜ。喧嘩別れした親父に頭を下げてまで昔、失敗した奥義継承の儀に再挑戦してきたんだ。到着早々、この技が役に立つ時がやって来て何よりだぜ」
ギスタが指先に念を込めた。するとどうだろう。
地面がせり上がり、人型の何かが無数に形作られていった。
何十体、いや……何百体と。
「……凄い、何て数なの……何なの、この力……? まるで御伽噺に出てくるゴーレムみたいじゃない」
ノルンは驚きの表情を浮かべる。俺とヴァイツも同様だった。
「ゴーレムか。ま、正解だな。名付けて秘技『
ギスタの掛け声と共に、ゴーレムの数十体は破壊された塀の元へと移動していき、残りは笑みを浮かべながら、腕組みをしているギスタの背後に勢ぞろいした。
「へっ、どうだ、アラケアさんよ。何か感想は?」
俺はギスタが起こした技の一部始終を目を見開いて見ていたが、その問いにやがて微笑み返すと答えた。
「……やはり世界は広いようだな。こんな技の使い手がいるとは俺は今まで聞いたことすらなかった。お前達、暗殺者達が生きる裏社会と言うのも相当、歴史が深いということを思い知ったよ」
実際、俺は気を操る技術はライゼルア家とクシリアナ家にのみ伝えられると思い込んでいたが、それは思い上がりだったと、今のギスタを見て思い知らされた。そしてこの男が味方として俺達と肩を並べている事実に、これ以上ない心強さも。
「よし、それじゃ今度こそいくぜ、アラケアさんよ。あちらさんももうご到着のようだしな」
「ああ、頼りにしている、ギスタ。勝つぞ、絶対にな」
「……ああ、言われるまでもねぇ!」
俺達は何百体ものゴーレム達を率いて目前まで迫った
敵味方が入り乱れ、俺達は無心に己が手にした武器を振るい、そしてゴーレム達はその巨体で壁となり、
例え一体でも王都内に奴らを入れてしまっては、俺達の負けだ。
だから俺達はどうしても守りに入らざるを得なかった。
一瞬で戦況を覆してしまうであろう、破壊の力を持つあの魔神の
「……やっぱり気になるよね、あのでっかいの。さっきの攻撃の後から完全に沈黙したかのようだけど今度、同じような攻撃がきたら……王都内に大きな被害が出る可能性もある。だから一層、不気味なんだよね。今、まったく動きがないのがさ」
「案外、動けない理由でもあるのかもしれんぞ。いかにあの
俺とヴァイツは
だが、その時だった。王都の方向から、威勢の良さそうな男の咆哮が聞こえた。
「でやぁああああああっ!!! 俺様は元聖騎士隊が一人、ハオランなりぃ!! てめぇら全員、一匹残らず俺様の戦槌で叩き潰してやらぁ!!!」
巨大な戦槌を振り回しながら、ハオランを名乗る男は瞬く間に戦場であるここへと飛び入り参戦してきた。
「あいつ……陛下から降格をくらった元聖騎士のハオランじゃない。どこへ行ってたのかと思ったら、やっとご到着って訳ね」
ノルンは武器を振るいながら、誰に言うでもなく漏らす。
「はーはっはっは! アラケア殿、俺様が来たからには安心してくれ! ようやく俺様の力を発揮するための理由が出来たんだからなぁ!! 王国のため! 陛下のため! あんたの力になろう!!」
「聖騎士隊のハオランだな。久しぶりだな、加勢に感謝する。見ての通り、この国に未曽有の危機が迫っている状況だ。お前の力、有り難く借り受けよう」
俺達は新たに加わったハオランと共に、
一時的なことかもしれないが、俺達と奴らの戦いは確実に拮抗していた。
だが、このままではいずれ消耗した俺達は劣勢に追い込まれることは必至。
その前に何か打開策を見出さなくては……と、そう危惧していた時だった。
背後の王都側より突如、大きな声が上がったのである。
見ると崩れた塀の辺りに一般騎士団、黒騎士隊、聖騎士隊の生き残り達が集結し、こちらへと走り向かってきていた。
「あいつら……ふっ、ようやく逃げ場などないことに気づいてくれたようだな。そうだ、王都を落とされれば俺達は
俺は集まって来た黒騎士隊と聖騎士隊の白騎士達に指示を出すと、攻守が交代したことを皆に知らせるかのように、炎の煉獄鳥を体内に宿らせた。
そして
「あのデカブツの元まで一気に突っ切る! 勇気のある者は俺に続け!」
俺は先陣を切って、
確かな攻略の策がある訳ではない。
だが、その糸口を何かしらでも見出すべく、ただひたすらに魔神の
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