第99話 リョウちゃん、使命を帯びる。

「とにかく、だ。地獄の革命だってなぁ、あれは東雲に頼まれたから『地獄を』変えることに同意したんだ。六道がどうとか、そんな大それたことまでやるつもりはない」


 リョウに化けてあんなことやこんなことを模していたら、本気で顔面を殴られた創造主は「自分の創造物に顔面パンチ食らった」とショックを受けていたが、リョウから「罰としてハリウッド女優の姿になってM字開脚」の刑にさせられたらウキウキしながらそれを実践していた。


「それはそうとあのハリウッド女優、すげぇパンツ履いてるんだな。パンツの意味あるのかこの穴」


「いやいや、これはわたしのです。主だけに」


「上手いこと言ったつもりか」


 リョウは白目剥きそうになった。


「創造主が下着姿でM字開脚して見せてるんですから、やってくれますよね? 個別指導地獄」


「個別指導地獄とか、なんかの塾じゃあるまいし………なんで俺がそんなことしなきゃならんのだ」


「えー、ここまでさせておいて!?」


 セクシーなハリウッド女優はとっぽい兄ちゃんに変化した。飽きたらしい。


「ってか、あんたが創造主なら、俺の考えとかをコピーして実行する別人を作るとか余裕でできるんじゃないの?」


「ははは。さすがのわたしも魂を増産するのは世界を0から作り直すのと同じくらい大変なのでやりたくないんですよ」


 創造主は困ったなぁ、という顔をしてみせた。


「天界の神仏達に六道輪廻の刷新をあなたにお願いする旨で納得させるには、やはり実績を作ってもらわないと………」


「創造主なんだから適当にパパッとできるだろ」


「人も虫も神仏もみんな魂を持っていますが、神仏などの高等次元の存在は、頭で考えるよりも魂が納得するかどうかで判断する傾向にあります」


 創造主は真剣な顔をした。


「なぜなら魂とはわたしの写し身。つまり細分化したわたしと同じ存在だからです。霊の導きに従うのが一番だと高等次元の神仏たちはわかっているのです。逆に頭の中の知識だけで考えてしまう人間、そして本能だけで動く動物や虫などへと魂からどんどん離れた行動をするものたちは次元が低い世界になっていきます」


「その退屈な理解不能な話、まだ続く?」


「つれないなぁ。とにかく、あなたは現世に戻っていただきましょう」


「は?」


「罪人を個別指導地獄に落とし、罰を与え、浄化して、魂の循環に貢献してください。それが現行の六道輪廻のシステムより良いと神仏たちが納得すれば、改革も進めやすくなります」


「えーと………どういうこと?」


「現世で悪い人間の魂を見つけて、あなたの地獄に落として、罰を与えて、浄化するのです」


「俺一人で? 人間がどんだけいるのか知ってるのか、あんた」


「すべて処理しろとは言いません。あなたが六道輪廻の簡易版としての働きを見せることが重要なのです。あぁ、もちろん、サポートは付けます」


 創造主が指をパチンと弾くと、白い世界に新たな住民がやってきた。


 スーツ姿の獄卒長:東雲。


 巨鬼女の阿傍羅刹:ベアトリス愛。


 金髪赤服の阿傍羅刹:岩本猫又士。


「サポートのほうがめっちゃ強そうなんだけど」


 何が起きたのかわからないと言った顔をしている三人の獄卒を見ながら、リョウは溜息を付いた。


「では弱そうなのも追加、と」


「ちょ」


 止める前に現れたのは、一切闇処の女郎屋で働いているはずの堕天した天女だった。


「ちょっと尻目ちゃん、さっきの接客じゃだめじゃな………あれ?」


 随分離れしたのか、天女は従業員の尻目(妖怪)を叱っている最中だったようだ。


 まさか創造主から「弱そうなの代表」として召喚されたとは夢にも思わないだろう。


「えー、みなさんには今から人間界で働いていただきます」


 創造主が宣言すると、リョウ以外は土下座するような姿勢で頭を下げた。


「うんうん。創造主の声を真っ当に浴びたら普通こうなるよね。どうしてかあなたは平伏ひれふしもしないけど」


 創造主はジト目でリョウを見た。


「そういう反骨精神の魂なんだよ、俺は」


「まぁ、それもアリです。その反骨精神で、あなたがどんな者を、どんな罪状で、どんな地獄に落として、どんな刑罰を与え、どうやって浄化するのか。楽しみに見てますよ。もちろん天界の神仏たちも『創造主が初めて干渉してきた事案』ですから、きっと超注目していると思いますよ」


「ちょっ。いろいろ端折りすぎじゃね? 人間界に戻るって? 俺の身分は? 元の姿で? 住むところは? こいつらも人間に? 悪いやつの見つけ方は? その個別指導地獄にどうやって連れて行くのか? その地獄の使い方とか────おおい!」


 リョウは自分の体が半分透けているのがわかった。


「なんかすげぇ適当な感じで大役仰せつかっちゃってるけど、お前らはいいのかよ!!」


 リョウが土下座中の獄卒や天女たちに問いただすと、それぞれがそれぞれの表情で頭を上げた。

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