第83話 リョウちゃん、お化け屋敷に行く。

 八大地獄の一つ大叫喚地獄。


 その大叫喚地獄の中には十六(と言いつつ十八ある)小地獄があり、その一つが異々転処いいてんしょだ。


 ここに堕ちる亡者は特殊だ。


 元は優れた陰陽師で人々の信用を得ておきながら、占いで嘘をついた者が堕ちる。


 つまり、ここに堕ちるには「優れた陰陽師(占い師)」であるというとんでもないハードルがある。


 偽占い師やイカサマではダメだ。優れている必要があるのだから。


 昔、陰陽や星見で占いを行い、それでまつりごとを執り行っていた時代もある。


 一部の政治家は今でもそれに頼っている。


 その占い師がなんらかの派閥に属していた場合、他国の侵入を許し国土を奪われ、真っ当な意見を出す聖人君子を失う原因となる可能性はある。


 特殊な能力を持っているからこそ、それほどの大罪を背負う可能性もある。


 そのための地獄というわけだ。


 以前はここに落ちた亡者は獄卒にいたぶられ、そうしているうちに自分の父母、妻子、親友などの幻が出現する。救いを求めて駆け寄ると灼熱の河に落ちて煮られる。


 再生して河から出ると、再び家族親戚親友の幻が出現し、今度こそは本物だろうと駆け寄ると地面の鉄鉤で切り裂かれ、上下からの回転ノコギリで切り刻まれる。


 そんな致死性トラップ大好き地獄だったが、今では────お化け屋敷のアトラクションになっていた。


「地獄でお化け屋敷ってどういうことだ」


 リョウが冷めた目でベアトリス愛を見るが「私に言うな」と素っ気ない。


「ただのお化け屋敷じゃない。中は迷路になっていてチェックポイントを上手く通らないとスタートに引き戻される。ゴールしたらご褒美が用意してあるって寸法だ。これなら天国も『良し』と言ったらしい」


「先程言っていた『大叫喚地獄が大変』というのはなんです?」


「この迷路のゴール地点を陰陽師あがりの亡者どもが占拠しちまってさ。途中の迷路にもかなり手を加えやがったせいで、獄卒が最後のところまで行けなくて困ってんだよ」


「ほぅ、そんなキモのある亡者が山内さん以外にいるとは」


 東雲は黒いネクタイを締め直した。


「是非会わなければなりませんね、山内さん」


「え、俺も?」


「ええ。いざとなった時、我々獄卒では亡者に手出しできませんから」


「俺が亡者を叱るわけ?」


「いえ。いざとなったら亡者をぶち殺してくれたらそれでいいです」


「簡単に言うなよ。俺に何のメリットがあるんだ、それ」


「このお化け屋敷は異々転処いいてんしょだけではなく数々の小地獄を内包しています。ここをクリアしたら大叫喚地獄はクリアしたことにして次の八大地獄に行けますよ」


「………そもそも地獄を全部見たらなんだってんだ? 見学しただけで許されて極楽に行けるってわけでもないんだろ?」


「それは────あなたの行い次第ですとも」


 東雲は「ささ、どうぞどうぞ」とリョウをお化け屋敷に案内した。

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