第70話 リョウちゃん、自分?の正体に勘付く。

 天界のエンターテインメント・ショー(という名の賭博)のために爆散したエロオヤジな亡者たちは、ひと風吹いたら元に戻っていた。


 今のはまだ良い方で、たまに超美形な天界の男がブーメランパンツ一枚で降臨して、女亡者たちが浅ましく醜い争いを繰り広げるそうだ。


「で、暴動はどうなった。これ恒例行事みたいに毎回やってんじゃねーの?」


「そうなんですが、たまに天界の思惑を見抜いて、本気で暴動する悪のリーダー格がいたりするので用心のために獄卒も集まっているんです」


「へぇ。そんな骨のあるやつもいるのか」


「良い言い方をすればダークヒーロー。悪い言い方をすれば大悪党。地獄にいるべくしているような亡者でしてね。一度彼が暴動を起こしたせいで、この叫喚地獄が七日間も業火に包まれたことがあります。獄卒は今もそれを【火の七日間】と語り継ぎ………」


「巨神●かよ」


「今はその大悪党が姿を現さないので平和ですね。地獄で平和というのもアレですけど」


「今は? どっか行ったのか?」


「目障りに思われたのか、天界の一存で強制的に輪廻転生させられてしまいましてね。今はどこの世界にいるのやら」


「ふ~ん」


「そうそう。その大悪党はかなりの酒好きの女好きしてねぇ」


「ふ~ん?」


「それに悪党のくせに悪事が許せないっていう勧悪懲悪タイプでした」


「………ふーん」


 勧悪懲悪とは、勧善懲悪……つまり「善を勧め、悪を懲しめる」のに類しているが「悪が悪を裁く」もしくは「必要悪が正義の名のもとに断罪する」ことだと言えばいいだろう。


 悪代官から金を分捕り、貧しき者たちに金を配る義賊────要は良いことをしているように見えるが盗人だ。法治国家のもとでは逮捕されて投獄される存在であり、マスコミは「自己顕示欲のための犯行」とでも書きたてることだろう。


 弱者から寸志を貰い悪者を殺す殺し屋も同様────要は人殺しである。


 人情が通じたり、合法的に裁けない悪を裁くといった「心理的には善」だとしても、懲罰する方法が完全に悪であり、地獄の亡者であっても不思議ではない。


「そんな彼は地獄に対して野望を持っていたようですけどね。何かしでかそうとしていた矢先に強制昇天させられていました。いやぁ、天界の目を欺くのは難儀なようです」


「………」


 リョウは東雲の横顔を見ながら思った。


 それ、俺じゃね?

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