第54話 リョウちゃん、策士になる。

「お、俺からみんなに言いたいことは一つ! もう構わないでくれ! まだ俺をいじめるようなら、こ、こ、これをぶっ放すからな!」


 新川くんの手は銃の重さに耐えられずに震えている。




『いまどき回転式拳銃リボルバーだなんて。ベレッタM92がいいんだけど………』

『あ?』

『スナイパーライフルが一番好きなんだけどレミントンM700とか』

『あ?』




 ここに来るまでの間、新川くんがなにかウンチクをこぼすたびに、リョウは「あ?」という一言で黙らせた。


 どんな代物であろうと、せっかくだ。有効活用する以外に手はない。


「新川くん。こいつら殺さないのか」


 リョウが冷ややかに言うと、新川くんは全力で否定した。少しわざとらしさもある。


「と、とにかく、もう俺に関わらければそれで良しだから!」


「わかった」


 犬殺しは半笑いで言った。


「もうおまえとは関わらない。これでいいんだな?」


 犬殺しの宣言に、鳩殺しと猫殺しは目を合わせる。


 一番怒りに満ちていた犬殺しが簡単に折れたのが不思議だったからだ。


「じゃあ、仲直りの握手しようか」


 犬殺しは新川くんに近寄り手を伸ばした。


「あ、ああ」


 新川くんなら「そんな儀礼もしたくないし、顔も合わせたくない。仲良くする必要なんかなくてお互い無視しあったほうがいい」と思って拒否っていただろう。


 だが、の展開になりすぎて、薄ら寒さも感じながら握手することを選択した。


「!」


 犬殺しは新川くんの手を強く引っ張り、体勢が崩れたところで銃を奪い取った。


「!!」


 銃口は尻もち着いてしまった新川くんに向けられた。超至近距離だ。


「ド素人が。俺はなぁ、外人部隊の傭兵やって8人は敵兵を殺してるんだ」


「傭兵が他人の飼い犬に酒注射して殺すのか? しょぼいなお前」


 リョウは腕組みしていた。まったく動じていない。


「なんで知って………って、さっきから偉そうに、てめぇはなんなんだよ! ああん!!」


 犬殺しは新川くんに向けていた銃口をリョウに向けた。


「いいのか? そんな馬鹿みたいな火力パワーの銃を片手で撃ったら肩が外れるぞ? そうだよなぁ、新川くん」


「う、うん」


「うるせぇ!!!」


 犬殺しは目の前で尻もち付いている新川くんを蹴り飛ばし、改めて両手で銃を構えた。向ける先はリョウだ。


「亡者が亡者を殺すと罪が増えるんじゃないのか?」


「うるせぇって言ってんだろうが!! 死にてぇのか!!」


「やってみろやドブネズミ野郎が」


 リョウが発破をかけた瞬間、轟音と共に犬殺しの手が吹き飛んだ。


「ぎ、ぎゃああああああああ!!!」


 両手を失った犬殺しの頭をリョウが踏みつける。


「いまお前がぶっ壊したの、どこかの獄卒が銃なんだけどよ。新川くんは弾丸が銃身に詰まっているって一発で見抜いたぜ? お前ほんとに傭兵か?」


 弾が銃身に詰まっている時に次の弾を発射すると、詰まった弾丸と発射された弾丸によって銃身が異常高圧になり、分厚い銃身が張り裂けるほどの力で吹き飛ぶ。


 さらに運が悪いことにリボルバーの薬きょうにも引火して爆発したのだろう……犬殺しの両手の先は肉塊になっていた。


 リョウは新川くんが銃を撃てないことをわかっていた。


 だから銃を見せて「脅し」だけに使うことを提案し、それはおそらくすぐに奪われるだろう、ということも想定していた。


 もし、この場が何事もなく解決したとしても、リョウがいなくなった後であればいつでも新川くんから銃を奪い取るタイミングは来る。その時のために、詰まった弾は抜かないように指示した。


 こうも早くその効力が発揮されたのは意外だったが。


「手がなくなったくらいだと、死んだわけではないから体は再生しないんだよな」


 リョウは犬殺しの鼻先を爪先がめり込むほど蹴り飛ばして気絶させると、鳩殺しと猫殺しを睨みつけた。


「お前らはどうしてくれようか」

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