第33話 リョウちゃん、ラウンジに行く。

「おや、どうしました? 今参局いままいりのつぼねさんじゃないですか」


「し、東雲さん。ど、どうも」


 おイマちゃんはトイレから戻ってきた風で突然現れた東雲に、怯えたように頭を下げた。


「ちょっといろいろあって同じ席に寄せただけだ」


 リョウは最後の一本を頬張り、ビールをお代りしようとしたが、東雲に止められた。


「夜はこれからなんですから、次の店で呑みましょう」


「はしご酒か。豪勢だな────じゃ、そういうことらしいから、またね、おイマちゃん」


「は、はい。あの、ありがとうございました!」


 ペコリと頭を下げるおイマちゃんを愛らしく思いつつ、店を出る。


「ありっしたぁ!!」


 自転車の前輪をケツに当てて愉悦に歪んでいる亡者を横目に「払いはどうしたんだ?」と尋ねると、東雲は「経費ですから」としか言わなかった。


 次の店はラウンジ【ヘヴン】という名前の店だった。


「地獄でヘヴンはねぇだろ………」


 苦笑しながら入ると、深めのソファーとパーティードレス姿の女獄卒達に迎えられた。


 中にはB級SFに出てきそうなクリーチャー系獄卒もいたが、他はどれも綺麗どころばかりだ。


 クリーチャーはクリーチャーで女の姿はある程度保っているのでセクシー系であるのは間違いない。


「そういえば山内さんは生前バーテンだったんですよね?」


「ああ」


「キャバクラとラウンジの違いってご存知ですか?」


 東雲に問われ、リョウは苦笑した。


 キャバクラは特殊な店でない限り、20代前半の女性が客席につき、客の男性を接待する店だ。大体キャバクラではおさわり厳禁で、あまりに酷い場合は店から入店禁止を言い渡される。


 この手の業態だと横のつながりが強いので、他の店でも警戒される事になるので注意が必要だ。


 ラウンジはキャバクラよりも定義が曖昧で、キャバクラのようにホステスが接待する店もあれば、バーのように飲む店もある。


 どちらにしても、やや広めの店内でゆったりと落ち着いてお酒を飲む所、というのがラウンジのイメージだ。ここでホステスと酒の一気大会とかをする空気の読めないアホは恥ずかしい。


 ちなみにキャバクラは時間制料金だが、ラウンジの多くはチャージ料金として席代を請求される。


 キャバクラよりも長く楽しみたいのであれば、ラウンジの方に行く方が1時間あたりの料金は安く済む場合が多い。


 ついでに言うとスナックは主にママと呼ばれる店主がいて、その他の女性従業員がいる。軽食を出す飲食店で、アルコール飲料も提供する、というのがなんとなしの定義だ。


 接客も女の子が付くというより、バーに近いものが多い。


「というわけで、ここでまったりと飲みましょう。綺麗どころも多いですし」


「お、おう。高そうだけど………」


「経費ですから」


 東雲はにへらと笑った。

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