第29話 リョウちゃん、端折る。

「衆合地獄の十六小地獄は主だったところは以上で終わりなんです」


 東雲は新橋の繁華街と歌舞伎町の風俗街と渋谷のラブホ街が一つになったようなで言った。


「なんか毎回言ってる気がするけど、十六もあったか?」


「残りは時代に即していないので、ひとまとめにされたのが、ここです」






 ひとまとめにされた地獄。


 例えば鉢頭摩処はちずましょ────。


 僧侶が僧侶になる前に付き合っていた女性を忘れられず、夢の中でエッチした者が落ちる地獄。


「いや………夢くらい見せてやれよ………ひでぇな」


「ひどいでしょう? ひどすぎて天国から『廃止!』と言われましてね」


「それは天国グッジョブだろ」






 例えば大鉢頭摩処だいはちずましょ────。


 出家僧でもないくせに僧であると人を騙し、戒律に従わなかった「ニセ僧侶」が落ちる地獄。


「あぁ、お布施詐欺してるやつが堕ちるのか?」


「そうなんですが、あれ殆ど日本人じゃなくて、日本人僧侶の真似した外国人なんですよ」


「マジか」


「外国人は地元の地獄がありますので、そちらに行っていただきます。なので受刑者がものすごく少ないので廃止されました」






 例えば火盆処かぼんしょ────。


 出家僧ではないのに僧の振りをしたうえで女性に興味を持ったり、身の回りの生活品に執着して正しい法を行わなかった者が落ちる地獄。


「僧侶縛りすげぇな」


「今で言うところの『俺ジャーニー的な芸能事務所に入ってるアイドルなんだけど』的な嘘つく奴のことですかねぇ」


「当時の僧侶ってそういう立ち位置なのか?」


「そうだった時代もあったんですよ。念仏とか説法とか、もうGIGとかライブ的な扱いで」






 例えば鉄末火処てつまっかしょ────。


 出家僧だと詐称し、そのフリをしたまま、女性の舞いや笑い声、装飾品に心引かれてみだらな想像にふけった者が落ちる地獄。


「想像しただけで!?」


「僧侶は基本オナ禁です」


「おい。生めよ増やせよ、はどこいった」


「僧侶は例外です」


「ひどくない? しかも本物の僧侶じゃないんだろ?」


「山内さん。あなたが好きな声優兼アイドル歌手がいますよね? それが当時の僧侶だと思ってみてください。好きなアイドルが男の妄想しまくりでオナニーしまくりとかドン引きでしょ?」


「それはそれでこちらも想像がはかどるし、あの子は早く良い人を見つけて結婚して欲しいわ。いい加減いい年なんだし」


「ほほぉ、それが真性のファン心理なんですねぇ………私の調べによると、好きなアイドルに男がいるとわかったら『処女膜から声が出ていない』とかいうバッシングするものだと思っていました」


「そんな極一部のキモオタと一緒にするなコラ。そんなことよりも、ここはひとまとめになってどんな刑場になってんだよ?」


「そうですね。ここで衆合地獄も終わりなので一息入れますか」


 東雲はにへらと笑った。

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