衆合地獄変

第15話 リョウちゃん、衆合地獄に行く。

 衆合地獄。


 生前に殺生・盗み・邪淫の罪を犯した者が落とされるレベル3の地獄だ。


「昔は【衆合地獄の苦しみは黒縄地獄の10倍】とか言ってたんですがねぇ」


 東雲は右手を伸ばした。


「あっちにある刀で出来た林、ま、読んで字のごとく刀葉林って言うんですけど、そこの上にむしゃぶりつきたくなるような絶世の美女がいて亡者に、抱いてぇ~ん♡って誘惑するんです」


「そこにやたら感情込めて言うのやめろ?」


「まぁまぁ。で、誘惑された亡者は上るたびに刀葉林で切り裂かれ、しかも上っても美女は下に移動して、永遠に出会うことは無い的な…………まぁ、そういう名物だったんです」


「今は?」


「時代によって美女とブスって変わるんですよ。平安時代の美女なんか現代で言えば顔で笑いを取る系のお笑い芸人ですからね。それに人によって美人の基準が随分と広がりまして。私はこれ美人だと思うんですけど、山内さんからしたらそうでもないんじゃないですか?」


 東雲はスーツの胸元から一枚のピンナップ写真を取り出した。


 最近はスマートフォンのデータ画像しか見ていないので、フィルムから現像された写真自体が久しぶりだった。


 それを見ると、リョウは「ほほう」と唸った。


 リョウの好みのタイプではない。が、可愛らしくて「美女」とか「美人」というより「守ってあげたくなる妹タイプ」だ。


「どうです?」


「美女というか可愛い系というか。点数高いと思うぜ?」


「殺された私の妹です」


「………あのさ」


 一気にテンションが急降下する。


「それはそうと、この衆合地獄は、ちゃんと十六小地獄がはっきりくっきりばっちりあります。等活地獄とか黒縄地獄は適当でしたが、エロ方面だけはきっちりしてるんですよ、昔から日本人ってのは」


「まぁ、わかる気がする」


「最初に行くのは大量受苦悩処たいりょうじゅくのうしょ。言えますか?」


「たいのうりょくのうしょ?」


「大量に苦悩を受ける所。大量、受、苦悩、処。です」


「まぁ、どうでもいいわ。で、そこは何した奴らが落ちるところだ?」


「異常な性行為を行った人と、それを覗き見して真似した人が落ちる所です」


 異常な性行為のハードルはどこなのだろうか、とリョウは悩んだ。


 大昔では異常とされていたことが、今ではポピュラーな行為だったりする可能性もある。


「ちなみに罰は【炎の剣で肛門から腰にかけて串刺しにされる】というやつでして、男性はキャンタマを。女性は(ピー)を抜かれるという痛ましい刑場でした」


「うわぁ………それはタマヒュンだわ」


「ところがですねぇ……まぁ、行ければわかりますけど」


「どうせ亡者に優しい世界になってるんだろう?」


 その予感はすぐさま的中した。



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