第14話 リョウちゃん、旃荼処に行く。

 旃荼処せんだしょ


「簡単に言うと薬物中毒者が落ちる所です。ここではいろいろな動物が亡者のや舌を抜きとるのがの地獄でした。眼球だけに目玉ってね」


「やかましいわ。って、なにもないじゃないか」


「ありますよ、ほら」


「老人ホームか?」


「いえ、ヤク中患者の更正施設ですね。と、いっても魂だけの存在になると薬の依存症とかなくなるんで、ここは完全に亡者のリラクゼーションホテルみたいになってます」


「………もしかしてこの岩場ってゴルフコースか?」


「そうです。亡者が勝手に整備したようですね」


「俺が閻魔大王だったら、こんなところぶっ潰して、ヤク中どもは体中を虫が這いずり回る幻覚だけを味わい続けるか、オーバードーズを繰り返す地獄にしてやるけどな」


「ほほう……では次。畏熟処いじゅくしょ畏鷲処いじゅうしょに移動します────はい!」


 場所は移動したようだが、大して見栄えは変わらない。


 地獄はどこでも空は燃えるように赤黒く、荒涼とした岩石だらけの地面なのだ。


「前から思ってたけど、指パッチンだけで移動できるって便利だな」


 東雲はにへらと笑い、ここの説明を始めた。


「ここは人の飲食物を奪って飢死させた者が落ちるところです。凄く限定的でしょう?」


「けど亡者がいるんだな」


「昔は鉄の棘が生えた地面の上を武器を持った獄卒に追い回され、休む間もなく走り続ける地獄だったんです」


「おお!」


 リョウは思わず身を乗り出した。


 運動場のトラックみたいなところを走っている亡者たちは、とても苦しそうにしている。


 ここは初めて地獄の責め苦を味わう場所なのかもしれない。


「鉄の棘は危ないということで、足つぼを押すイボイボが運動場全部に敷かれています。あれ、裸足で上に乗ると痛いですよねぇ」


「健康になっちまうだろうが!!」


「運動場の奥にはカイロプラティックとかもありますが」


「いいよ! 行かねぇよ! 次行こ、次!」


「黒縄地獄は以上です」


「潰しちまうか等活地獄と統合しろよ。分ける意味あんのか、これ」


「まぁまぁ。次はいよいよ山内さんお愉しみの衆合地獄ですよ!」


「俺が楽しむ?」


「レベル3の地獄ですけど、淫らな行いを繰り返した者が落ちる地獄です。ちなみにそこに落ちても人間時間で106兆5800億年経てば自動的に成仏できます」


「その意味が無いほど膨大な年月、どうにかなんないの? 刑期伸びても慣れたらどうってことなくなるだろ。痛い、苦しいと思えるうちに最大限の苦痛を味合わせないと。後は『もう少しでこの苦しみが終わる』ってギリギリのところで『嘘だよーん、まだまだ地獄は続くよーん』ってやられると辛いな」


「ほほう、ほほう。精神に来る系ですね」


 東雲はにへら顔でなにやらメモを取っていた。

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