第12話 リョウちゃん、見てはいけないものを見る。

 正直、こんな地獄では意味がない。


 罪を犯して地獄に落ちたものたちが楽園と同じように生活しているなど、あってはならない。


 罪の範疇も時代に即して変えるべきだ。


 罰の方法も時代に即して変えるべきだ。


 判決も早く出せるシステムを構築すべきだ。


 天国は本来の目的を見失って、目先の人道的なんたらという偽善のために地獄を変えてしまったが、ここは亡者が面白おかしく過ごす所ではない。


 生前の罪を認め、悔いて、改めるまで、永劫の苦しみを与えられるべき場所だ。


 そんな旧来の地獄に戻そうという派閥「地獄復帰委員会」に所属している東雲は、実に胸糞悪い罪人たちを何万人と見てきた。


 まだ若い女学生を拉致し、犯し、監禁し、長きに渡り殴る蹴るの暴行や筆舌に尽くしがたい凄惨ないじめを繰り返し、全身が血だらけになり目の位置がわからなくなるほどの暴力を1ヶ月以上与え続け、最後は非道にもコンクリートに詰めて殺した未成年者達。


 人の弱みにつけこんでマインドコントロールし、被害者同士で殴らせ合ったりさせることで自分の手は汚さず、結果的に6人も殺害した男女。


 デート中だったカップルを襲い、女を強姦、男を暴行し、挙句の果てに2人とも殺害した者たちの動機は「おもしろそうだったから」「なんかイチャイチャしていてムカついたから」だった。


 複数の小学生が殺傷された事件は、被害者の頭部を学校の前に置いたり、マスコミに挑戦状を郵送したりというサイコキラー要素を醸していたが、その犯人はなんと「どこにでもいる学生」であった。


 一家4人が惨殺された事件は、犯人が就寝中の一家4人を次々に薪割りで殺害したものだったが、瀕死となった妻の体を弄び、その間、夫や子供達がうめき声をあげる度、行為を中断して薪割りを振るって沈黙させたという恐ろしいものだったが、なにより恐ろしいのは「一番残念だったのは、妻の肉を食えなかったこと」と陳述したことだった。


 ある歯科医はフッ素ナトリウムをわざと女児の歯に塗布し、生まれてわずか数年で急性薬物中毒のため死亡した。


 殺して遺棄した友達の死体をSNSで実況していた者たちもいた。


 実の子どもたちを監禁し餓死させておきながら、自分はホストと遊びまわっていた母親もいた。


 人を間接的に殺す目に合わせても「俺のせいじゃないし」と飄々としている青年もいた。


「人間のクズは粛清されるべきだ。そう思いませんか、山内リョウさん」


 東雲は「見透かしの珠」で自分の心根をすべて知られているとわかっているのか、にへらとした笑顔は崩さずにそう言った。


 その心情、信念、そして沸々と沸き立つ人間への怒り。


 すべてを見てしまったリョウは、生唾を飲んだ。


 ただ飄々と道案内しているだけのサラリーマン獄卒かと思えばそうではない。


 この東雲という男は、大いなる怒りに満ちているのだ。


「なにがあんたをそこまで怒らせるんだ。所詮人間の………他人事なんじゃないのか」


「ふふ。私は元人間なんですよ、山内さん」


 突然の告白にリョウは言葉を失った。

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