黒縄地獄変

第11話 リョウちゃん、等喚受苦処に行く。

 黒縄こくじょう地獄。


 殺生や盗みを重ねた者が堕ちるレベル2の地獄。


 獄卒は亡者を熱く焼けた鉄の地面に押し付け、さらに熱く焼けた縄で身体に墨縄を打ち、さらにさらに熱く焼けた鉄ののこぎりでその縄の跡にそってギコギコと切り裂き、削る。


 こうして獄卒に殺された亡者は風が吹くとまた元の姿に戻り、同じ責め苦を味わい続ける。


「そんな時代もありました」


 東雲はペットボトルのお茶を嚥下した。


 リョウも売店で東雲におごってもらった缶ビールを口にしながら周りを見渡す。


 熱い地面とやらは砂風呂のようで、亡者はキレイに一列になって砂に顔以外を埋めてもらっている。もちろん埋めているのは獄卒だ。


「水分補給はしっかりお願いしますねー」


 蒸し風呂で心地よく汗を出した亡者たちは、ノコギリの刑………ではなく、アカスリをしてもらっている。


 ちゃんと肌が痛まないようにクリームを塗ってもらったり、ボディーローションも多種多様なものが置いてある。


「等活地獄と変わんねぇな」


 ビールを飲みながらこのヌルい刑場をシラけた目で見るリョウ。


「いえいえ。あっちを見てください。鉄の山があるでしょう? 亡者に鉄の山を背負わせて縄の上を渡らせるんです。もちろん罪人は縄から落ちて死にますし、等活地獄より10倍苦痛です」


「立入禁止って書いてある」


「危ないので登山禁止にされました………あ、この地獄は13兆3225億年の刑期を終えたら勝手に成仏できますけど、まぁ、それより先にみんな心改めますよね。はは」


「あれ。前のは1兆くらいじゃなかった?」


「ええ。前のところは人間の時間に換算すると1兆6653億1250万年ですが黒縄地獄はもっと長いんです。ビビリました?」


「いや、桁がおかしすぎて実感は欠片もない。で、ここは砂風呂で終わり?」


「いえいえ! 等活地獄と同じで黒縄地獄にも十六小地獄がありますので、そこを巡りますよ。ここはオープニングです!」


「入口が砂風呂って」


「あ。そうそう。ここの十六小地獄もいくつも廃止されていまして、現存するのは3つだけなんです」


「地獄も廃止しちまえよ。こんなヌルい地獄、意味ないだろ」


「ふふ。もとの地獄に戻るとあなたも辛い目に合うんですよ?」


「罪に見合った罰は受けてやんよ。けど、俺より相当悪い奴らがのほほんと暮らしているのはどうも納得いかない」


「そうですねぇ。獄卒はなにもできませんけど、気になるのでしたら亡者同士で罰を与えればいいのでは?」


「そんなことしたら俺の罪が増えるだけだろうが」


「さて。罪人を罰する行為が罪なのだとしたら獄卒達はどうなりましょう」


「俺は獄卒じゃねぇし。筆記試験も受けてないし」


「そうです。あなたは獄卒ではない。つまり天国からの監視対象ではないのでクレームの範疇外です。そしてそんなあなただからこそ、亡者の罪にふさわしい罪を与えることができるのです。あなたの罪が増える? いいえ。亡者に正当な罰を与える行為に罪がありましょうか」


「ちょっとまて東雲」


 リョウはスーツの男を睨みつけた。


「まるで俺に他の亡者を罰して欲しそうだけどよ。なんで俺なんだ? これもお前が置いたんじゃないのか」


 懐から水晶玉を取り出す。


「それは見透かしの珠ですね。相手の心根が聞こえるという………あ」


 リョウは水晶玉を東雲にかざしていた。

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