第10話 リョウちゃん、極苦処に行く。

「ここは生前にちょっとした事ですぐに腹を立てて怒ったり暴れ回ったり、物を壊したりした人や、勝手気ままに殺生をした者が落ちるところです」


 東雲はリョウを横目で見た。


「等活地獄の中で貴方が落ちそうなのはここですかね」


「そ、そ、そ、そんなことはないと思うぜ」


「ちょっとしたことですぐ怒りません?」


って言われてたぜ」


「本当ですか? 酔っ払って突然走り出したり看板蹴り壊したりと、暴れまわったりしてません? 電信柱殴ったりしてません?」


「そ、それで壊れるのは俺の手の方だろ?」


実はよく電柱と喧嘩して翌日ボロボロになった手を包帯で巻いてバーに出勤し「そんな手で酒作れるわけないだろうがアホ!!」と同僚のバーテンに激怒されたこともあった。


「ならいいんですけど────ああ、そうそう。ここは昔なら鉄火で焼き入れたり、断崖絶壁から突き落とされる刑場でした」


「また断崖絶壁か。案外レパートリー少な………って、あれかよ」


 確かに断崖絶壁がある。


が、そこから亡者たちがパラグライダーで飛んでいるスポーティーな光景しか見えてこない。


 獄卒はそこのスタッフとして働いているのか、亡者たちの順番列を整理したり、レンタルのパラグライダーを整備していた。


「正直に言わせてもらうと、俺、等活地獄でいい」


「そう言われましても。山内さんはもっと罪の重い地獄も見学していただきますので」


「下水処理場とかめっちゃホワイト企業だったし、サウナに温泉にペットにバンジーにパラグライダーとか、もう全部なんの関連性もなくて、すごく楽しそうなんだけど!」


「しかし罪を認めて悔い改めないと転生できませんよ。ここの居心地が良ければ転生しないんじゃないですか?」


「転生したらいいことあんの? 前世の知識を持って生まれ変わるとか異世界でチートとか」


「なにに転生するのかもわかりませんよ? カマドウマとかになりたいですか?」


「なんでそれ………俺、かわいいプードルとかになって美人OLに飼われたい。けどここのほうが幸せそうだ」


「そりゃまた業の深い」


 東雲はにへらと笑い「では次の地獄に行きましょうか」と一弾指した。












「どうです、は」


「はい。を忍ばせておきましたので、そろそろ他の亡者に対して使い出す頃合いかと」


「天国のクレームが強すぎて我々では手出しが難しいですが、亡者同士であれば、ね」


「えぇ。が地獄のシステムを変えてくれると信じましょう。なんせアレはの生まれ変わりですからねぇ」


「しっ、今天国に聞こえたらいろいろ面倒です。事を成すまでは、私とあなただけの秘密ですよ」


「もちろんですとも。悪人どもが大手を振って自由を謳歌する地獄なんか必要ありません。が本当の地獄というものを蘇らせてくれるでしょう」


「次は黒縄地獄でしたか?」


「ええ、次からは積極的に亡者とも関わらせてイライラさせていくつもりです」


「では、頼みましたよ、観────」


「東雲、です」


「そうでしたね。頼みましたよ、東雲さん」

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