等活地獄変

第4話 リョウちゃん、屎泥処に行く。

「はい、ここ。等活地獄です」


 東雲が連れてきたのは、入り口からして蓮コラのような凹凸で鳥肌が立つデザインをした門だった。


「蟻とか蚊とかの小虫を殺した者が堕ちるところです」


「死んだやつみんなが来るところかよ」


「ははっ。そうでもないんですが、まぁ説明聞いてください。ここで酷い死に方をしても、すぐに体がもとに戻ってしまいますから、死んで楽になろうとか無理です。もう死んでますし! ははっ」


 こいつ、殺してやりたい、とリョウは思ったが口にしなかった。


「いつまでこの中にいりゃいいんだよ」


「人間の時間に換算すると1兆6653億1250万年です」


「バカなの!? 宇宙より長生きじゃねぇのか!?」


 宇宙の年齢は138億歳とも言われている。


「ま、その前に大概の亡者は心改めて転生しますから」


「はい、もう虫も殺さない人になります」


「心入れ替えた人は勝手に成仏しますから、心無い言葉だけでは無理ですよ」


「う」


「じゃ、山内さんの罪状からすると………面倒だし、一通り見て回りますか!」


「はぁ!?」


「まずは屎泥処しでいしょに行きますね」


 東雲が一弾指すると、門が開いた。


「………?」


「ここは鳥や鹿を殺した者が落ちる地獄でして、沸騰した糞尿が沼のようにたまってまして、亡者達はその苦い屎を食べさせられ、虫に体を食い破られて死に、また蘇って同じ責め苦を味合わされるという地獄


「う、うん?」


 リョウの目の前にあるのは、近代的な工場のような建物だ。


「いえね? 最近うるさいんですよ。亡者にも人権を! って天国の人たちからクレームがありまして。あと臭いって近所からも」


「近所があるのか」


 工場の中に案内されると、小学校の社会科見学で見たことがある【下水処理場】のようだった。


「亡者は一日8時間三勤交代でここの仕事に就きます。刑務時間は朝8時から夕方17時まで。10時と15時に30分の休憩、12時から13時までが1時間の休憩。交代制なので残業はありません」


「え、なんか普通の仕事みたいだな」


 むしろブラック企業という言葉が蔓延している昨今、普通よりいいと思える。


「この刑場裏に寮がありまして、朝昼晩の食事と個室が提供されます。もちろん刑務時間外は自由ですし、制服もありますし、給与も出ます」


「え、ほんとに普通の仕事じゃないか」


「天国がうるさいんですよ。働かせて無休無給とは何事か、とか。職場環境が、とか」


「仕事じゃなくて刑罰なんだろ、これ?」


「まぁ、そうなんですが、時勢ってやつですかね」


 作業服の人々が談笑しながらモニターをチェックしているようだ。


「彼らが見ているのは沈砂池です。大きなゴミを取り除くところですね。彼らの話題は昨日見た人間界のテレビドラマのことみたいですね」


「テレビ見れるんかい」


「無料の無線LANもありますよ」


「………」


「ここの寮は各部屋に風呂も冷蔵庫もありますし、備え付けの家具とベッドもありますから、体一つで入れます。快適に刑務をお過ごしいただけるので、亡者には好評で────」


「俺、ここがいい」

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