地獄が過保護過ぎてワラタ

紅蓮士

第一部 リョウちゃんの地獄巡り

序章

第1話 リョウちゃん、死ぬ。

 山内リョウ。


 享年27歳。


 死因は急性アルコール中毒起因の窒息死。


 務めていたショットバーになかなか出勤しないため


「今日はサボりか」

「今日もサボりか」

「最近来ないな」

「無断欠勤が多いな」

「もしかして逃げた?」

「闇金から金借りて山に埋められたか?」

「様子を見に行こう」


 となって、ようやくその亡骸が発見されたのは、死後一週間後のことだった。


 冬場で、外気と大差ない薄い窓や壁しかない安アパートの中だったこともあり、リョウはまるで寝ているように安らかな死に顔だった。


 葬儀は近親者と務めていてたショットバーの店員、馴染みの客で執り行われた。


「基本的にクズだったけど、死ぬこたぁないだろうに」

「ああ。基本的にはクズだったけどいいやつだった」

「そうね。クズだったけど楽しい人だった」

「なんで死んじゃうかなぁ………」


 参列者は故人を偲び、涙を拭った。


 その様子をちょっと浮いた部屋の天井隅から見ていた山内リョウ(ご本人)は、どうしてこうなってしまったのかと首をひねらせた。


 確かテキーラを飲んだ。


 ロングショットで20杯を一気に流し込んだ。


 ベロベロになって店を早退し、倒れ込むように部屋に戻って、寝た。


 それだけだ。


 いつもと変わらない、いや、いつもよりちょっと酒が多かったくらいの平凡な日だ。


 なんで死んでしまったのか。運がなかったとしか思えない。


 たまたま急性アルコール中毒を引き起こし、吐瀉物が喉につまり、窒息した。


 自分の葬儀を見るという貴重な体験を誰かに伝えたかったが、誰にもリョウの声は聞こえないようだし、触れもしない。


 スカートの中を覗き込んで「うへへ」とやるのは数日前に飽きた。


「もう成仏してぇなぁ」


 そう思った時、リョウはスッと体が軽くなるように感じた。


 そして、その体はあらゆる物質を突き抜けてようにいった。

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