第13話 福山博人Side

 卒業した大学で実演会があるので、その打ち合わせをする為に大学に行ったのだけど、なんだか事務室の様子がおかしい。

 気配が尋常ではなさそうなので中に入るが、誰もこっちを向かない。

 今田が居るので驚いたのだが、なぜ包丁を持ってるんだ?

 誰かに包丁を突きつけようとしてるのか。


 それを阻止すべく、間に入っていった。


 だけど、結局アイツはその人物の背中に向けて包丁を投げた。

 その人物は背中に包丁を投げられたにも関わらず、なんともないという表情だ。

 でも、私は医者だ。

 毒がないかどうかを診るために、背中を舐めていた。


 いい身体つきをしていた彼は、カフェ『Home』でバイトをしていた友明だった。

 分からなかった。そういえば、少林寺と合気道をやってたな。

 だから、身体つきは良いのか。


 ホールで来週の打ち合わせをしてる間中、私は彼を目で追っていた。

 私は、今まで知らなかった。

 彼が、どこの大学なのか。

 医学部だなんて、思いもしてなかったのだ。

 打ち合わせが終わるまで、私は先程の彼の身体を思い出していた。

 若者らしいツルツルとしていた肌に引き締まった体躯。

 舐めてしまった背中。


 ああ言えばこう言う、理屈っぽいところ。

 なんだか、彼のことばかりを考えていた。



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