329日目 黒の嵐
ごった返して荷台や馬車で物資を移動させる人たちの波をかき分けて防護服に身を包んだハンターや冒険家たちのいるギルド前にやって来ると。
1人だけ防護服に身を包んでいないモノがおり・・・
ハルトは防護服に身が守られていないモノが浮いて見えたのか、防護服を着てくるように語り肩に触れると――――――――――
「何奴ッ!!!私の肩に触れるとは成敗ッ!!!!
あ、あれれ!?は、ハルトだったのか!?
悪い・・・ついつい戦いモードに集中し過ぎて情景反射してしまった。」
「ぐぅおぉぉぉ・・・・こ、この力と声からして・・・せっちゃんか・・・どうしてせっちゃんは防護服を着ていないんだ??
相手はクロバチだと知っているのか??アイタタタ・・・・」
「そうですよ!!いくら人ならざる鬼だったとしてもクロバチ相手に肌を露出させては刺されてコテンと痺れてあの世行きですよ??」
不自然に防護服を身にまとっていないせっちゃんは恥じらいながらハルトを立たせて自分がどうして防護服を着ていないのか説明すると・・・・
「実はな、私・・・今まで虫に刺されたり被害が出たことが無いんだ。
というのも私の体は鬼であって人や他の生物のモノとは違うのだろうな。
棘や剣では肌に傷がつかないんだ。
私の事ながら全く不思議な作りをしている・・・・」
「ますますせっちゃんが浮いてるように見えてしょうがねぇな・・・
鬼ってここまで常識を逸したスペックだったとは・・・・見た目は人なのにな。」
「もっともだ。
私は魔王だがしっかりと痺れは出るしある程度まで濃度を上げられた毒物の抵抗はできないから私の方が人よりなのかもしれないな。」
「いえ、魔王は魔王で人ではないと思いますが・・・・
という事はせっちゃんは攻撃部隊で大きな戦力となる事だと思われますのでこれを渡しておきますね。
私が作り上げた対魔昆虫撃滅アイテムのセットで・・・コレが―――――――」
「おい、そこで何をしているんだ??
我々特別サポーターの自慢の一品を配布する前に自分たちの一品だけでいいと言うのであれば別に構わないのだが。
こちらはかの研究施設長メディエル様からクロバチを撃滅するために貸し出された貴重な撃退アイテムの品々だ。
そこのおもちゃのようなアイテムは置いといてこちらを装備してはどうかな??」
大げさな防護服に身を包んだメディエルの部下はキルりんのアイテムをゴミ扱いする中・・・せっちゃんはキルりんの行為を無下にしないようしっかりと肩からぶら下げて装備し。
メディエルの部下に友の作ったアイテムをバカにするなとキツく語ってアイテムのセットを受け取っていた。
「ほら、ハルトたちの分も持ってきた。
それとキルりん、研究所の下っ端はあぁ言っているが私はキルりんの作るアイテムを信じてるから。
アサシンスクールの天才児であるキルりんが作ったアイテムなら期待するしかない。
そうは思わないハルト??」
「ん~あぁ・・・そこら辺の道具屋で買うものに比べりゃキルりんのアイテムは役に立つが安全性とか取り扱が全く意味不明なんだよな。」
「意味不明とは何ですか!?
私のアイテムにはちゃんと使用方法が書かれた説明書がですねアイテムにくっ付けてありますよ?見た事ないんですか??
例えばこの殺傷爆弾だと・・・私のカワイイ絵とわっかりやすい文字で記してありますよ?」
「ふむふむどれどれ・・・ん~~コレはとんでもなくわかりやすいが安直ではないか???
殺したい対象物に投げつけると大丈夫・・・それに絵もとんでもないくらい酷い絵なのだが・・・・子供向けではないな。」
「そもそも殺傷爆弾が子供の手に行くような事態が問題でしょ。
アイテムなんて使えりゃどうだっていいのよ。
キルりんのアイテムが優秀かメディエルのアイテムが優秀かよりも使って1匹でも多く仕留められるかが大切でしょ??
それにこの羽の音・・・そろそろ奴らが攻めてくるころ合いかしら???」
メルトが耳を澄ますと同じようにハンターたちや冒険家も耳を澄ませるとムシの羽音と共にギチギチという音が聞こえだし。
クロバチが近くに来ていることを感じると・・・ギルドの方から簡単な説明と駆除方法に襲われた際の対処法が伝えられた。
「まず襲われた場合は炎系の魔法を見せると驚いて逃げますが。
時々炎に動じず攻撃を仕掛けてくるクロバチもいますがその辺は何とか切り抜けてください。
それからクロバチの討伐方法ですがメディエルさん至急の殺虫スプレー等を駆使して対処してくれても構いませんし自分たちのできる範囲でクロバチの討伐をお願いいたします。
――――――――――それでは武運を祈ります!!!」
「何だか最後の方をはしょって言っていたように聞こえたが・・・どうしたんだ???
ん?オイオイオイオイ・・・・話の途中でクロバチの大軍を見たからって逃げるのはどうかと思うぞ!?
お前ら!!!クロバチの群れがこっちに向かって来てるぞ!!!!」
受付嬢が一目散に逃げた事をきっかけにハルトは後方を覗くと、そこには黒い塊となってこちらへと向かってくるクロバチの群れが向かって来ており。
ハルトの忠告に冒険者やハンターたちはメディエルから支給されたアイテムや自前の武器を取り出して構えると一斉に攻撃を開始し・・・クロバチと国との最大の攻防戦が始まりを告げた――――――――――――
「うわぁぁぁぁぁ!!!なんでこっちに向かって来てるんだよぉォぉ!!!!
って、魔王お前が付いて来てんのかよ!?
あっちに行けよ!!!魔王が同じ方向に来たら誰が攻撃するんだよ!?」
「そうは言っても動きを止めるとあの量のクロバチに群がられるのは必須なんだぞ!?
だったら私も逃げるしか方法がなかろう!!!」
「いいわよ2人とも・・・私がその大量のクロバチにメディエルとキルりんのアイテムで屠ってやるわ!!!
まずはメディエルのアイテムからよ!!!って・・・これどうやって使うのよ。」
「メルト!!!そういうのは使う前に説明書をよく読んで使い方を頭の中に入れてから使う事を覚えましょう!!!
とかなんとか言っているうちにクロバチが魔王のすぐそばまで来てます!!!」
キルりんの声に魔王は少しだけ走るスピードを上げ・・・ハルトに並んで走りだすと。
魔王はハルトの手を握り何やら片方の手でジェスチャーを行っており。
それは右側へ移動しろというもので・・・ハルトがタイミングと聞く前に魔王はハルトの手を強く引いて右側に飛ぶと。
その後方からはメルトの魔法が勢いよく吹き上げクロバチを次々と灰にしていた。
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