167日目 イマジンの代償
魔王がモンスターブーンを倒すと同時にキルりんもちょうど煙を上げ始め。
魔王はハルトたちを煙の方へ逃がし、モンスターブーンとの戦闘が始まった。
「ぜぇぜぇ・・・・だ、だずがっだ・・・・・」
「この臭いは最悪だけど・・・血が全部吸われること考えるとマシね・・・」
「2人とも本当に私に感謝してくださいよ?
この薬もタダじゃないのですからね?」
「2人はそこで休んでいるといい。
―――――――――――後は私に任せておけ!!!」
魔王は大剣を構え、モンスターブーンと対峙すると。
モンスターブーンは2体同時に魔王へ飛びかかるが・・・・それをスルリと魔王は攻撃をかわし。
モンスターブーンの1体を叩き斬ると、残った一体はそのスキを突いてマヒ性の煙を魔王に嗅がせてシビレさせると自体が急変した。
「ねぇ・・・あれってマズいんじゃないの!?
魔王ってば油断してはないと思うけどマヒしているんじゃないかしら?」
「どうやらモンスターブーンのシビレ粉を嗅がされたようですね。
あのままでは・・・魔王の血液が全部・・・・」
「あぁ・・・たくッ・・・どいつもこいつも最後の最後でポカしやがって!!!
こうなったら久々にアレやるぞ!!!」
「ぐぁ・・・・ぐッ・・・・体の自由が・・・利かない・・・
ここまでなのか・・・この魔王の私が・・・」
モンスターブーンは自身の巨体を魔王の上に置き、鋭い針のような口を魔王に突き刺そうとした時―――――――――
「オラオラオラオラッ!!!どきやがれムシ野郎!!!!
メルト!!!例の地点に誘導してくれ!!!」
「わ、わかったわ!!!
――――――――――マジックファイヤー!!!!」
「ハルト!!!今です!!!」
キルりんの合図と同時にハルトは全力のイマジンを唱え。
メルトの使っていた雷の呪文のコピーをモンスターブーンに浴びせると。
モンスターブーンは一瞬でこんがりと焼けて地に落ちると同時にハルトも両膝から崩れ落ちて倒れた。
「アァァァァァアァ・・・・グゾ・・・まだ・・・魔力が全然足りねぇのかよ・・・・クソ・・・全く体が動かねぇじゃねぇか・・・・ガクッ・・・・」
「そりゃそうでしょ!!!私の古代魔術は簡単な魔力で撃てるくらい軽い魔法じゃないのよ!!
でもまぁ?今回のアレは初めてにしちゃ上出来よハルト!!!それもコピーの中ではね!!!って、聞いてんの!?」
「えぇっと・・・ハルトもですが魔王も大丈夫ですか?痺れがまだ残っている様に見えますが・・・・」
「あぁ・・・何とか手足の感覚が戻ってきた。
だがこの状況だと私よりもハルトの魔力切れの方が深刻そうだな。」
キルりんに支えられながら魔王はゆっくりと立ち上がり・・・
倒れたハルトのいる方に向かうと、ハルトは意識が完全に飛んでおり。
それを見た魔王はハルトの手を握って自身の魔力を送り込むと・・・・
「ぶはッ!?なんかスゲェドロッドロの変なのが流れて来たんだが何をしやがった!?
また俺にくだらねぇ変ないたずらをしたんじゃないだろうな!?」
「魔王の魔力って・・・ドロドロなんですね・・・まぁ魔王ですもんね。
そこら辺の沼の水よりも粘り気が強そうですし。」
「わ、私の・・・魔王の魔力はその辺の汚い汚水と一緒にしないでくれにゃいか!!!」
「あ~泣かない泣かないうるさくしない。
魔王は強い子なんでしょ?それと・・・ハルトも元気になったのならそれでいいじゃない。
早く狼煙を上げてこのムシを運ばせて帰りましょ。
今日はほどほどに汗でべとべとで先にお風呂ね。
ホント・・・この季節は暑くて敵わないわ。」
メルトは額から流れる汗をぬぐいながらキルりんに狼煙を上げさせ。
待ってからものの数分で運送者が現れ・・・嵐のようにムシを回収して引き上げていき。
それを見送ってからぼちぼちに回復したハルトたちもユラユラとしながら家に帰っていった。
「あぁ・・・今日は俺、メシも全部パスで・・・先に寝る・・・マジで今回はダメだ。
そんじゃな・・・・」
「あぁ・・・何かあったら呼ぶのだぞ?
それと・・・欲しいものがあったら声をかけてくれ。
そ、その・・・今日のお礼もしたいからな。」
「なに魔王は照れているのですか?
仲間を窮地から救うのは当然でしょう。
その恩を返そうとすると・・・また後ろの魔女が煩いですよ?」
「そうねぇ・・・最終的に私がハルトの使い魔の主であり・・・マスターなわけで?
ハルトのものは私のモノだから魔王に好きに命令させてもらおうかしらね!!!
さぁ、シュゴビーを呑む相手になりなさいな!!!!」
メルトの下らない発言に魔王は苦笑いして流しながら3人はハルトと別れて風呂を済ませてから酒場に向かい・・・・家が静かになると。
ハルトの中にいるバロンに夢の中で呼ばれ・・・・
「んん??ここは・・・・バロンの??」
「うむ、久しいなハルトよ。
此度の戦いは中々に慌てた様子でイマジンを使いおったな・・・・
初の攻撃系魔法の味を聞く前に・・・・自身の状況を知らせた方がいいか。」
バロンはそう言ってハルトの体にイマジンで作った棒で体を突くと―――――――
「ぐぎゃぁぁああぁあッ!?なんじゃこれ!?クッソ・・・・筋肉痛!?」
「まぁ・・・今回はその程度で済んでいるのが不思議なくらいだ。
本来ならあれからハルトの意識は戻ることなく数日は植物状態になるはずなのだが・・・・あの魔王から送られてきた高密度の魔力に感謝しないとな。」
バロンの発言でハルトは魔王が握っていた自身の手を見つめ。
この筋肉痛は一体いつになれば治るのかと尋ねるが、バロンは返答する前に再度ハルトに忠告をした。
「いいか?もう一度だけ言っておく・・・イマジンは何でもできる魔法ではない。
できることを可能にする魔法だ。
自身のスペックに見合わない具現化を行えば・・・次はないと考えておくのも覚悟しておくのだ。
と、言ってもそこそこ臆病なハルトはそこまで自身を犠牲にできるかどうかだが。
あと・・・その筋肉痛は数日は治らないだろう。
と、言うのも魔力の限界値を超えて発動した後遺症だ・・・・運動の疲れや疲労とは別物ゆえに薬の類では治ることはない。
だが・・・いい機会だ・・・ハルトがその身を削ってまで守ろうとした者と話すと良いだろう。
丁度、ハルトが助けた魔王がやって来たようだ。」
「え、ちょッ!?バロンなら直せんじゃないのか!?
強制的に夢から覚ますんじゃねぇ!!!!あッ・・・・・・・・・・・・」
ハルトはバロンによって強制的に夢から覚まされると。
目の前に魔王の姿があった―――――――――
「やっと起きてくれたか・・・・いや、その・・・・
軽い食事でもと思ってな。
私の考えた栄養のあるスープを作って来たのだ。
その・・・口に合うかわからないが・・・食べない・・か?」
「その・・・なんだ・・・食べたいのは山々なんだが。
さっきのイマジンで体中がボロボロらしくてさ・・・・全身が筋肉痛で顔以外が動かせねぇんだ。
悪いが食べさせてくれると助かるな・・・何て・・・・あん!?魔王それ・・・マジでスープか?俺を毒殺するためのスープと言う名の毒じゃねぇのか!?」
ハルトの発言に魔王は体が動かせない状態をいいことに。
謎のスープらしき液体をスプーンにとってハルトの口に無理矢理押し込むと。
その未知の味にハルトは涙を流し、魔王は涙を流すハルトを見て美味しいと勘違いして・・・・皿に入っていたスープを全てハルトの口に流し込んで味の評価を最後に聞くと・・・・・
「このハチャメチャサキュバス!!!!そのスープと言う名の何かはメチャクチャマズイじゃねぇか!?俺の最後の砦である舌も壊す気かよ!?
料理が苦手なら無理するんじゃねぇ!あ・・・・・・」
つい本音が出てしまったハルトは言い過ぎたと魔王を見ると・・・手で顔を隠しており。
泣きのポーズをとっていた――――――――――
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