134日目 雪中の街での緊急依頼

魔王とジャージーが焼いたパンの幾つかをもらって家に戻ると。

匂いにつられてメルトとキルりんが部屋から出てくると・・・・

パンを見てから、毒とか入っていなかったかとハルトに尋ねると。

それを聞いた魔王はハルトの代わりに入っていないと強く言うと。

2人はバクリとパンをかじったのだが・・・・・


「うぇぇ・・・何ですかこのパンは!?

塩辛いですよ!?やはり毒ですか!?毒を仕込みましたね!?」

「バタッ・・・・・・・・・」

「め、メルトォォォォ!?おい、魔王!!!メルトをベッドまで運ぶぞ!!

どうして失敗作のパンが紛れ込んで・・・まさか、お前・・・」

「いや、勿体ないと思って焼いて持って帰って来たのだが・・・やっぱりダメか??最初の段階のパンは――――――――」

ハルトは魔王が焼いた分量の間違えたパンはどれかと尋ね。

魔王はどれがどのパンなのか分かるのか分量のおかしいパンを選び抜き。

そのパンを隔離してからメルトに食べられるパンを口に捻じ込むと―――――――


「モグ・・・んご!?ウマ!!!これはウマイわよ!!!さっきのと違ってすごくウマイじゃない!!!もっとソレを寄越しなさいよ!!!

ってかコレ・・・ジャージーが作ったパンよね??」

「どれどれ・・・あ、これは本当に美味しいですね。

魔王には失礼ですが、アレは食べられないパンですよ?

パンはパンでも食べられないパンは魔王のパンと言えるくらいで・・・」

「うぐぅ・・わ、私だってな!?パンを作りたくて作ったんじゃにゃい!!!」

「あ~えっと・・・よしよし・・・そのお前たちが食ってるパンは全部、魔王が作ったパンだ・・・って、うぉい!?お前ら吐き出すとか汚ねぇだろうが!!!」

ハルトの追加発言で魔王が作ったものと言うと。

2人は揃ってブッと吐き出してパンを見ながら魔王を見ていた。


「マジですか・・・コレを魔王が作ったとは到底想像できませんよ。

食べられるものを食べられなくするスキルを持っている魔王が・・・・こんな・・・・」

「し、失礼だぞ!?食べられなくするスキルなんて私は持っていない!!!

それに、メルトなら私の実力をわかってくれるだろ?」

「ん~~~これは少しマズいわ・・・コレが本当に魔王が作ったとなれば次に私の料理が再開になるのは必至。

この状況はどうしたものかしら。」

「いや、お前もジャージーのとこで教えてもらって着たらいいじゃん。

それと俺は疲れたから晩まで部屋でゴロゴロさせてもらうぞ。」

ハルトは自分の部屋に消えて行こうとした時、魔王が今夜の夕食を楽しみにして欲しいとだけ言うと。

ハルトは少しだけ期待を込めて頷き、部屋に消え。

部屋で休憩してから数時間後・・・・


「ハルト~~夕食の時間だ、早く部屋から出てきて皆で食べよう。」

「あぁ・・・ついにこの時が来たか。

どうせパンしかない夕食だろうが・・・昨日のアレよりかマシだな・・・

はいよ、すぐ行く。」

ハルトは魔王の呼び出しに答え、3人の元へ向かうと。

そこには大きく積み上げられたパンとベーコンエッグが並べてあった。


「これでどうだ??私が作った夕食!!!コレだと文句はあるまい!!」

「1ついいですか??パンが大量にあるのはいいのですが。

おかずがコレだと朝食のような気がするのですが??」

「でも、昨日のアレはもう食べてくないわ・・・・

だから私はこれでも構わないわよ。

どうせならまだ食べられるパンを大量に食べる方がいいもの。」

「そんじゃ、魔王の作ったパンが目立つ夕食を始めるか。」

ハルトたちは山積みにされたパンを見ながらそう言うと、魔王は今後レシピを増やすと自慢気に語るが。

メルトとキルりんは口を揃えて食べられるものを作るようにと言うと、魔王はまたジャージーに教えてもらうから平気と自信満々に答えていたが。

そう毎回うまくいくとは思えないと魔王以外の3人は不安を抱きつつパンの山を消化していった。


「うぅぅ・・・美味しいのはいいのですが同じ味ばかりは大変ですね。

ベーコンエッグがあったとしてもこの数とでは割合が付きませんよ・・・・」

「ついつい作りすぎてしまったすまない・・・だが安心してくれ!!このパンは明日の朝食にでも使えば平気だ!!」

「えぇ・・・明日もこれ食べんの??さすがにずっとパンは嫌なんだけど・・・」

「どうせ魔王の言う朝食はこの残ったパンとベーコンエッグだろ??

だが、捨てるのも勿体ないし・・・魔王が怒るのも目に見えてるしな。

ここは腹をくくって食べきるしかないぞ・・・」

そう言ってハルトたちは無理やりパンを胃の中へ押し込んで食べきると。

身動きが出来なくなっていた。


「もぅ・・・これ以上食べられませんよ・・・ケーキとか甘いものが来ても無理です。」

「私もさすがに限界・・・シュゴビーを呑む気力もないわ――――――」

「そこまでして食べなくてもいいと思うのだが・・・

やはり私の料理はマズかったか??」

「いや、そういう意味じゃないんだが・・・・

ずっと同じモノを食べるのがキツイだけであってだな・・・でも明日はキルりんが料理当番だったな・・・期待してるからな。」

キルりんはその言葉を聞くと手を上げてグーサインを取り、ばたりとその腕を倒し。胃の中のパンが消化されるまで3人はぐったりとしていた。


「それじゃ、私は先にお風呂をいただくとするかな。」

「先に言ってちょうだいな・・・私たちはまだ駄目そうだわ。」

「あとで私たちも入りますのでどうぞごゆっくり―――――――――」

「パンで行動不能になるとか初めてだな・・・・色んなゲームをしてきたがこんな展開はなかったぞ――――――――」

魔王は先にお風呂に向かって行くと、ハルトたちは少しずつ回復していき。

お茶が飲める程度まで回復すると・・・・・


「それじゃ、私たちも魔王を追いかけてお風呂ってくるから。

覗いたらブッコロスわよ??」

「ば、バカ!!!誰もお前らの裸なんて見ねぇよ!!下らねぇこと言ってないでさっさと入ってこい。」

「それはそれで何か引っかかるのですが・・・ここは触れずに行きましょう。

魔王もきっと待っている事でしょうし。」

パンの呪縛から解放されたキルりんとメルトは魔王を追ってお風呂に向かい。

ハルトは今後の食料がコレで持つのか心配しながら見ていると。

玄関を誰かがノックする音が聞こえ――――――――


「夜にすまない、ハルト・・・少し話がしたいのだがいいか??」

「せっちゃん??どうしたんだ??とりあえず入れよ。」

ハルトは装備をしっかりと整えたせっちゃんを家の中に入れ。

話の用件を聞くと―――――――


「今、この街にホワイトオオカミの群れが来ているらしくてな。

その緊急退治を任されたのだが、私1人では手が回らなくて・・・

他の冒険者やハンターはこの時間は他の様があると言ってガヤガヤ騒ぎながら出てこない始末なのだ。

どうか力を貸してはくれないだろうか??

ちゃんと報酬は払うから心配しないで欲しい。」

「そう言う事だったのか・・・街の冒険者たちめ・・・きっとハメを外して遊んでんだろ・・・・わかった。

メルトたちに相談して来てくれそうなヤツも連れて行こう。

きっと魔王も手伝ってくれるだろうしな。

そして、せっちゃんと無言で待っていると・・・魔王が風呂から上がってやって来ると。

ハルトはせっちゃんの頼みを話し、協力を願うと二つ返事で参加すると答え。

指を鳴らして戦闘装備に着替え、残りの二人を待つことさらに数分。

せっちゃんが首をこっくりこっくりさせていると、二人が現れ――――――――


「アレ?どうして魔王はそんなサキュバスのような格好をしているのですか??

それにせっちゃんもいるじゃないですか。」

「ナニナニ??何か事件??ハルトがせっちゃんに手を出しちゃった事件かしら??」

「バカ!!!今はそう言う下らねぇこと言ってる場合じゃねぇんだ!!!」

「そうだぞ?せっちゃんは重大な任務を受けてここまで来てくれたのだぞ??

それに、ハルトは女を襲う度胸も力もないダメだ。

だからそう言った事件は発生しないと言っておこう。

それよりも二人もすぐに装備を整えて来てくれないだろうか??」

魔王の発言にハルトは精神的ダメージを追いながら魔王に引きずられつつせっちゃんと共に雪の街に出現したホワイトオオカミの群れの退治に向かった。

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