23日目 吹雪の中の恩返し
そして、歓迎会後・・・魔王は酒の耐性があるのか全く酔ってはおらず、メルトは魔王と酒飲み対決でべろんべろんになるまで飲みまくっては店の中でも外でもトイレでも吐き散らし・・・あげく、店主に追い出され―――――魔王と2人でメルトを多少引きずりながら家に着くと、2人でメルトを部屋に投げ込み・・・夜も遅いためすぐに床に就いたのだが――――――――
「うぅ・・・うぇっくしょい!!!!あぁぁ・・・サッムゥ・・・魔王に部屋を貸したところまでは良かったが薪を焚いても全然ぬくもらねぇし最悪だ・・・ってか日本よりも寒いんじゃねのか!?ココ!!」
「何を朝から騒いでいるのよ???外のカエルの鳴き声で寝れなかったの???
って、何でハルトはこんなところで毛布にくるまっているのよ??」
「それはだな、私がメルトから漂う酒の臭いが気になって寝られないと言ったらハルトが自分の部屋を貸してくれたのだ。
私は一緒に寝てもいいと誘っては見たのだが・・・何故かハルトは拒否しこういう状況になったと言うわけだ。」
「すみません、おはようと気持ちよく言いたいのですが・・・・外を見てください。
――――――――――スーパー猛吹雪ですよ??」
キルりんの言ったスーパー猛吹雪とは・・・この地域の冬場に起こる台風のようなもので、数メートル先が見えなくなる程に吹雪が舞い・・・場合によっては数日の間、家から出られなくなることもある危険な吹雪現象であり・・・この状況では薪で火を焚いてひきこもる事しか対応策がなかった。
「ん~それじゃ、春になったら起こして・・・それじゃ。」
「それじゃ、じゃねぇだろ!!!緊急事態だろうが!!!協力してここから出るとか食料の確保が出来ねぇと俺たちは終わりだぞ!?」
「そうですねぇ・・・窓の外を見てみますか・・・・・
ん~~氷漬けのカエルが大量に転がったり飛ばされていったりしてますね・・・・」
「だが、この状況で外に行くのは《《自殺行為)》だぞ???
命が惜しくないモノがいれば出て行けると思うのだが―――――――」
魔王が外を見ながらそう言うと・・・キルりんとメルトはお金とカバンに暖房装備を集めだし、魔王の発言から嫌な予感はしていたが・・・まさかこうなるかと玄関の前に立っていた。
「その、私はパンとハムと・・・この際だもの食べれるモノだったら文句は言わないわ!!!
さすが、私の召喚したタフな使い魔ね!!!こういう時のためにあなたがいて本当に助かったわ!!!」
「助かったわじゃねぇよ!!!こんな猛吹雪の中を出歩いて行ったらそれこそ行方不明になるだろうが!!!
って・・・キルりんそのロープの束は何だ??もしかして・・・ハハハ、まさかな・・・そんなことをしてまで外に出したりしないよな???な?冗談だろ??」
「ハルト・・・私たちの死活問題なのです!!!一人の犠牲で皆が救われる可能性があるのなら・・・涙を流して感謝の1つでもしましょう。
だから、ハルト・・・私は暖かいモノが食べたいです!!!
例えばですが・・・《《KFT)》のシチューなどが・・・・」
「ハルト・・・私たちのために危険な事を・・・ハルトの友として誇りに思うぞ!!何、こちらのロープの心配は無用だ!!見よロープはしっかりと家の柱に括り付けておくから・・・グッドラックハルト!!」
と、玄関は開かれ・・・戻ることを許されないまま猛吹雪の中を1歩ずつ確認しながら進んでいると久々にバロンが話しかけてきた。
「ハルトよ久しいな・・・で、どうしてこんな吹雪の中を歩いておるのだ??
また、誰かに騙されたのか??」
「またって何だよ!!!俺は誰にも騙されたことなんてないからな!!!
これは騙されたとかじゃなくて陰謀だ・・・ヤツ等は俺が死なないからって滅茶苦茶させてるだけだ。
で、バロンはどうして出て来たんだ??何か用でもあったか??」
と、バロンに話しかけると・・・バロンはハッハッハと笑い、この吹雪の中でも使える呪文の1つを教えてくれた。
「これは
「そりゃ、いい・・・・
―――――――おぉ~これは便利だな!!サンキューバロン!!」
と、バロンに感謝をするが・・・バロンは言い忘れた事があるとオマケ程度に追加してきた。
「灯火は念じれば消えるのだが・・・コレは魔性の光だ。
つまり、魔物や害獣が集まりやすいから気をつけるんだぞ??
そうだな、この吹雪の中だと・・・ファングやフリーズゴーストが出てくるだろうが、まぁ気にするな!!!それじゃ――――――」
「おい、待て!!!それじゃ、じゃないだろうがッ!?
一番重要なマイナス面を先に言えよ!!!って・・・まさか・・・この鳴き声って・・・もしかして??」
不思議なうめき声が聞こえたと思い・・・灯火で左右に光を当てると照らされた狼がワンと咆えてこちらに向かって走り出した。
「うおわぁぁぁぁ!!!だからこんな猛吹雪の中の買い物は嫌なんだよ!!!!」
愚痴を吐き捨てながら走ると・・・よく行く酒場に光が灯っており、店内に駆け込むと店主が新聞を読んで娘のウェイトレスと共に暇そうにしていた。
「アレ?ハルトさんじゃないですか??どうしたんです?こんな猛吹雪の中歩いてきたんですか??」
「ハルトには雪の女王の加護でもついてんのかねぇ・・・こんな吹雪の中、ウチの店に来た奴はハルトが初めてだ!!!
いい自慢話ができたのはいいが・・・今日は何にするんだ??」
「ハァハァ・・・ハハハ、そうだな・・・まずはシュゴビーで体を温めたい。」
まずは酒で一杯ひっかけてから数日分の食糧を買い込み、かばんに山積みにすると・・・店主とウェイトレスに見送られながら再びロープの方へ歩いて行った。
「シュゴビーが効いてるせいか体がポカポカだが・・・あのオオカミと出会わないかメッチャ不安なんだが―――――」
「どうしたハルト??1人でブツブツ言って心配になって来てみれば・・・寂しいのか??」
バロンにいらない心配をされながらロープを辿って歩いていると・・・フラグが立ったのか、いや・・・フラグが立ち過ぎだとツッコむべきか・・・オオカミの群れに囲まれていた。
「おい、バロン・・・この状況だとお前ならど、どうする?」
「そうだな、この場合だとエサとなるモノを投げて逃げるか・・・体中を噛まれながら帰るかだが・・・2つに1つだろう。」
この場合だと前者の方が自分に被害が少なくて済むと思い・・・オオカミに対して食料を差し出すと、オオカミたちは食材を食べ始め・・・オオカミたちが食料を食べ終わると未だにコチラを物欲しそうに見つめていた。
「バロン・・・コイツら・・・ハラペコ軍団か??」
「そうだろうとも、何せこの猛吹雪・・・人間がこれだけ苦しんでいるんだ、生物が苦しまないワケがなかろうて。」
バロンの完璧なまでの発言に言い返す言葉がなく・・・カバンの中のほとんどの食材を並べると、オオカミたちはガツガツと食べ・・・・
「ママ~~ボクデザートに果物が食べたいよ~~」
「コラッ!!人間さんが置いてくれる食べ物で我慢しなさい!!!」
「ウチの子が飛んだご無礼を・・・」
「イエイエ、アハハ・・・ドウゾコレデヨカッタラタベテクダサイ。」
「ハルトよどうしてカタコトなのだ??
それにしても人語を介するオオカミとは・・・ウェアウルフ種なのか??」
果物を置くと・・・子供のオオカミはムシャムシャとリンゴを食べて満足げに消えて行き・・・その父と母オオカミはこちらの住んでいる家の事を知っているのか、近くにお礼をすると言ってオオカミの群れは綺麗さっぱりといなくなってしまっていた。
「なぁバロン・・・俺、頭がおかしくなったのか???
オオカミ家族と会話してたようなんだが・・・・」
「そうだな・・・ハルトはややおかしいがアレは間違いなく半人獣のウェアウルフだ。
オオカミと間違えられてハンターに狩られて困っていると聞くが・・・珍しいものに出会えたな!!!ハッハッハ!!!」
そして、食料が殆どないまま家に戻ると・・・メルトはいつものように怒鳴り散らし、グリグリを受けながら謝ると言った流れをした上で魔王とキルりんがどうしてこうなったのかと尋ね、バカにされると思いつつオオカミとのやり取りを全て話した。
「へぇ~ハムハムハム・・・・そんなコトがあったんですね~~寒さで見た幻覚か何かではなさそうですし・・・・ハルトの事をダニ程度信じますよ。」
「この辺りにウェアウルフか・・・ヤツらも生息するのに苦労しているんだな。
だが、仲間以外を信じないヤツらがハルトを信用したとなると・・・やはりハルトは何か特別なのかもしれないな。」
「そ、そんなの今は関係ないわ!!コレを見なさいよ!!!ハルトが持って帰ってきたのは冷凍ミカンに冷凍リンゴ冷凍バナナ・・・私たちは小学生じゃないのよ!?
こんなのばっかり食べてたらお腹がピーピーになっちゃうじゃない!!!」
メルトはギャーギャー文句ばかり言っていると・・・表の方から荷物を置く音が聞こえて出てみると・・・そこには犬の手形が押された手紙が1枚と大量の銀杏が入ったカゴが置いてあり、オオカミたちの変わった恩返しが届いていた―――――――
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