19日目 魔王城の食堂ハルト屋

魔王の城で働き始めて2日目の朝・・・派遣やバイトと違ってゆっくり起きれたのはいいのだが・・・魔王んとこの食堂は酒場と比べることのできないくらいに酷い味で、文句を料理長に言った所・・・料理経験がないとか、だから仕方ないと言って・・・どおりでこの食堂には人がいないわけだと感じ、帰り際に料理長から今日一日だけこの調理場で料理を作って欲しいと頼まれ・・・魔王の授業が始まるまでと約束して請け負ったのだが・・・・なぜ食べに来た側が振舞う側になっているんだ?と疑問しかないままであった―――――――


「で?何を作ればいいんだ???一通りの具材はあるが・・・・俺だって料理という料理は作れないんだが??」

「俺に聞くなよ???なんだぞ?んなもん自分で適当に考えてに適当に切ったり混ぜたり焼いたりして作って出してくれ。それじゃ、俺は城下町で遊んでくるから・・・またな――――」

と、元庭師の料理長はどこかへ行ってしまい・・・・俺は自分にできる最高の料理を考え・・・手間と労力を抑え、用意すると―――――

初のお客第一号がやってきた。


「何でもいいから・・・美味しいモノを出してくれ。」

「あはは・・・了解っす・・・・」

兵士から食事券を受け取って注文を聞くと・・・俺にできる最高の料理・・・・

ホカホカの白いコメに・・・見たからに卵らしい卵を皿に乗せ・・・変なツボに入った色的に醤油っぽい液体を何用かわからない注ぎに入れて兵士の前にドンっと自信満々に置くと言われるとわかっていたリアクションをした。


「なんだ?これは???どういう料理でどういう風に食べるんだ???」

「これはですね・・・と言いまして・・・とある世界のソウルフードで、このホカホカのご飯の上にその気色わ・・・卵を割って乗せ、この匂いや味がっぽい液体をお好みでかけて、混ぜるなり混ぜないなりで食べるものです・・・ハイ。」

兵士の質問に対してテンプレのような言い方で一通りの食べ方を説明すると・・・・兵士は手順通りに盛り・・・卵を混ぜ混ぜして気味悪そうに一口食べると――――――


「うぉぉぉぉおおぉぉ!!!こりゃ、うめェ!!!昨日のドブメシよりも超格段にうまいじゃねぇか!!!タマゴカケゴハン気に入ったぞ!!!

これは同僚にも教えてやらんとな!!!」

「あはは・・・そりゃ、どうもっス・・・・(これ《《だけ)》しかできんが・・・喜んでんだ、これでいいだろ・・・)」

スプーンでガツガツとコメの一粒も残さずに綺麗に食べると・・・大笑いしながら満足げに食堂を出て行き、食堂前で満足げに出て行った兵士のリアクションを見た他の兵士が次々と食堂にやって来て、衝動はすぐさま長蛇の列ができる食堂になっていた。


「お~い!!こっちのメシがまだ来てないぞ~~~」

「こっちはおかわりだ~~~クソうめぇなコレ!!!」

「あんちゃん、俺シュゴビ~~~」

「はいよ~~ただいまぁ~喜んで~~~(何だろ・・・割と楽しい・・・)」

兵士に卵かけご飯を出したり、食べ終わった食器を下げたりと・・・食堂の作業を1人で処理していると・・・この魔王城の主の耳にも食堂の噂が入ったのか、魔王も長蛇の列に並んでいるのが見えたのだが・・・・・


「ふんふふ~ん♪まだかの~~~♪」

「あの~魔王・・・何で長蛇の列に並んでるんです??直接来てくれたら案内したのにさ。

それに・・・それ変装か??全然角とか尻尾が隠せてないんだが・・・・」

魔王だとバレるはずないと自信満々だったのか・・・見破られたことがおかしいとブツブツ言いながら、俺の対応を拒否して魔王は美味しいモノを食べるのに長蛇の列に並んで平等に待って食べることが重要と熱く語り始め、長くなりそうと感じて仕事に戻り・・・5人ほど食堂から出て行くと、やっと魔王が衝動へと入ってきた。


「さぁ~オーダーだ、噂のモノを頼むぞ!!」

「了解~~注文入りました喜んで~~(棒読)」

魔王と兵士たちの卵かけご飯を用意し・・・テーブルに運ぶと、魔王はエプロンを掴んで食べ方を尋ねてきた。


「これはどうやって食べればよいのだ??

私はこういう食べ物は興味はあったのだが食べたことがないから説明たのむ。」

「あぁ・・・割って、かけて、かけて、混ぜて・・食う、以上。」

何度も何度も兵士たちに同じ説明をしていたせいか段々と説明が雑になっていたが・・・魔王は言われた通りに作り・・・ぐちゃぐちゃに混ぜてからスプーンで一口食べると――――――


「ウマッ!?私はこんなに見た目がグログロな食べ物を食べたのは初めてだったが・・・これは兵士たちがハマるのもわかる気がするの!!!」

「あ~~~そりゃ、あんなモノを食わされるよりは断然良いだろうが・・・アレと比べられて美味しいと言われると何だかイラっとするが・・・・まぁ、魔王たちが喜んでるんだったらいいか・・・それじゃ、俺は授業の用意をするから。」

料理長と約束していた通り、授業の時間前までで食堂を切上げ・・・調理場にエプロンをかけていつもの部屋に向かうと・・・そこには今回の課題道具が並べてあった。


「これは・・・ろくろか??でも材料は粘土って・・・・まずは形からって奴なのか??」

「ハルト先生早く来ておったのだな~~ん~それにしても良いモノを食った・・・アレはなかなかの美味しさだったぞ!!!だが・・・今日しか食べられないと考えたら少し寂しいものよの~」

口や頬にご飯粒を付けて自信満々に言っていたが・・・魔王の貫禄なんて全くなくなっていた。


「魔王・・・口とほっぺにご飯粒がついてるぞ??ちゃんと取った方がいいんじゃないか??」

「フム、では・・・褒美としてこのご飯粒を食べる権利をやろう。

ちまたではこういうのはレアなのだろ??さぁ、遠慮せずにパクッといくがよい!!!」

魔王は胸を張って顔についた米粒を食べる褒美をくれたのだが――――――


「一部じゃレアだろうが・・・・俺はそんなもんいらねぇから・・・さっさと授業するぞ。」

「な!?なぜだ!?なぜ私の魅惑の米粒がハルトの自制心なんぞに負けるのだ!?

こんなレアなケースはもう二度とないかもしれないのだぞ??それでもハルトは私のこのレアな米粒をいらぬと言うのか??」

魔王の最後の質問に笑顔で「いらない」と答えると・・・魔王は笑いながら米粒を取って、俺の口に捻じ込もうとしてきた。


「さぁ!!!喰えッ!!喰うのだ!!食って私の魅力に酔いしれろッ!!!」

「誰が食うか!!!だれが顔についた食べカスを食べて喜ぶと思ってるんだ!?

そう言うのはヘンタイだけだって知らないのかよ!?

だから、その米粒をとっとと捨てるか魔王の口の中にしまえ!」

魔王の手を両手で掴み、ご飯粒が口に入らないように阻止していると・・・魔王は諦めたのかご飯粒を自分の口に含め・・・警戒を解いたスキに無理やり口移しでご飯粒を捻じ込んで来た。


「!?!?!?!?!?!?―――――――ツァッ!?お、おま!?なんちゅうことしてんだよ!?俺のファーストを奪いやがって!?」

「そ、それは・・・ハルトがイヤイヤと拒むからだろう!!それに・・・私も初体験だったんだ・・・お互い様だ。

いや、むしろ!!!この魔王と接吻キスをしたんだ・・・かなりのレアケースだろうに??なぜハルトは喜ばないのだ??」

頭の中がぼんやりと白くなりながら・・・魔王に良かれと思ってやったことは全てが良いわけではなく、無理に押し付けるとと言う事を魔王が納得するまで続け・・・・魔王がやっと好意と言うモノを理解した上で、粘土での授業を始めようとした時、再び魔王は俺に尋ねてきた―――――


「だ、だが・・・ハルトは・・・・私とチュウをして・・・本当に嫌だったのか???」

「無理矢理じゃなかったら・・・良かったかもな。

ただ、魔王・・・アンタは俺よりも地位が上の存在なんだ、それを自覚して行動しろよ??下手すりゃ俺が罪人になっちまうからな。」

と、話すと・・・魔王は唇に手を当てて安堵し、俺は手本となる模型を見ながら粘土で手際よく形作り・・・魔王はさっそく自信ありげに粘土をこねて模型の形作りを始めた―――――――――

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