13日目 亡霊の対処
昨晩、メルトの心の傷を癒すために酒場に行ったのはいいのだが・・・・思っていたよりも傷は深く、酒を飲めば飲むほどメルトの涙はテーブルに溢れ・・・びちゃびちゃにしながらシュゴビーを何杯も呑んではトイレに行って盛大に戻していた。
そして、握っていた1万ゴールドを使い切ると・・・俺たちも一緒に家に帰り、気が付けば次の日の朝になっていた。
「んん~~~あぁ~~~よく寝た・・・今何時だよ・・・」
水時計は昼の11時を指しており、未だに家の中が騒がしくない辺り・・・・メルトたちはまだ寝ていると思い、起き上がると―――――
「ハルト、覚悟!!!えいやッ!!!!」
「お前ぇ・・・ずっと天井でスタンバってたのかよ・・・・」
手を伸ばして起き上がった瞬間、キルりんのナイフの一撃が俺の体を突き刺したがやはりと言うべきか体はなんともなかった。
「おはようハルト!!今日もいい朝・・・いい昼ですよ!!!」
「んなことどうだっていい!!!俺が知りたいのは何で天井に張り付いてたんだ!?お前はクモか何かか!?あと、アレからアイツの様子はどうなったんだ???」
「く、クモとは何ですか!?この芸術的な張り付きを見て表現がクモとは・・・・この件については後でたっぷり議論するとしてですね・・・メルトは帰ってから一晩中泣き叫ぶかと思ってましたが・・・よくわからないままベッドに潜って眠ってしまいましたよ??
そして、寝言で「幸せを邪魔する世界は滅べ」だとか物騒なことを呟いてましたね。」
「そうそう、あと・・・さっき目を覚ましたメルトなんだけど・・・お金を稼いでくるって言ってギルドに行っちゃったけどいいの??」
と、急にアズラえるがキルりんの腹から頭だけをにょっと現して説明し・・・それを見たキルりんは口をパクパクさせながらどうしようもない状態であたふたしていたが、そんな事よりもメルトの部屋に突入すると・・・・
「ねぇ??ハルトってば覗き趣味じゃなくてこういう襲う系だったの??
魔法をぶっこまれたくなかったら100万ゴールド置いて立ち去るか・・・灰となって消えて100ゴールド集めてくるか二つに1つよ!!!!」
「そんな趣味も何もないわい!!ってかお前、昨日のショックの割に・・・立ち直り早くないか??」
「ハルトは見事に引っかかったね。」
「ですね、意外とハルトはちょろいのかもしれないで――――――イダダダダ!!ち、違うのですよ!!これはアズラえるがハルトにイタズラしてやろうって言ってですね・・・」
グリグリを一刻も早く止めるにはこれしかないと・・・アズラえるとの共謀を吐くと・・・アズラえるは笑顔のまま手を振って家をすり抜け、消えて行った。
「今日は今日で何なんだよ!?昼からこんなテンションで大丈夫か!?」
「大丈夫よ、問題ないわ!!!さぁこうなったら覚悟するのよハルト!!!
アンタはこれから焼却よ!!ショウキャク!!!」
「わ、ちょッ!?待ってください!!!メルト、私はまだここにいるのですよ!!!魔法はダメです!!!」
キルりんの必死のバタバタにメルトはチッと舌打ちをしてから俺に光の弾丸を1発撃ちこんで部屋から出て行った。
「ふぅ~危なかったですねぇ~~私がいなかったら今頃この家は焼け跡になってたところですよ??」
「元はと言えばお前たちの責任だろうが!!!!」
「でもでも、ハルトも心配だったからここまで来たんだよね???」
と、アズラえるは天井から頭だけを出して説明すると・・・ダラダラと話すだけでは時間の無駄と考えた俺はこれから生活費等を稼ぎに行くために3人を連れて害獣駆除の依頼を受けて駆除に向かった。
「あの・・・ハルト??わ、私はこういうオバケオバケした所があんまり好きじゃなくてですね―――――
その、もう少し近くにいてくれませんか???べ、別に暗殺者だから怖いとかそう言うのは無いのですが!!!」
「そんじゃ俺はお先に・・・・なんだぁ???怖くないんじゃなかったのか???そんな涙目になってどうしたんだぁ???」
「くんくん・・・匂いますよ~~~死霊系の匂いですよ~~」
「ちょっとッ!?今誰か私のお尻触らなかった!?ハルト・・・もしアンタだったらブッ消すわよ??コレはマジの警告よ??いい??わかった???ねぇ、ちゃんと聞いてるの!??」
薄暗く霧の立ち込める墓地に彷徨う亡霊の正体の確認と、できれば討伐が今回の駆除依頼だったのだが・・・・ロリの1名はオバケにビビり、訳アリ天使は臭いで嗅ぎ分けようとし・・・オカルト女は魅力もない自分の体を誰かが触ったと咆え散らかしていた。
こんなにも
「皆さん!!!あそこに亡霊さん?がいますよ!!!!」
「うっうっで、デターーーーーーーーー!!!」
「ちょっと、キルりん!?そんなに騒いだら気付かれちゃ――――――」
「おまッ!?その亡霊とか言うヤツもうこっちに走って来てるぞ!?早く戦え!!!!」
アズラえるの指さした方からフードを被ったシスターがナイフを持って走り出してきていた。
そのフード被りはナイフで俺を攻撃しようとした際、キルりんの見事なナイフ捌きでナイフを弾き・・・そのスキに俺はフードを引きはがすと――――――
「あぁぁああぁぁぁ・・・・・ぁぁぁああぁぁ―――――――」
「なッ!?あの協会ににいたムッチンプリーストの1人じゃねぇか!!!でも何だか様子が変だな???誰かわかるか??」
「くんくん・・・くんくんくんくん・・・あぁ~コレは何かに乗っ取られてる感じかなぁ・・・でも完全に乗っ取れてないところを見るとまだ助けだせそうだよ?」
「でも、コレ・・・すっごい強力な亡霊が憑いちゃってるわぁ~私でも簡単には引きはがせそうもないんだけど―――――」
「正体を確認したのですから・・・討伐を・・・・あいたッ!?
何をするんですかハルト!!だって仕方ないじゃないですか!!!そういう依頼だったのですから!!!」
対処をどうこう考えていると・・・意識がないまま亡霊に操られたプリーストはうめき声を止め、何かを話し始めた。
「あぁぁぁ・・・・かえ・・・カエリ・・・タイ・・・カエリタイ・・・」
「何か言いましたね・・・カエリタイ??土にでしょうか??」
「おバカ!!!何でもすぐそっち方面に持っていこうとするな!!!
良く考えろ・・・・こういう場合は何か手掛かりとか何かあったりだな・・・」
「体を失ったモノの行き先はあの世・・・つまり、死の世界しかない・・・・
と、言う事はこの亡霊さんは死の世界に帰りたいって事なのかも・・・・」
「でも、アズラえる・・・返すも何も・・・人に憑いてる亡霊をどうやって引きはがすかだけど・・・私はこっち方面の対処は全部消せばいいとしか教えられてないからどうすればいいのよ!?」
メルトはまたもやとんでもないことを口走ったが・・・アズラえるはその発言をスルーして手順を話し始めた。
「まずは・・・そこの亡霊をハルトの体に移して・・・その後にこの魂狩りの鎌で亡霊の魂だけを刈り取れば完了だよ。」
「おい、待て・・・・それって俺の体に異常が出たり後遺症的なのが出たりしないのか!?」
「ハルト・・・短い付き合いでしたが・・・今までありがとうございました。
ハルトの事はきっと忘れません・・・だから安心してやられちゃってください。」
「だ、大丈夫よハルト!!あなたは不死者なんだから!!!
だから胸を張って鎌で狩られると良いわよ!!
大丈夫!!!もしダメだったとしてもお墓くらいは作ってあげるから!!!」
何だかお別れムードになりながら・・・俺の意見を無視した儀式的な何かが無理矢理始まり、アズラえるのやり方でメルトはプリーストから亡霊の魂を抜き取り・・・・その魂を野球ボールの様に俺に投げ込んだ。
「カエリタァァァァイィィィィィイィィイイ!!!!」
「ヒェェェェ!!!マジで投げつけてきやが―――――――ぐへあぁ!?」
「ストライクですよメルト!!!これでハルトの中に亡霊の魂が・・・・」
「こっちのプリーストは無事みたいだよ・・・魂分離ビームのショックで気絶しちゃってるけど、息はしてるからきっと大丈夫。」
アズラえるのツッコミどころ満載な発言に対して・・・プリーストはすやすやと寝息を立てて気絶し・・・そして、これからが害獣駆除の本当の戦いが始まろうとしていた―――――――
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