トラブルへの正しい対処法
「…ハッ!」
「お、起きた」
気絶したアルムが目覚めるのを待っていた一葉は、そう言ってアルムに近寄る。
「おはよう。気分はどうかな?」
「おはようございます…。なんだか、変な夢を見たような…」
頭を押さえて唸るアルムの様子を見て、大丈夫だろうと判断した一葉は、アルムにこれからの行動を説明する。
「なるほど…イチヨウ様とぼーけんしゃ?とやらになれば良いのですね」
「その通り、それでアルムにはこれを付けてもらう」
一葉はそう言って、ふむふむと頷くアルムの目の前に奴隷等に付けるような鉄の首輪を置いた。
アルムは顔を赤らめもじもじとしながら、口元を押さえるとこう言った。
「イチヨウ様、こういうプレイがお好みなんですか?恥ずかしいですけど、私イチヨウ様となら…」
「まだ寝ぼけているみたいだね」
「ごめんなさいごめんなさい!冗談、冗談ですから!」
一葉は、アルムの
ペシペシと一葉の手をタップするアルムに、ため息を吐くと一葉は掴んでいた手を離し、アルムを解放する。
「これは『エイストリング』と言って、レベルを制限する代わりに、制限したレベルの分だけ取得経験値を上昇させるアイテムだよ」
「うぅ…でもなぜそんな物を?」
顳顬を摩りながら、アルムは涙目で一葉に尋ねる。
そんなアルムに一葉はニッコリと笑いかけると、アルムの細い首にエイストリングを嵌めて、アルムを指差してこう言った。
「お前手加減できないだろ」
「なっ!そんなことありません!」
「それなら、何かトラブルが起こった時の正しい対処法は?」
「そんなの簡単ですよ!」
自信満々に無い胸を張りながらそう言うアルムに、一葉は疑いの視線を向ける。
「当事者、目撃者問わず消せば解決!必要とあらば街一つ消すなど造作も…」
「はい、アウト」
一葉がアルムの頭を
「お前、目撃者諸共消すとかどこの世紀末だよ。本当に必要なのは、オーバーなくらいの謝罪と相手の要求を誇張して大声で叫ぶことだ。覚えておいて」
「なるほど…」
「いや、それも違う」
一葉の言葉に先程からやり取りを聞いていたヒイラがそう口を挟む。どうやら耐えられなかったらしい。
「アルムは仕方ないとして、イチヨウ。君のは特に酷い。鬼畜生だと誹られても文句は言えないぞ」
「そんなバカな。これは、僕のプライドと相手の評判以外に傷がつかない最高の方法のはず!」
拳を握って力説する一葉の姿に、「こいつはダメだ。もうダメだ」と言うようにヒイラは首を横に振る。アルムは「あれ?今私バカにされませんでした?ねえねえ」と一葉の体を揺らしていた。
「とにかくアルムの本来の力を使ったら、この世界の一般的な冒険者なんて木っ端微塵だからね。文字通り」
ヒイラの言葉に「それは一般的な冒険者が弱過ぎるのでは…?」と思った一葉であったが、一番低いはずの物理攻撃であの威力である。アルム本来の魔法攻撃を使えば、確かに並の冒険者など木っ端微塵になるだろう。というか、城にいる勇者達ですら木っ端微塵に出来るかもしれない。
もし、そんな事になれば冒険者の前に賞金首になってしまう。それもおそらくかなり高額の賞金首だ。
瓦礫とミンチの中で、爆発を背景に返り血に染まったアルムがドヤ顔でピースしている様が簡単に想像できてしまった一葉は、ブルリと身体を震わせると、絶対にアルムから目を離さないようにしようと心に決めるのであった。
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