12-07 これを書いた榛名は、どっちの世界の榛名なんだろうね
俺は、映研世界にいた一六日から二二日までのあいだに起こったことを、もう一度話した。
映研世界での霧島榛名の大学ノートとの接触。
三馬さんによる世界の状況の
未来からのメッセージ――世界の変質化のさきにある世界の静止と色の薄い世界化。
映研世界でドッペルゲンガーとの接触を
入れ替わり
そのとき、ドッペルゲンガー側の世界に俺が
ドッペルゲンガーとの接触は、
ドッペルゲンガーの出現と
入れ替わり時に現れた「ワームホールのような空間」と色の薄い世界の滞在時間は
俺が話し終わると、三馬さんは一つうなずいてから言った。
「なるほど。おそらくだが、映研世界の霧島榛名さんの
三馬さんの言葉に、俺は
昨晩のジョンの散歩までの平和だった時間。それが、榛名の消失という事態におちいり、さらに、救われたと思われた世界の危機が、いまだに解決していないことを
いや、この世界で榛名が消失した時点で、俺は
「磯野君、君の今の話で目標が一つに
三馬さんは俺から、サークルメンバーに視線を移し見渡す。
「つまり、次の入れ替わり時間、
――八月三一日 二一時二四分三二秒
この時間に合わせて霧島榛名さんを
「三馬、おまえも目を通しただろうが、七月一四日にはじめて色の薄い世界に迷い込んだのは野幌森林公園だ。それも北海道百年記念塔の五階から六階にかけての階段部分だと
「柳井、私もそれについては考えたよ。だけどね、磯野君が最初に色の薄い世界に接触した、この大学の、ええと……どこのベンチだったか――」
「学生生協前のベンチです」
千代田怜が言い添えた。
三馬さんは、そうそうと怜にうなずいて、
「ありがとう。そのベンチにふたたび訪れたところで、色の薄い世界には接触できなかっただろう? 八月三一日の入れ替わり時間であれば、霧島榛名さんを見つけられる重要なポイントの一つにはなるだろうが」
竹内千尋が、思いついたように顔を上げた。
「あの、こっちの礒野の大学ノートは、映研世界みたいになにかヒントをくれるんでしょうか」
三馬さんは、千尋に軽く指差して忘れてたと笑い、
「やはりなにも書かれていないか」
「うーん。あ、そうだ。榛名の部屋に出てきた大学ノートもとなりに置いてみたらどうでしょう。礒野、たしか映研世界ではそれでメッセージが書き込まれたんでしょ?」
千尋の提案に柳井さんはうなずいて、今度は柳井さんの鞄から榛名のノートを取り出した。二つのノートは最後のページがひらかれた状態でテーブルの上に並ぶ。
のだが、榛名のノートの最後のページには、榛名が「俺のことが好きになった」とあからさまに書かれていて、恥ずかしいことこの上ない。
狙いをすましたように、怜の
「これを書いた榛名は、どっちの世界の榛名なんだろうね」
「しらねえよ」
「で、どうなの」
「なにがだ」
怜は俺の
「あー
「この榛名さんの愛の告白に磯野君が
そう言って三馬さんも
こうして八月三一日までのあいだにやっておけることを出し合い、明日、野幌森林公園の百年記念塔を調査することとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます