09-03 じゃあまた今度ということで
「
「わかっているよ。だが三馬の分析、予測は
柳井さんが三馬さんにそう伝えたのを見計らって、
「三馬さん、いまここにある大学ノートは、その大学ノートを選択した磯野が集中するターミナルのようなものってことですよね」
「そうだね。恐らく今回の出来事に遭遇した
「そこでなんですが、九日のこの大学ノートに書き込む前に、あるプリントの裏にも文字の浮かび上がり現象を起こしたんです。そしてそのあと――」
そうだ。
「……ノートを用意して情報共有をしろ」
千尋はうなずく。
「あれは俺の字だった。だから、別の世界の俺が書いたものだとは思う。けど――」
「ああ、たしかに早すぎるな。三馬の言う突然変異には」
柳井さんの言葉に、三馬さんは「なるほど」とうなずくと
「
「それが、さっきの書き込みで言っていた、磯野のインフレーションを警告した
「うむ。これは磯野君のそばにいる、私では無い誰かのメッセージなのかもしれない」
三馬さんは、
「とりあえず、ここから先は重要な事柄以外に文字が追加されることが無いよう祈るしか無いだろう。ただ、無数の選択肢から生まれた磯野君がいるとしてそのそばに私も一緒にいるのならば、他の世界でも、これ以上ノートに書き込まない判断も下している
――この大学ノートの最後の一ページは、基本的には書き込まないルール
としよう。このまま最後の一ページが埋まらなければ、どの世界でもこのルールが
――そうして白紙のページを用意しておけば、磯野君のそばにいる、その「誰か」からのメッセージを再び
そこまで言うと、三馬さんは大げさに腕時計をみる
「さて、もうそろそろ時間だな。この大学ノートを借りたいんだが」
「三馬、なにをするんだ?」
「大学の友人に頼んで
三馬さんは「ただ私の予想では……」と口をつぐみ、
「……まあいい。十六日には返すよ」
俺は三馬さんと連絡先交換を済ませた。
三馬さんは部室を出ようとしたところで、ドアの前で振り向いた。
「そうそう、最近とてもおいしいパンケーキを食わせる店を見つけてね、大学に戻る前に寄ろうと思っているんだが、皆さんもどうかね?」
「ありがとう三馬。今回は
柳井さんが苦笑いで返すのに合わせて、俺を含めたほかの
「じゃあまた今度ということで。それでは皆さんご機嫌よう」
三馬さんは部室を後にした。
「すごいお話でしたね」
ちばちゃんは、ため息をついた。
「そうだね。いろいろと説明してもらったけど、磯野はどう? しっくりきた?」
千尋の問い以前に、ひとつ思うことがあった。
ここ一週間の異常な事態に慣れ過ぎてしまったということ。
いまの俺には、この
もし、いまだに超常現象にいちいち
――生物にとっての「慣れ」は、生きるのに大切な機能なんだろう
そう思った。
この慣れがあったから、三馬さんの話を聞けたんだと思う。
三馬さんは、俺一人では考えの至らないことを次々と
そう、そうなんだよ。
「とても、安心した、って感じかな」
「安心?」
「ああ。七日からのここ一週間は、わからないことがとても不安で、ずっと、なにかに
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます