06.撮影旅行 オカ研メンバーとの協力体制が整った翌日、映研世界に戻された磯野は撮影旅行に参加することになる。
06-01 人呼んどいておもてなしの気持ちとかないんですか?
そこから慌てて着替えて、おそらく「もう一人の俺」が用意したのであろう旅行用リュックを背負って家を出た。……のだが、結局、
千代田怜の車に乗らなくて済んだのは
こうして映画研究会の撮影旅行に不参加、なんていう事態は
現実世界に戻ってきたんだ。この貴重な時間を使って、ちばちゃんから色の薄い世界に迷い込んだか訊き出さなければならんというのに、こんなところで置いてけぼりを食らってはたまったものではない。
とはいえ今日は八月十一日。山の日である。
つまり、お
のろのろと動く柳井さんの車内空間は、ローリング・ストーンズ? のヘビーローテーションで埋め尽くされていた。「黒くぬれ!」……だったか、そんなマイナー進行のむかしの曲が
だがしかし、後部座席の
この
それでもあえてたずねてみると、映画「ショーシャンクの空に」のアンディ・デュフレーンのように
後部座席といえばもう一人、
「今川、
と、俺は
「
おい今川、心とハートで二回言ってるぞ。ルー語を
「今川、来てもらったのはありがたいが、おまえと女子連中を同じ空間に置くことは俺が絶対に許さんからな」
「柳井さーん、人呼んどいておもてなしの気持ちとかないんですか? ひどいわー」
「あとで俺が思う
わざと低い声を
とまあ、俺たち四人は今日もまた雲ひとつない
さて、俺が
この
午後一時半に旅館に
どこもホテルと
お盆休みというのもあって、家族連れとたまに見かける外国人観光客で
ところで到着するまでのあいだに気になっていたことがある。
この映研世界における大学ノートの存在についてだ。とは言っても、ちばちゃんのノートではない。
――もう一人の俺が用意するであろう映研世界側のノート。
もし、不在だった昨日の映研世界で、オカ研で俺がやったのと同じように「文字の浮かび上がり現象」を「もう一人の俺」が行ったのならば、
しかしピックアップの際、リュックを柳井さんの車のトランクにおさめるまでノートのことを
そこで男部屋に入ってすぐにリュックの中を確認してみた。……のだが、どこを探しても見つからない。ということは、
――昨日映研世界にいたもう一人の俺は、まだ文字の浮かび上がり現象を体験していないってことか?
たしかに俺ともう一人の俺が同じタイミングで、情報共有手段を思い出すことはないだろうが、それにしたって鈍すぎないか? もう一人の俺。
と、部屋を見まわすと俺一人。ほかの
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