第345話農園の聖騎士

 アオイ:リンネ島での調査と刻寄せの儀を無事終え帰国する磨墨圭ますみけい博士。帰国後シルフィード王国で本格的な巨大遺跡調査に向けて動き出します。さて、今回は勇者リズ・ヤキシャケさんの仲間がこの国に来ているそうなのですが・・・どうやら足止めにあってるようですね。


 魔界時間15:50 シーラント諸島連合国首都トワイライト島次元国際空港


 天気予報士:大型で非常に強いアラシノオトシゴの身に纏う台風は休眠期が近づき勢力を弱めながら巣のあるストームライト島へ向かって移動してます。アラシノオトシゴの影響で全国に一斉に発生した台風も勢力を弱めつつありますが、各諸島の空港は欠航便が相次いでおります。


 金髪の女性:困ったな、これでは国に帰れんな。


 オーク族の農民:ですねフジさん。


 アオイ:こちらの金髪の女性の名前はフジ・ハクサイさん。種族は人間。人界で勇者と共に魔王を倒した聖騎士様なのですが、何故シーラントにいるのでしょう?


 桃:この辺にいるのでしょうか?


 アオイ:彼女は魔界宇宙財界に君臨する12人の王の称号を持つ『トゥエルブ』の1人『文芸王』黒羽文彦くろばねふみひこ氏の八咫烏文庫グループで週刊グローバルフォーカスの記者をやっている缶塚桃かんづかももさん。


 リズ:編集長殿の情報の通りなら国に帰るために来てるそうだが、この様子では当分足止めを喰う事になるかもしれんな。


 アオイ:こちらのSPの格好が恐ろしく似合う人間の女性が人界で魔王を倒した勇者リズ・ヤキシャケさん。


 1週間前 帝王都サタンヘイルダム 商業エリア 八咫烏文庫グループ本社


 週刊グローバルフォーカス編集部


 先輩記者:桃缶!編集長がお呼びだぞ〜!


 桃:だ〜か〜ら!桃缶って言わないでください!


 ジェームズ:来たか。


 アオイ:彼は週刊グローバルフォーカスの編集長ジェームズ・カタナさん。黒羽社長と共に散り散りになった勇者一行を探してくれている方です。


 桃:お呼びですか?


 ジェームズ:リズさんに吉報です。


 リズ:見付かったのか⁉︎『聖騎士』が!


 ジェームズ:ええ。名前はフジ・ハクサイでしたね。


 桃:とうとう食材になった。なんかトンテク(人界でいう豚に似た食肉用家畜)バラ肉と白菜のお鍋が欲しくなる名前ですね。


 リズ:何だそれは!美味そうだな♪


 桃:リズさん・・・


 ジェームズ:そろそろ良いかな?


 桃:あ、すみません!続けてください。


 ジェームズ:私が入手した情報によると、彼女は魔王討伐後に発生したワームホールに呑み込まれた後カントリア王国に転移したそうだ。


 桃:キングオーク族の魔王ラクス・カントリア陛下が統治する農林水産超大国カントリア王国ですね。


 ジェームズ:そう。ただ、彼女は今国にはいない。


 桃:え?何処にいるんですか?


 ジェームズ:南国の楽園シーラント諸島連合国だ。


 桃:彼処って南国観光リゾートで有名な国ですよね?


 ジェームズ:南国観光リゾートの国でもあるが、同時に南国フルーツの一大産地でもある。フジさんはカントリア国王の命を受け『カカレット』というフルーツの栽培方法を学びに行ってるらしい。


 アオイ:カカレットというのはシーラント諸島連合国の固有種であるフルーツで、カカオとココナッツを合わせ持ったものなのですよ。


 リズ:では今は農園の方にいるのか?


 ジェームズ:ええ。ただ、どの農園かまでは・・・


 リズ:ま、主な特徴などは私がいるからそこまで分かれば問題ない♪


 ジェームズ:帰国は1週間後になります。


 桃:では行ってきます!


 そして現在・・・


 桃:まさか国中のカカレット農家を回ってたなんて。


 リズ:あいつは凝り性だからな。


 桃:そうなんですか・・・って!リズさん。


 お土産のお菓子を頬張るリズ


 リズ:ん?


 桃:もう食べてるんですか・・・


 リズ:ふぉふぇふぉふぁふぉふぁふぉいふぃふぉ♪


 アオイ:『これなかなか美味しいぞ♪』だそうです。


 フジ:相変わらず食い意地はってるなリズ


 リズ:フジ!


 桃:は、はじめまして!週刊グローバルフォーカスの缶塚桃といいます。


 フジ:この食いしん坊勇者のお守りは大変だろう?


 桃:はい、食費がハンパないです。


 フジ:お前の事はニュースで知っていた。まさか週刊誌の編集部にいるとは思わなかったが。


 桃:これでリズさんの仲間が全員見つかりましたね♪


 フジ:何!全員こっちに来てるのか⁉︎


 リズ:ああ、八咫烏文庫グループの情報網を使って探していた。全員揃って各々の用事が済んだら私達が倒した魔王の墓前へ謝罪しに行こうと話していた。皆んな行くと言っていたが、お前はどうする?


 フジ:聞くまでもない、私も行きたいと思っていたところだ♪


 リズ:決まりだな♪


 フジ:ああ!


 リズ:ところで・・・その実が・・・そのカカレットなのか?


 ソワソワするリズ


 桃:もう!リズさん!


 フジ:一個食うか?


 リズ:良いのか?


 フジ:先に言っておく、食べても良いがやめた方がいいぞ・・・ってもう食ってる。


 リズ:・・・・・・・うおーーー!苦い!


 フジ:元いた世界でもそうだったが、お前は何故人の忠告聞かずに食おうとするんだ。


 桃:はいお水。


 リズ:苦すぎて死ぬかと思った。


 フジ:それは植える用のやつだ。食えないこともないが、その状態は生で食ったら駄目なんだよ。ちゃんとした調理法があるんだよ。


 リズ:それを先に言えよ。


 フジ:言う前にお前が脇目も振らずに食うからだ。


 リズ:うぅ。


 桃:はいこれ、リズさんのアドレスです。皆さん用事が済んだら連絡する事になってるので。


 フジ:わかった。


 桃:ほらリズさん、帰りますよ。


 リズ:彼処で口直しに・・・


 桃:そんなの機内食でいいでしょ!時間ありませんよ。これ逃したら1週間は帰れなくなるんですから!


 リズ:わかった。


 フジ:ではまた会おう♪


 リズ:ああ♪





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