11―20
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僕は、レヴィアの左右の乳房を約10分ずつ吸った――。
「ハァハァハァハァハァ……」
レヴィアは、荒い息を吐いている。
レヴィアの母乳の味は、一般的なエルフと同じくらいか少し美味しかった。
全てのダークエルフの女性がこれくらいだとすると、平均レベルはダークエルフのほうが高いのかもしれない。
『勿論、個人差はあるだろうけどね……』
「ごめんなさい。レヴィアさんを使い魔にするためには、こうするのが手っ取り早かったのです」
「何を謝られる必要があるのですか……こんな幸せな気分になったのは、生まれて初めてです……
「召喚魔法を成功させるためには、相手に信頼される必要があります。レヴィアさんは、僕に母乳を吸われたことで、僕の使い魔になる心理的な障壁が低くなったと思います」
「なるほど……確かに今の
僕が刻んでいる8つの【サモン】の【魔術刻印】のうち、7番目の【サモン】の【魔術刻印】を起動する。
【サモン7】
僕は、召喚魔法の【魔術刻印】を起動して、レヴィアをターゲットにする。
『発動!』
レヴィアが白い光に包まれて消え去った。
これで、僕に刻まれている【サモン】の【魔術刻印】は、残り一つだ。
「「――――!?」」
それを遠巻きに見ていたパーティメンバーやアンジェラたちが驚いたようだ。
『レヴィア召喚』
僕は、同じ位置にレヴィアを召喚した。
「あっ……」
先ほどまでは、僕の前で膝立ちの格好だったが、召喚されたレヴィアは、自然体で立った姿勢だった。
レヴィアは、驚いた様子だ。いきなり視線の高さが変わったからだろう。
「座ってください」
「は、はいっ」
――ザバッ
レヴィアが湯船に腰を下ろした。
「どうですか? 僕の使い魔になった気分は?」
「ああぁ……とても幸せな気分……。先ほどまで絶望していたのが嘘みたいです……」
「それは、良かったです。では、ダークエルフについて教えてもらえますか?」
「分かりました。ご主人様……」
レヴィアは、そう言ってダークエルフについて語りだした――。
―――――――――――――――――――――――――――――
ダークエルフの集落は、この半島のずっと南、海の向こうにあるようだ。
おそらく、地中海を南下したところにある大きな島かアフリカ大陸にあるのではないだろうか。
レヴィアは、その場所を『南の大陸』と言った。
ダークエルフは、900年ほど前までは、5つの部族に別れていたようだが、過酷な環境で生活していくために5つの部族は合併し、一つの大きな集団になったらしい。
初代組合長が健在だった頃は、人間とダークエルフの関係も比較的良好だったとのこと。
ただ、ダークエルフは男尊女卑の傾向が強く、男性が威張りちらしているそうだ。
初代組合長も女性だったため、最初はかなり侮られたとか。
しかし、圧倒的な力を見せられ、ダークエルフたちも女性を中心に恭順していった。
ダークエルフの女性たちの立場も改善されていき、彼女たちは、初代組合長に恩義を感じているそうだ。
人間とダークエルフの交流は、主に貿易が目的だったようだ。
ダークエルフの集落があるところに近い場所に『チュニスの街』という港町が作られ、『ローマの街』の南にある『ナポリの街』という港町から、船で行き来できるようになった。
そして、ダークエルフの間に人間の文化が入ってきた。
ダークエルフが伝承する【魔術刻印】には、【商取引】もあったが、知らないものは検索することが出来ないため、人間が作成したものは、ダークエルフの間では知られることがなかったようだ。
ダークエルフには、婚姻という習慣がなく、女性は男性の共有物のような扱いのようだ。
ダークエルフの子供は、乳離れするくらいまで母親が育てるが、物心がつく前に引き離され、子供は集団生活をさせられる。
ダークエルフたちは、コボルトやゴブリンなどのモンスターが徘徊する危険な土地に住んでいるので、危機意識を持った人材を育成するために、そういったシステムを採っているようだ。他にも男尊女卑の風習を刷り込むという目的もあるとか。
また、妊娠・出産した女性は、育児を終えると刻印を刻むことが許されるそうだ。それだと、少子化になり人口が減って行くと思うのだが、刻印を刻んだダークエルフが増えていくため、刻印を刻んでいない一般人のダークエルフの比率が減るだけで、全体的な人口は、それほど変わらなかったらしい。一般人のダークエルフが多くなり過ぎると食糧問題などが起きるため、人口については、調整されていたとのこと。
ダークエルフの人口は、元々、それほど多かったわけではないようだ。
レヴィアによれば、1500人程度だったらしい。
刻印を持つため、あまり人口が増えないようにしていたことが原因のようだ。
人間と交流する前のダークエルフにとって、食糧は貴重だったのだ。
ダークエルフが住んでいる地域は、砂漠のすぐ側らしい。
とはいえ、魔法やマジックアイテム等で水を生成することは可能なので、トウモロコシのようなものを栽培していたようだ。
しかし、多くのダークエルフを養うための大規模な食糧生産は難しい。
【商取引】の刻印で食糧を造り出すことも可能だが、魔法通貨が必要となる。
例えば、毎日、千人分の食事を【料理】スキルで用意するとしたら、かなりの魔法通貨が消費されるだろう。
一日当たり、一人2ゴールドとしても、2000ゴールド掛かるのだ。
100人で分担したとしても一人当たり20ゴールドが必要になる。普通の冒険者には、一日に20ゴールド稼ぐのが難しいことを考えると、コンスタントに稼ぐ方法がなければ、魔法で食糧を用意するのは難しいだろう。
レヴィアは、育児後に【大刻印】を刻むと魔力系の魔術に素質があったため、刻印魔術師に選ばれたそうだ。刻印魔術師は、ダークエルフの女性としては例外的にモンスターと戦い成長することが許される。
魔力系魔術を成長させないと【刻印付与】が使えないため、これは当然のことだった。
逆にそれ以外のダークエルフの女性は、刻印を刻んでもモンスターと戦うことが許されず、低レベルのままなのだそうだ。
これは、ダークエルフの女性が男性に反旗を翻さないようにするためだろう。
『東の大陸』のエルフにも戦いは男の仕事という風潮があったようなので、多かれ少なかれエルフにはそういった思想があるのかもしれない。
ちなみにレヴィアの子供は、男児だったそうだが、誰が自分の子供か知らないようだ。ダークエルフには、親子の情といったものが希薄なようで、厳しい環境で生きていくために真っ当な子育てを放棄しているように思えた。
そして、人間との交流が始まってから、十年以上が過ぎた――。
その間、人間との間には、様々な摩擦が起きたようだ。
その根本にあるのは、人間はダークエルフを恐れ、ダークエルフは人間から疎外されているように感じていたことらしい。
この世界には、褐色の肌を持つ人間が居ない――少なくとも『ローマの街』の近くには――ためか、ダークエルフを見た人間のなかには、悪しき者と決めつける者も居たそうだ。
その上、目つきが鋭く、紅い瞳をしたダークエルフという種族なのだから畏怖の対象となるのも当然かもしれない。
初代組合長という存在もあり、この辺りにはエルフを人間の上位種のように考える者も多かったようだ。
自分達より優れた種族が悪しき存在かもしれないという状況は、その事実を知る人間にとっては恐怖だろう。
そんな状況で初代組合長が亡くなった――。
そして、いくつかの商家が共謀し、高レベルな冒険者を雇って、ダークエルフの集落を襲撃した。
人間とダークエルフの紛争が始まったのだ。
結果的にこの紛争は、決着がつかずに有耶無耶となった。
人間側は、多くの冒険者が死亡し、能力的には優勢でも数で劣るダークエルフ側も半分以下にまで人口が減ってしまった。
その後、ダークエルフたちは、一部の商家と裏で結託して『組織』を作った。
一般的に『組織』と呼ばれているが、特に名前があるわけでもなく、大きく分けて3つのグループに分かれているそうだ。
一つは、『ローマの街』を拠点にしているグループ、もう一つは、『ナポリの街』を拠点に活動しているグループ、そして、最後に『チュニスの街』を拠点にしたグループだ。
ダークエルフたちは、それぞれのグループと関わりを持ち、用心棒的な仕事をしているらしい。
『組織』の主な仕事は、人身売買だ。
人間を攫って奴隷として悪徳商家などに売っているのだ。
ダークエルフの女たちも娼婦として提供されていたらしい。
『組織』は、ダークエルフが人間社会を混乱させるために悪徳商家を利用して作るよう誘導したものだったのだが、その動きに異を唱えたのが、レヴィアたちダークエルフの伝承者だ。
魔力系魔術が使えるダークエルフの女性は、全て伝承者となるため、100人近い数が居たようだ。
人間との戦いでダークエルフの男性が数を減らしたため、対抗できる戦力になったことで女性のダークエルフが対立したらしい。
【大刻印】は、高レベルの魔力系魔術が使える女性じゃないと刻むことができない。
その女性たちと敵対してしまったダークエルフの男性は、窮地に陥った。
ダークエルフの女性陣は、女性たち全員に【エルフの刻印】を授け、モンスターを狩って戦力アップにいそしんだようだ。
その膠着状態の間にダークエルフの男性陣は、人身売買等で結託していた悪徳商家に頼んで刻印魔術師を手配したようだ。
レヴィアは、『ローマの街』の『組合』に助力して貰うために単身、この街へやって来たが、
『組合』は、ダークエルフ同士の争いには関知しないということらしい。
しかも、『組合』に潜入していた商家の息の掛かった職員から『組織』へ密告されて、『ローマの街』で追われる立場となり、命からがら地下迷宮に潜り込んだが、オークに囚われてしまったとのこと。
レヴィアにも正確な年月は分からないようだが、それから十数年の歳月が流れたと思われる――。
―――――――――――――――――――――――――――――
「それは……何というか……大変でしたね……」
僕は、レヴィアの話を聞いて、何と言ったらいいか分からずにそう呟いた。
そして、レヴィアには悪いが、『ダークエルフにもいろいろあるんだなぁ……』などと、他人事のような感想も抱いてしまった。
「残ったダークエルフの女性たちは、無事だと思いますか?」
「分かりません……」
「そうでしょうね……」
かなりの年月が経っているので、もしかすると全滅しているかもしれない。
「あの……ご主人様……?
「分かった。じゃあ、レヴィアって呼ぶね」
「はい」
――ザバッ! ザバザバザバザバ……
クリスティーナやアンジェラたちが立ち上がって、こちらへ向かってきた。
「ねぇ? あたしたちの母乳も飲んでくれない?」
アンジェラがフェリスとレヴィアの背後に来てそう言った。
「え? アンジェラさんたちを使い魔にするつもりはありませんよ?」
「クリスたちに聞いたんだけど、凄く気持ちいいらしいじゃないか?」
「それは……どうなんでしょう……?」
「待て! 貴様ら。まずは、妾たちが先じゃ」
「そうですわ」
カチューシャとフェリスがそう主張した。
「あのっ、あたしたちは、そのダークエルフのように使い魔にしてほしいんだけど……?」
カチューシャの後ろに回り込んでいたベリンダがそう言った。
「どうしてですか?」
「あたしたちも帰る所がないのよ……」
「カナリス家は、20年前くらいに断絶したの……」
クリスティーナが補足するようにそう言った。
「そうですか……。でも、冒険者なら実家が無くても問題ないのでは? 装備等は、僕のほうで用意させていただきますよ?」
「ありがとう……。でも、もう怖くて冒険者を続けることはできないわ……」
オークに囚われて心が折れたのだろうか、ベリンダは、そう言って顔を伏せた。
「分かりました。では、後でテイムしますね」
周囲を見るとアリシアがパーティメンバーたちから少し離れた位置に居るのが見えた。
「…………」
思いつめたような表情をしている。
どうしたのか訊ねようとしたら、カチューシャが膝立ちになり、僕の前に移動してきた。
「さぁ、主殿……。妾の乳房を吸ってたもれ……」
『ま、いいか……』
僕は、カチューシャの小さな胸に吸い付いた――。
―――――――――――――――――――――――――――――
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