11―19

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 僕は、『ロッジ』に戻った――。


 救助した女性の中で『ロッジ』に残っていたのは、アンジェラのパーティメンバーとダークエルフの女性、それと最初に救助した二人の女性、ベリンダとダニエラの合計9人だった。


「ユーイチ、これからどうするの?」


 クリスティーナが僕にそう質問をした。


「まだ、お昼くらいだけど、今日はかなり戦ったからね。とりあえず、休憩しましょう」

「賛成だぜ!」


 カーラが口を挟んだ。


「じゃあ、昼食を配るから、席に座って」

「「分かった」」


 僕は、ダークエルフの女性の前に移動した。

 オフェーリアとオフィリス、カチューシャが僕の後に続く。


「――――ッ!?」


 女性は、警戒しているようだ。

 厳しい表情をして身体をかき抱くように毛布を羽織っている。


「こちらへどうぞ」


 僕は、ダークエルフの女性を近くのテーブルへ誘った。


「オフィリスは、他のテーブルに食事を配ってきて……昼食だし、『コーンクリームスープ』と『サンドイッチセット』でいいと思う」

「分かりましたわ」


 オフィリスが他のテーブルへ移動していった。


『コーンクリームスープ』『コーンクリームスープ』『コーンクリームスープ』『コーンクリームスープ』


『サンドイッチセット』『サンドイッチセット』『サンドイッチセット』『サンドイッチセット』


 近くのテーブルに【料理】スキルを使って『コーンクリームスープ』と『サンドイッチセット』を4セット出した。

 そして、テーブルの反対側に周り、長椅子の真ん中の席に座る。

 オフェーリアが僕の右側に座り、カチューシャが左側に座った。


 毛布を羽織ったダークエルフの女性は、反対側の席の近くに立ったままだ。


「どうぞ、お座り下さい」

「……ああ」


 ダークエルフの女性は、僕の正面に座った。

 僕が反対側の席の真ん中に『コーンクリームスープ』と『サンドイッチセット』を出していたためだ。


「よかったら、食べてください」

「いただこう……」


 そう言って、スプーンを手に取り、『コーンクリームスープ』を一口食べた。


「ううっ……」


 ダークエルフの女性は、目を閉じ涙を流している。


『よほど酷い目に遭ったんだろうな……』


 僕は、何て声を掛けたらいいか分からず、昼食を食べ始める。


 ダークエルフの女性は、暫く泣いていたが、目を開けて猛烈な勢いで食事を摂り始めた。


『……おっぱいが丸見えなんだけど……』


 ダークエルフの女性は、右手にスプーンを持ち、左手にサンドイッチを取って交互に食べている。

 そのため、正面に座った僕の位置からだと大きな乳房が丸見えだった。

 僕は、ダークエルフの女性から視線を引きはがし、食事に集中する。


 食事を摂っていると、オフィリスが戻ってきた。


『コーンクリームスープ』『サンドイッチセット』


 ダークエルフの女性が座っている席の向かって左隣に『コーンクリームスープ』と『サンドイッチセット』を出した。


「オフィリスも、そこに座って食べて」

「分かりましたわ」


 右の席を見るとオフェーリアは、食事に手を付けていなかった。


「オフェーリアも食べて」

「ハッ!」


 オフェーリアは、フェリアと同じ声で返事をした。

 やはりホムンクルスは、融通が利かない。

 目の前に食事を出されても命令しないと食べようとしないのだ。

 左側に座ったカチューシャを見ると、普通に食べている。


「何じゃ? 主殿あるじどの?」

「いえ……」


 僕が見たので、カチューシャは不審に思ったようだ。


「主殿、そこのダークエルフも奴隷にするのじゃろ?」


 そして、爆弾発言をした。


「なっ、何を言ってるんですか!?」

「違うのかぇ? 妾のように使い魔にしてしまえば良いではないか」

「――――っ!?」


 向かいの席を見るとダークエルフの女性が大きく目を開いて驚いていた。


「あ、本気にしないで下さい。別にあなたをどうこうしようとは思っていませんから……」

「今、使い魔と言ったのか?」

「ええ、それが何か?」

「使い魔とは、召喚魔法を使い下僕にしたモンスターのことではないのか?」

「ええ、でも刻印を刻んだ人間やエルフも使い魔にすることができるのです」

「……なるほど……確かに同様の存在とも言えるな……」


 ダークエルフの女性は、ブツブツと何か言っている。


「僕は、ユーイチと言います。あなたは?」

「レヴィアよ」


 ダークエルフの女性は、レヴィアという名前のようだ。


「ここに残ったということは、暫く僕たちに付き合ってもらいますが、その後は、どこまで送ればいいですか?」

「……わたしには、もう帰る場所などない……」

「え? ダークエルフの集落とか無いのですか?」

「あるにはあるが、この街からは遠すぎて移動手段が無い……」

「よかったら、そこまでお送りしますよ?」

「いや……それよりも、先ほどの話を詳しく聞かせてくれ」

「先ほどの話?」

「召喚魔法の件だ」


 ダークエルフにも召喚魔法は伝わっているようだ。


「ダークエルフも召喚魔法を伝承者が受け継いでいるのですか?」

「いや、昔は伝えられていたようだが、今は失伝してしまっている……」

「そうでしたか……」


 ――やはり欠陥魔法とされたのだろうか?


「それで……お前は、何故、召喚魔法が使えるのだ?」

「僕は、『東の大陸』から来たので……」

「それがどうした?」

「えっと、『東の大陸』にはエルフが住んでいます……」

「それで?」

「エルフに刻んで貰いました」

「それは、あり得ないだろう?」

「え? どうしてですか?」

「伝承者が人間に刻印を刻むことなど許されるはずがない……それともエルフとダークエルフでは、こうも違うのか?」

「たまたま、伝承者の娘さんと知り合いまして、その人に刻んで貰ったのですよ」

「ふむ……にわかには信じられぬ話だな……」

「疑ってます?」

「いや、わたしに嘘をいても仕方あるまい。ただ、証拠があるのなら見せて貰いたいところだがな」


『フェリス召喚』


 僕は、フェリスをテーブルの側に召喚する。

 白い光に包まれてフェリスが召喚された。


「ご主人サマ?」

「なっ……」

「彼女がエルフの伝承者の一人です」

「まぁっ、ダークエルフとは珍しいですわね」

「久しぶりじゃのぅ」

「あら? あなたは、『ウラジオストクの街』の……カチューシャさんだったかしら?」

「うむ」


 それを見たレリアがこちらにやって来た。


「ユーイチ、これはどういうことだ?」

「なにが?」

「貴様は、エルフも使い魔にしていたのかと聞いているのだ!?」

「まぁ……」

「あなたは、どの部族の出身なのかしら?」


 フェリスがレリアに聞いた。


「アハティマ族のレリアだ」

「ノーランディン族のフェリスよ。といっても、わたくしは、ずっと前に出奔していますわ」

「彼女が人間と結婚したエルフだよ。そしてゾンビとの戦いで富士の麓までゾンビの大軍を誘導した英雄らしい……」

「ノーランディン族の者が結婚した人間とは、ユーイチのことだったのか!?」

「そんなワケないって……僕は、まだ18歳なんだから……」


『ホントは、17歳だけど……』


 僕は、心の中で付け加える。この世界に来たときには、まだ16歳だったが、この世界で数か月を過ごしたので、元の世界では、そろそろ今年の誕生日を迎えて17歳になっているはずだった。

 また、この世界では、数え年が一般的なので、僕は18歳ということになる。


「むっ……確かにそうだったな……」

「『妖精の国』から帰れなくなっていたわたくしをご主人サマが助けてくださったのですわ」

「いろいろあって、フェリスは僕の使い魔になったんだよね」

「しかし、エルフを使い魔にするのは、不可能に近いだろう?」


 レヴィアがそう言った。


「どうしてですか?」

「人間に比べてエルフは、魔法に対する耐性が高い。【スリープ】なども効きにくいはずだ」

「そうなの?」


 フェリスに聞いてみる。


「そうですわね。概ね合っていますわ。つまり、一般的に人間と比べてエルフは、レベルが高いからだと思いますわ」


 確かにそれはあるだろう。それに魔法系のステータスも高いのかもしれない。隠しパラメータに魔法耐性のようなものがあるかもしれないし……。


「なるほど……」

「でも、ご主人サマには、関係ありませんわ。わたくしたちよりもずっとレベルが高いわけですから」

「で、では、わたしもユーイチ殿に【サモン】を掛けられたら使い魔になってしまうのか!?」


 レヴィアが驚いたように口を挟んだ。


「心配しなくても大丈夫ですよ。無理矢理、召喚魔法を使ったりはしませんし、召喚魔法は、相手が望んでいないと、まず掛かりません」

「相手が望むというのは、どういう意味だ?」

「例えば、ここに居るフェリスやカチューシャさんは、僕の使い魔になりたいと願ったから召喚魔法で使い魔にしたのです」

「そうか……召喚魔法は、効き辛いのではなく、対象がそう望まないと効果を発揮しないということだったのか……」


 レヴィアが一人で納得したようなことを言った。


『ダークエルフもエルフと似てるなぁ……』


 理知的で探求心の強いところなんかは、よく似ていると思った。

 僕が思い描くエルフの印象は、理詰めで生きているという感じなのだ。

 フェリスは、あまりそう見えないが……。


「では、主殿。食事も済んだことだし、一緒にお風呂に参りましょう」


 カチューシャがそう言った。


「まぁっ、いいですわね」


 フェリスが同意する。


「待ってください。まずは、オークに囚われていた人たちから先に入って貰いましょう」

「一緒に入れば良いではないか」

「そうはいきませんって……」

「あたしたちは、構わないわよ」


 アンジェラが立ち上がってそう言った。


わたしも別に構わん」


 レヴィアが向かいの席でそう呟く。

 僕は、助けを求めるようにベリンダを見る。


「あたしたちもいいわよ」


 ベリンダは、ニッコリ微笑んでそう言った。


「では、参ろうぞ」


 カチューシャが立ち上がった。

 そして、僕の腕を持ち上げる。


 僕は、観念して立ち上がった。

 食器を片付ける。


 そして、『ハーレム』の扉へと向かった――。


 ◇ ◇ ◇


「うわぁ……」

「凄いわね」

「これほどとは……」

「広い……」


『ハーレム』の浴場に入ると背後から感嘆の声が聞こえてくる。


『装備8換装』


 僕は、裸になった後、湯船に入り腰を下ろした。


 ――ザバッ、ザバザバ……


 使い魔とホムンクルスたちが湯船に入って僕を取り囲むように立った。


「座って」


 ――ザバーッ


 使い魔たちが湯船に腰を下ろした。

 左隣にカチューシャ、正面にフェリス、右隣にオフェーリア、背後にオフィリスが居るようだ。


 ――ザバッ、ザバザバザバザバ……


 クリスティーナとアンジェラのパーティメンバーたちも湯船に入ってきた。

 ベリンダ、ダニエラ、ダークエルフのレヴィアが続いている。


 レヴィアは、僕の側へやって来る。

 居場所が無いのかもしれない。


 ――ザバザバザバ……


 レヴィアは、僕の前で立ち止まり恥ずかしそうに裸身をよじった。

 僕は、彼女の身体から視線を逸らす。


「ユーイチ殿、わたし貴方あなたの使い魔にしてくれないか?」


 レヴィアは、フェリスの隣に立って、そう言った。


「本気ですか?」

「ああ、わたしには、行く当てがない……オークに蹂躙されたこんな身体で悪いのだが、ユーイチ殿に貰っていただけるのなら、この身を捧げよう……」

「自暴自棄にならないでください」

「自暴自棄になどなってはいない。やはり、わたしのようなダークエルフは使い魔にできないのだろうか?」

「……分かりました。では、あなたの母乳を吸わせてください」

「なっ……分かった……。好きにしてくだされ……」


 レヴィアは、そう言って湯船に膝を突き乳房を差し出した。


 僕は、レヴィアの母乳を吸った――。


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