9―28

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「終わりましたわ」

「こっちも終わったわ」


 トウコとカナコがテーブルから下りてきた。


「レーナたちは、こっちに来て」

「ええ」

「分かりましたわ」

「いま行く……」


 レーナたち3人が僕の前に来た。何故か裸で……。

 召喚魔法を使うときには、対象が鎧を着ているよりも裸のほうがいいのだろうか?

 魔力系の魔術は、金属製や革製の装備の下に【魔術刻印】があると発動しない。

 試しておいたほうがいいかもしれない。


「ちょっと待ってて」


【工房】→『装備作成』


『アダマンタイトのプレートメイル+50』をベースに材質をミスリルに変更した『ミスリルのプレートメイル』を作成することにした。

 しかし、素材の追加はしない。重すぎる装備は、レーナたちでは装備できない可能性が高いからだ。

 アダマンタイトではなくミスリルを素材に使うのも、少しでも軽量な装備を作成するためだ。


【商取引】


『ミスリル鋼』を90個購入した。

 その素材を使って『ミスリルのプレートメイル』を3セット作成する。


『トレード』


 僕は、レーナたちに『ミスリルのプレートメイル』を一つずつ渡した。


「それを装備して」

「うわぁ、こんな装備を貰っちゃっていいんですか?」

「凄いですわ」

「凄いけど、あたしは魔法が使えなくなっちゃうよ……」


 レーナたちは、白い光に包まれた後、金色がかった銀色の甲冑姿となった。


「カナコ、この3人を君の使い魔にしてあげて」

「分かったわ」


 カナコが【サモン】をレーナに発動する。

 甲冑姿のレーナは、白い光に包まれて消え去った。

 どうやら、召喚魔法は金属鎧を装備した者にも作用するようだ。


 続けて、オリガとミラが【サモン】の魔術を受けて消え去った。


「じゃあ、3人を召喚して」

「ええ」


 甲冑姿のレーナ、オリガ、ミラが先ほどと、ほぼ同じ場所に召喚された。


「フェリス、ルート・ニンフ、ユキコは、レーナたち3人に【魔術刻印】を刻印して。刻印の種類は、娼婦たちと同じで」

「分かりましたわ」

「ええ、分かった」

「畏まりました」


 レーナたちを見ると白い光に包まれて、全身鎧の甲冑姿から全裸になった。


「このテーブルに3人は狭いから、向こうのテーブルの上で【魔術刻印】を刻んで貰って」

「詰めれば、3人で並べますわ」

「そうですよ」

「ここで刻んで貰ったら駄目ですか?」

「じゃあ、好きにすればいいよ」

「はい」

「ああ……、この感覚……、これが使い魔になるということですのね……」

「うん。これは凄いわ」


 ――彼女たちは何を言っているのだろう?


「どうかしたの?」

「今までとは、全然違いますのよ」


 オリガがそう答えた。


「何が?」

「ご主人様っ」


 突然、オリガが僕に抱きついた。


「うぷっ……なにを……」


 僕は、オリガの抱擁から逃れた。


「あんっ」

「なんなの?」

「ご主人様を見ているとウズウズしてしまうのですわ」

「ええ、そうね」

「ああ……抱かれたい……」


 どうやら、彼女たちは召喚魔法により精神に影響を受けているようだ。


「3人とも一瞬だけ【戦闘モード】を起動して」

「「はいっ」」

「どう? 落ち着いた?」

「ええ。発情は収まりましたが、ご主人様を見ているとまたウズウズしてきますわ……」

「とりあえず、刻印を刻んで貰ってきて」

「分かりましたわ」


 レーナたち3人は、僕が座る長椅子を踏み台にしてテーブルに上った。


「ねぇ……? ユーイチ様? あたしにもご褒美をくださいよ?」


 カナコがそう話し掛けてきた。


「ご褒美?」

「あーん、ユーイチ様のいけずぅ……」

「…………?」

「あたしのおっぱい吸ってください……」

「……それは、後でね」

「分かりました。約束ですよ?」


 使い魔たちは、僕に授乳すると幸福感が得られるようだ。

 僕としても使い魔たちの母乳は凄く美味しい飲み物なので授乳されるのは嫌ではないのだが、いい歳をして授乳されているというのは、気分的にへこんでしまうのが難点だった。

 相手は使い魔だから気にしなくてもいいと理性では分かっているのだが、そう簡単に割り切れるものではない。


「アナスタシアさん、こちらに来てください」


 僕は、アナスタシアを呼んだ。


「はい。ただいま参ります」


 長椅子に座る僕の前にアナスタシアとアーニャが来た。

 アーニャは呼んでいないのだが、従者として常にアナスタシアの側にはべるのが務めなのだろうか。

 それにしてもアーニャをどうするかは悩みどころだった。

 刻印を刻んでいなければ、40歳になるまで教団に勤務してもらえばよかったのだが、既に刻印を刻んでいるため、使い魔にするかどうかという難しい判断を迫られるのだ。

 実際の年齢は分からないが、こんな年端も行かない少女を使い魔にするのは鬼畜の所業に思えたし、かといって、彼女だけ使い魔にしないというのも、教団員の中で仲間はずれになってしまう。

 僕は、彼女自身の判断に従おうと思った。強く望むようなら使い魔にすればいいし、使い魔になるのが嫌そうならしなければいい。


「アナスタシアさん、悪いのですが、上を脱いで貰えますか?」

「分かりました」


 アナスタシアが白い光に包まれた。

 光が消え去った後には、上半身裸で下半身に黒のアダルティな下着とストッキング&ガーターベルトをまとった姿となっていた。

 僕は、聖職者とは思えない格好に唖然あぜんとする。


「さぁ、次はどうすればよろしいかしら?」

「今の状態では、アナスタシアさんに召喚魔法を掛けても成功しないと思います」

「では、どうすればよろしいのでしょう?」

「刻印を刻んだ女性は、母乳が出ますよね?」

「は、はい……。もしかして……?」


 妊娠や出産した女性は母乳が出る。

 詳しくは知らないが、そうした母乳はしぼるだけでも出るようだ。

 しかし、刻印を刻んだ女性は、妊娠しているわけでもないのに母乳が出る。

 母乳の味も妊婦や出産した女性のものとは違うはずだ。

 古い記憶なので細部は曖昧だが、僕が幼児だった頃、妹の優子が授乳されているのを見て、母に母乳をねだったことがあった。

 そして、母乳を吸ってみたら、物凄く青臭い味だったので、僕は思わず吐き出してしまったのだ。

 子供の頃から、何度もそのネタで母にイジられてきたので、何となく凄く青臭かったという記憶が残っている。

 そのため、刻印を刻んだ女性の母乳とは全く味が違うことは確かだと思う。


「原理はよく分からないんですが、授乳した相手から召喚魔法を受けると使い魔になってしまうみたいなんですよ」

「まぁっ!?」

「女性が持つ母性本能に関係があるのかもしれませんね……」


 ――授乳することにより、その相手を自分の子供のように錯覚してしまうのだろうか?


 そんなことを考えていたら、壁際に立っていたフェリアが口を挟む。


「いいえ、ご主人様だからですわ」


 フェリアはそう言うが、それなりに好みの相手じゃないと授乳することはないだろうし、そういった行為により召喚魔法を受け入れる精神的な防壁が薄くなるのではないだろうか。

 おそらく、いくら母乳を吸われても嫌いな相手だった場合には、召喚魔法が受け入れられることはないだろう。

 どちらにせよ、本当のところは、サンプルが少なすぎて判断できない。

 今まで、僕が使い魔にしてきた者たちは、何らかの理由で僕に対して恩義を感じている者が多かった。

 そうじゃなくても、僕たちの力を目の当たりにして畏怖を抱く者たちだった。

 そのため、召喚魔法を受け入れる下地ができていたのではないだろうか。


 前にフェリアから聞いた話によれば、刻印を刻んだ女性は、乳房を搾っただけでは母乳が出ないということだったが、それは本当だろうか?


「あの……? ユーイチ様……?」


 僕が考え事をしていたため、アナスタシアが話し掛けてきた。


「では、こちらに来てください」

「はい……」


 そう言ってアナスタシアは、僕が座る長椅子に右膝を乗せて乳房を差し出してきた。


「吸わせて貰う前にちょっとだけ実験に付き合って貰いますね」

「お好きにどうぞ……」


 僕は、アナスタシアの形の良い乳房を両手で握ってみた。【戦闘モード】は起動していないので、彼女がダメージを受けるほどの力は掛からないはずだ。


「あんっ」

「ごめんなさい。痛かったですか?」

「いいえ、変な声を出して申し訳ございません」

「痛かったら言ってくださいね」

「はい……」


 僕は改めて母乳を搾り出すようにアナスタシアの乳房をムニムニと握る。

 しかし、母乳が出てくる気配は無かった。


「アナスタシアさん……? 刻印を刻んだ女性からは母乳が出ますが、搾り出すことはできるのでしょうか?」

「ハァハァ……い、いえ、そのような話は聞いたことがございません……でも、出るかもしれないので、もっと揉んでくださいませ……ハァハァハァ……」


 アナスタシアは、苦しそうだが、この程度では絶対に搾り出すことはできないと言い切れないので、もう少し続けることにした――。


 ◇ ◇ ◇


「あぁ……ハァハァハァハァ……」


 5分くらい搾乳を続けてみたが、母乳は出なかった。

 やはり、母乳は吸わないと出ないようだ。

 アナスタシアは、トロンとした目をして荒い息を吐いている。


「アナスタシアさん、ご協力ありがとうございます。刻印を刻んだ女性の場合、搾っただけでは、母乳が出ないことが分かりました。では、母乳を吸わせてもらいますね。あの……これは、神聖な授乳行為なので、浮ついた気持ちで行わないで下さいね」

「わ、分かりましたわ」


 それから僕は、アナスタシアの乳房に片側5分ずつくらい吸い付いて母乳を吸った――。


 ◇ ◇ ◇


「ハァハァハァハァ……な、なんれひゅごいのぉ……」


 アナスタシアを見ると、焦点が定まらない目をして、だらしなく涎を流していた。


「アナスタシアさん、大丈夫ですか?」

「え? えぇ……。な、なひももんらいありあぁひぇんあ……」


 ロレツも怪しいし、震えているようだ。


「アナスタシアさん、一度【戦闘モード】を起動してください」

「は、はひぃ……」


 アナスタシアが目を閉じて頭を後ろに仰け反らした。

 長い髪と汗が舞って、花のような香りがした。アナスタシアの髪の香りだろうか……?


「どうですか?」

「はい。落ち着きましたわ」

「じゃあ、トウコさん。アナスタシアさんに【サモン】の魔術を」

「畏まりました」


 次の瞬間、僕のすぐ側に居たアナスタシアが白い光に包まれて消え去った。下着も一緒に消えたので、あの下着は装備品だったようだ。


「アナスタシアさまっ!?」


 それを見たアーニャが声を上げた。


「トウコさん、アナスタシアさんを召喚して」

「はい」


 僕の1メートルくらい手前にアナスタシアが召喚された。


「あ……。わたくし……」

「はい。あなたは、僕の使い魔となりました」

「ああっ、嬉しい……」


 アナスタシアは、涙ぐんでいた。本当に嬉しそうだ。


「では、アナスタシアさん。次は、フェリスに刻印を刻んで貰ってください」

「畏まりました。ご主人様」

「フェリス。次は、アナスタシアさんの刻印を頼む。娼婦たちと同じ種類で【サモン】だけは8個刻んで」

「分かりましたわ」


 レーナたちへの刻印は既に終了していたため、アナスタシアは全裸になってテーブルに上がった。

 それを横目で見ながら、僕は次の使い魔候補者を呼ぶ。


「グルフィヤさん、クリアーナさん、こちらへ来てください」

「はい、ただいま」

「畏まりました」


 グルフィヤとクリアーナが僕の前に来て、アーニャの隣に並んだ。


「お二人も僕の使い魔になって貰えますか?」

「勿論でございますわ」

「……分かりました」


 そういえば、召喚魔法を直接掛ける使い魔が母乳を吸った場合には、成功するのだろうか?

 実験してみよう。


「じゃあ、お二人は上半身裸になってください」

「……分かりましたわ」

「……はい」


 グルフィヤは、下半身に白の下着を身に着けただけの姿となった。エントランスで見えてしまった、あの白い下着のようだ。

 ローブの膨らみから予想していたとおり、グルフィヤはかなりの巨乳だった。


 一方のクリアーナも同じような白の下着を身に着けただけの姿となっている。

 クリアーナの胸も巨乳だが、同じような体格のイリーナの胸に比べると一回り小さい。


「じゃあ、トウコさんは、グルフィヤさんの母乳を片側5分ずつ……」

「お待ち下さい! ユーイチ様に吸っていただけないのですか?」

「あー、後でね。ちょっと実験したいから、トウコさんに吸って貰って。トウコさんは、『エドの街』の教主だった人だから、僕なんかよりもずっと偉いし、長く生きておられるんだよ」

「……約束ですわよ?」

「分かった」


 僕は、クリアーナのほうを見る。


「クリアーナさんは、こっちに来てください」

「畏まりました」


 クリアーナは、僕のすぐ目の前まで来た。

 彼女は背が高いので目のやり場に困って視線を逸らす。

 すると、クリアーナは右の乳房を持ち上げ、左手で僕の頭を抱えて、押しつけた。


「うぷっ……」


 柔らかい塊が顔面に押しつけられた。

 クリアーナは、体温が高いのか乳房が普通よりも熱く感じる。

 僕は口を開けて、乳首を吸った。


「あっ……」


 僕は、聖騎士クリアーナに授乳された――。


 ◇ ◇ ◇


 あれから10分くらいが経過した。

 僕は、クリアーナの乳首から口を離した。


「ハァハァハァ……」


 クリアーナは、荒い息を吐いている。


「トウコさん、終わった?」

「はい。片側5分ずつ母乳を頂きましたわ」

「じゃあ、グルフィヤさんに【サモン】を掛けてみて」

「畏まりました」


 すぐ目の前に立つクリアーナの体の脇からグルフィヤの姿を覗き見ると、彼女の裸体が白い光に包まれた後、光が消えてもグルフィヤはそのままの姿勢で立っていた。


「申し訳ございません。失敗いたしました……」

「やっぱり、僕が母乳を吸わないと成功しないのかな?」

「おそらく、そうだと思います」

「じゃあ、クリアーナさんにも【サモン】を掛けてみて」

「はい」


 クリアーナが白い光に包まれて消え去った。

 今度は成功したようだ。


「グルフィヤさん、こちらに来てください」

「あぁ……嬉しい……」


 グルフィヤが僕の側まで来て、僕の頭を抱きしめた。


「うぷっ……ちょっ……」

「ハァハァハァ……やっと……ユーイチ様に……」


 グルフィヤは、かなり暴走気味だ。

 柔らかい乳肉に僕の顔面が蹂躙される。


『あぁ、柔らかいなぁ……はっ!? いかん、いかん! フェリアも見てるんだから……』


 僕は、グルフィヤの腋の辺りを掴んで引きはがした。


「あんっ!」

「グルフィヤさん、落ち着いて!」

「ああっ……。も、申し訳ございません!」


 グルフィヤがひざまずいて、謝罪をする。

 エントランスホールでの件がグルフィヤに強烈な印象を与えてしまっているようだ。

 恐怖を刻まれた相手である僕に対して複雑な感情を抱いているのかもしれない。


「さぁ、僕にあなたの母乳を飲ませてください」

「ああぁ……ご主人さまぁ……」


 グルフィヤは、涙目になって立ち上がり、乳房を差し出してきた。

 僕は、彼女の乳房を吸った――。


 ◇ ◇ ◇


 その後、グルフィヤも無事にトウコの使い魔となったので、クリアーナと一緒に追加の【魔術刻印】をフェリスたちに刻むよう指示をした。


 残るはアーニャだが、彼女をどうするか、僕は決めあぐねていた。

 すると、それを察したのかアナスタシアが僕の前に立ちアーニャの背中を押した。


「さぁ、アーニャ。あなたもご主人様の使い魔にして頂きなさい」

「あっ、アナスタシア様……」

「待って下さい。アーニャさんは、おいくつなのですか?」

「この子は、19になります」

「刻印を刻んだときは、何歳だったのですか?」

「確か、14だったと記憶しておりますわ」


 この世界では、数え年なので13歳だったということだ。


「どうして、そんな若くで……」

「これくらいの年格好の少女を好む殿方がいらっしゃるからですわ」


 アナスタシアは、平然と恐ろしいことを言った。

 僕は激しい怒りを感じたが、僕の倫理感をこの世界の住人に押しつけるのは間違っている。


【戦闘モード】


 僕は、【戦闘モード】を一瞬だけ起動して冷静さを取り戻した。


「……ご主人様?」

「アーニャさんは、僕の使い魔になることを望んでいるのですか?」


 僕は、アーニャに問いかけた。


「はい。あたしは、アナスタシア様にお仕えするのが務めです」

「それだったら、アナスタシアさんの使い魔になるべきだ」

「で、でも……?」

「今日の夜には、アナスタシアさんも召喚魔法が使えるようになってると思うから」

「それは、本当ですか?」


 アナスタシアが聞いてきた。


「はい」


 それから僕たちは、昼食を摂って『ハーレム』の大浴場で入浴をした。

 そこで約束通り、カナコたちに授乳された。


 そして、午後3時前に『女神教』の神殿を後にした――。


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