6―24
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僕たちは、料亭『
玄関に到着すると、タカコが僕に聞いてきた。
「旦那様、少しお待ちいただけますか?」
「どうしました?」
「
「分かりました」
「では、
スズカがそう言って、タカコと一緒に店の奥へ入っていく。
『装備2換装』
僕は、
タカコは
『エドの街』の夜は、晩秋のように肌寒くはなるが刻印体のスズカには問題ないと思われるので、ファッションとして上着を装備しているのだろう。もしくは、外出するときには
「お待たせいたしました」
「お待たせして、申し訳ございません」
「いえ。では、行きましょう」
僕がそう言うと、レイコが玄関の引き戸をガラガラと開けた。
外へ出る。
「どちらに向かわれるのかしら?」
スズカが聞いてきた。
「『ユミコの酒場』です」
「ああ、女性冒険者向けの酒場ですね」
「ええ、そこに仲間を待たせておりますので」
僕たちは、『ユミコの酒場』へと向かった――。
◇ ◇ ◇
10分ほど歩いて、『ユミコの酒場』へ到着した。
時刻は、夜の10時半くらいだったが、店はまだやっているようだ。
僕は、顔が見えるように外套のフードを上げてから、玄関の引き戸を開けて中に入る。
「いらっしゃいませー!」
アユミが元気な声で挨拶をしてきた。
――この
暇な時間帯もあるのだろうけど、居酒屋で休み無く朝から晩まで働いていたら、過労で倒れてしまいそうなものだ。
「あっ、ユーイチさん」
「こんばんは」
「皆さん、奥に
「ありがとう」
奥にフェリスとルート・ニンフと、レイコのパーティメンバー、元村人たち、元娼婦、カナコのパーティメンバーが居た。
他に客は居なかった。もう遅いから帰ったのだろうか。
「ご主人サマ」
フェリスが声を掛けてきた。
「ご苦労様」
「娼婦の応募者は、ユウコさんを含めて6名でしたわ」
初日にしては、かなり集まったのではないだろうか。そもそも『組合』の募集で娼婦が集まるとは思っていなかったので驚いた。
「ユーイチ!」
カナコが声を掛けてきた。
「あ、こんばんは」
「ええ、こんばんは。元娼婦たちに引退した娼婦たちの消息を聞いたから、明日には連れてこられると思うわ」
「よろしくお願いします」
「それにしてもユウコ様が娼婦になりたいと言い出すなんて
「僕も驚きました」
「じゃあ、あたし達は、今日は帰るわね」
「ええ、食事代は、僕のほうで支払いますから」
「いいの?」
「任せてください。これも依頼の一環ですよ」
「分かった。ありがとうね」
「「ごちそうさまです」」
「「ありがとうございます」」
「「おやすみなさい」」
カナコのパーティメンバーが口々に挨拶をして出て行った。
「じゃあ、僕たちも出ようか」
「はいですわ」
「「はいっ」」
「「ええ」」
アユミのところに行き、会計を済ませる。
「カナコさん達の分も含めるんですよね?」
「ええ、彼女たちには僕の依頼で動いてもらっているので」
「なるほど~……えーっと、合計で金貨3枚と銀貨2枚、銅貨を5枚いただきます」
前回よりも安い。この間は、高い酒を飲んだからだろうか。
僕は、金貨4枚を実体化させた。
「じゃあ、これで。お釣りは取っておいて」
「わっ! ありがとうございますっ!」
『いちいち、硬貨袋から硬貨を取り出すよりも硬貨を実体化させたほうが楽だな……』
好きな金額を好きな場所に実体化できるので、その気になればピタリの金額を実体化させることもできる。
「じゃあ、おやすみ」
「ありがとうございましたっ! またどうぞ!」
僕たちは、店の外へ出た。
そして、夕方に『ロッジ』を出した
【ライト】【ライト】
大通りは、マジックアイテムと思われる魔法の街灯や店の明かりで、夜でも薄暗い程度なので明かりを持たなくても歩けたが、路地裏は流石に暗かったので、フェリアとルート・ドライアードの頭の上に【ライト】を付けた。
『ロッジ』
『ロッジ』の扉を召喚して中へ入る。
全員が中へ入ったところで、扉を閉めて帰還させた。
ちなみにこういった魔法建築物の扉は、扉を完全に閉めないと帰還させることができない。もし、開けたまま体を半分中に入れて帰還させたら、体が切断されてしまうだろう。そういった事故を防ぐために扉を開いたまま帰還させられないようになっているのだそうだ。
「じゃあ、適当に座って」
「「はいっ」」
そう言って、僕はいつもの席にテーブルと反対向きに座る。
甲冑姿のフェリアとルート・ドライアードが僕の前の壁際に立つのが見えた。
「フェリア」
「ハッ!」
「この硬貨袋を『倉庫』に保管しておいて」
「畏まりました」
フェリアが『倉庫』の扉を召喚して中へ入って行った。彼女は、すぐに出てきて扉を帰還させて壁際に戻った。
次に僕は、フェリスに声を掛ける。
「フェリス、娼婦希望者を連れてきて」
「はいですわ」
フェリスは、僕の前まで来た。何故か全裸だった……。
そして、『密談部屋』の裏口を召喚して扉を開けた。
フェリスが扉の中に呼びかける。
「みなさ~ん、出てくださいなっ」
外から呼んでも中の人間には聞こえないはずだが、扉が開いてフェリスが何か言っているのを見たからか、女性たちが『密談部屋』の裏口から出てきた。
「おお、待ちくたびれたぞぃ」
「ユウコ様は、お
「ふっふっふっ……。お主も喜んでおったではないか」
「そんなことありません! あっ、今日はどうも。私は、ユキって言います」
そう言って僕の前に来たのは、昼間『組合』で対応してくれた背の高い受付嬢だ。
しかも、何故か全裸だった。大きな胸が揺れている。
「ごきげんよう、
次にユウコが僕の前に来た。これまた全裸だった。
ユウコは、身長が160センチメートルくらいで小ぶりな胸をしている。いつもローブを着ていたので、少し新鮮だった。
「何で裸なの? ちょっと、隠してください!」
最初は、呆然と見ていた僕だが、流石に目に毒なので顔を背ける。
「そこのエルフが
フェリスを見る。
「フフフ……。ご主人サマ、身体を見て『女神の秘薬』を使うかどうか判断したのですわ」
「でも、ユウコさんは刻印を刻んでいるでしょ」
「よいではありませんか、ご主人サマも身体を見ないと娼婦として買うかどうか判断できないでしょう?」
誰も不合格にするつもりはないが、一応、審査があるような形式にしておいたほうがいいかもしれない。
「……まぁ、いいや。じゃあ、娼婦になりたい人は前に並んで」
『密談部屋』の狭い扉の中から、刻印を刻んでいない裸の一般人が更に4人出てきた。見たところ全員が20代くらいの年齢だろう。予想していたよりも若い。長身の受付嬢ユキも20代半ばくらいに見える。
全員が出て扉が閉められたところで、フェリスは『密談部屋』の裏口を消した。
この6人が娼婦の希望者ということだろう。
「
そういって、スズカとタカコが列に並ぶ。いつの間にか服を脱いで裸になっていた。
スズカの胸は、予想通りの美乳だった。そして、タカコの胸は、かなり小ぶりで慎ましい。
「えーと、スズカさんも娼婦になりたいのですか?」
「そうですわよ」
「お店は、どうするのですか?」
「問題ありませんわ。先ほど、ユーイチ様がおっしゃっていた通りなら特に問題はないですわ」
「でも、家の人から怒られるんじゃ?」
「この身は、ユーイチ様のものになるわけですから、家は関係ありませんわ」
「それは、どういう……?」
「貴方様のものにしていただけるのですわよね?」
「まぁ、そうなってもらうわけですけど……。いいのですか?」
「はい、構いません」
『夫婦仲が上手くいってないので、
「旦那さんに何て言うつもりなのですか? トラブルになるようなことは
「大丈夫ですわ。
『面倒なことにならなければいいけど……』
『トイレ』
僕は、立ち上がり『ロッジ』の入り口から左の隅に『トイレ』の扉を召喚した。
彼女たちは、何時間もフェリスの『密談部屋』に閉じこめられていたので、トイレに行きたいのではないかと思ったのだ。
「その扉は、
そう言って、『トイレ』の中へ入っていく。
そして、以前に元娼婦たちへ説明したように『トイレ』の使い方を説明した。
「では、したい人は用を足してから来てください」
といって、『トイレ』から出る。
元の席に座って、暫く待つと全裸の女性たちが『トイレ』から出てきた――。
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