5―2
5―2
「これが外の世界……」
「ええ、ここまで来たのは、あたしたちが初めてじゃないかしら?」
ルート・ドライアードとルート・ニンフが外の世界に感動しているみたいだ。
『現在時刻』
時刻を確認すると、【13:37】だった。
『これからどうしよう? とりあえずは、フェリア達の家に帰って、今日中に『エドの街』へ向かうか? いや、事前に『エドの街』について予習しておいたほうがいいかな……?』
『フェリアの装備6換装』『ルート・ドライアードの装備6換装』
「っんん……」
「ふっ……ん」
全身鎧のままだと暑苦しいので、フェリアとルート・ドライアードの装備をメイド服に変更する。
「【マニューバ】を使って一気に帰ろう。それから、全員【インビジブル】と【トゥルーサイト】も使って」
「畏まりました」
「はいですわ」
「御意のままに」
「分かったわ」
久しぶりに外の世界に戻ったという興奮で忘れていたが、戦闘用の自己強化型魔術をまだ切っていなかった。
それらをオフにして、姿隠しの呪文を使う。
【インビジブル】
【トゥルーサイト】と【マニューバ】は、オフにしていない。
最近は【マニューバ】を使っていてもMPが減らなくなったので、【フライ】のように手軽に使えるようになった。
つまり、【メディテーション】のMP回復量――正確にはHP→MP変換量――がそれらの自己強化型魔術のMP消費量を上回っているということだろう。
隠されたステータスの『精霊力』が上がると【リジェネレーション】や【メディテーション】の回復量が増えることは予想されていた。
【リジェネレーション】と【メディテーション】は連動していて、【リジェネレーション】の余剰HP回復分が【メディテーション】のMP回復に回されているのだ。自己強化型魔術などで、MPが減ると【メディテーション】が自動起動してHPを削る、すると【リジェネレーション】が自動起動してHPを回復させる。そのHP回復量とHP→MP変換量が同じなのでHPは減ったように見えないが、MPが回復するという現象が起きるのだ。
「フェリア、先導を頼む」
「ハッ!」
フェリアがフワリと舞い上がった。
それに続いて、僕たちもフェリアの後を追う。
フェリアは、【マニューバ】の最高速度からするとかなり抑えて飛んでいるようだが、それでも時速100キロメートルは軽く超えてると思う。【戦闘モード】を切ってあるので、移動速度は結構速く感じた。
30分ほどで、『オークの砦』が見える場所まで帰ってきた。この調子だと、あと10分もしないうちにフェリア達の家へ到着するだろう。
それから、約5分後に僕たちはフェリア達の家に帰ってきた――。
◇ ◇ ◇
フェリア達の家の前に到着した。
「ああ……二度と帰れないと思っていましたわ……」
フェリスが自分の家を見て感動で泣いている。
「さぁ、どうぞご主人様」
フェリアが家の扉を開けて、僕を中へ誘う。
「じゃあ、ただいま」
「はい、お帰りなさいませご主人様」
――メイド喫茶のような挨拶をされてしまった……。
僕たちは、フェリア達の家に入り、まず最初に風呂場へ向かった。
旅の疲れを癒すためだ。
脱衣所で全ての自己強化型魔術をオフにして、裸になる。
『装備8換装』
そして、浴室に入り、埃を落とす。
【エアプロテクション】
湯船につかり、息を吐く。
「ふぅーーっ」
後ろを振り向いたら、使い魔たちが湯船の中で全裸で立っている。
「わあっ!?」
『何でいつも命令しないと座らないんだよ……』
僕は、俯いて命令する。
「座って」
「ハッ!」
「分かりましたわ」
「御意!」
「分かった」
――ザバーッ……
フェリア、フェリス、ルート・ドライアード、ルート・ニンフの4人が湯船で腰を下ろす。
フェリア達の家の浴槽は、日本の一般的な家庭にあるユニットバスに比べるとかなり大きいが、5人で入ると流石に狭く感じる。それでもぎゅうぎゅう詰めにならないのだから、大したものだと思う。
僕は、使い魔たちを気にしないように目を閉じて入浴を楽しむ。
『いよいよ、明日は『エドの街』へ観光だ。明日までにできるだけ情報を集めたほうがいいだろうな……』
情報ソースが何かないか考えてみる。
まず、思いついたのは、先日実体化させた『エドの街ガイドブック』だ。
歴史関係の本は、特に必要とは思えないので今回はパスして、『地図「エドの街」』も後で実体化させて目を通しておいたほうがいいだろう。
あとは、フェリスにも聞いてみようか……100年前の情報だけど、何か役に立つ情報があるかもしれない。
「フェリス」
僕は目を開けてフェリスを呼ぶ。
「はぁい!」
――ザバッ!
立ち上がって、僕の前に立つ。何故か両手を頭の後ろで組んで、足を少し開いて腰を突き出していた。
「ちょっ……」
僕は、フェリスの身体から慌てて目を逸らした。
「ちょっと『エドの街』について知ってることを聞きたいんだけど……」
「分かりました……お話いたしますわ……
そして、フェリスは『エドの街』について語り始めた――。
―――――――――――――――――――――――――――――
フェリスの話によると、『エドの街』は、城壁に囲まれた街で、四方にある4つの門から出入りすることができるようだ。
門は、午前7時から午後7時までの間、開けられており、門の中へ入るためには、通行税を払う必要があるらしい。通行税は――100年前は――、一人当たり銀貨1枚だったそうだ。
『エドの街』は、二つの大きな河川の間の土地をグルリと城壁で囲って作られているようだ。西の川が『タマ川』、東の川が『スミダ川』というらしい。
これらの河川の名前も東京を流れる川の名前と同じだが、『エドの街』を作ったというマレビト達が付けただけかもしれない。
『エドの街』は、城壁の中で商業地区と居住区、田園地帯に分かれており、田園地帯が商業地区と居住区を囲むように存在するようだ。
ただ、厳密な区分けがあるわけではなく、門の近くに宿屋や店があったりすることもあるようだ。
『エドの街』の東にある川の向こうには、ムサシノ家という
『エドの街』には、いくつもの有力な商家があって、100年前だとサカキ家、ツチダ家、ヨシダ家、ウエダ家という商家が特に大きかったらしい。
フェリスは、エルフの冒険者だったので、あまり商家との関わりは無かったそうだ。しかし、フェリスの冒険者仲間は、どこかしらの商家の出身だったようだ。そもそも、それなりの商人の家系じゃないと刻印を刻むことなどできないだろう。フェリスの仲間たちは皆、それほど大きな商家の出では無かったようだが。
『エドの街』を実質的に支配しているのは『組合』で、衛兵を雇って警備したりといった治安維持活動も行っている。
衛兵の多くは、刻印を持たない一般人で、冒険者もクエストのようなものを発行して治安維持のために雇っているとか。
例えば、それぞれの門には、『組合』に雇われた冒険者パーティが待機しているようだ。
通行税を徴収するのは、『組合』の事務員で門のところに通行税を払う窓口があるそうだ。
通行人を整理したり、何かあったときに伝令を行うのが衛兵で、どちらかと言えば、雑用係に近いようだ。
殺人事件などが起きた場合は、衛兵が事態の収拾に駆り出されるが、犯人が冒険者だった場合、衛兵では太刀打ちできないので、別口で冒険者パーティが雇われることが多いらしい。なかには、引退した冒険者が
『組合』の目的は、人間社会の安定だそうだ。通行税や刻印付与などで得た資金は、『エドの街』の社会へできるだけ還元するよう運営されているとか。
一般人も含めて多くの人間を雇うことで雇用を発生させているし、治安維持活動なども行っているので、実質的に地方の行政機関に近い組織なのではないだろうか。
また、『組合』を利用するために何かしらの登録をする必要はなく、冒険者に対しても仕事の斡旋や刻印の付与を行っている。
―――――――――――――――――――――――――――――
フェリスの話が終わった。
「ありがとう、座っていいよ」
「そんな……ご主人サマ、もっとご覧になってほしいですわ……」
「じゃあ、母乳を吸わせて
「はいですわ」
僕は、貞操の危機を感じると、相手の母乳を吸うことにしている。使い魔たちは、僕の貞操を狙っているようで、僕自身も流されそうになるのだが、【戦闘モード】で発情を抑え、母乳を吸うことでお互いの気分を満足させることができるのだ。
フェリスの差し出した小さな乳房に吸いつく。
「ああん……」
僕は、順番に使い魔たちの母乳を吸った――。
―――――――――――――――――――――――――――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます