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 僕は、椅子いすから立ち上がり、テーブルを背にして反対向きに座る。背もたれの無い長椅子なので、逆向きにも腰掛けられるのだ。


「フェリア、僕の正面に来て」

「畏まりました」


 フェリアを僕の正面に立たせる。


「フェリアために装備を作ってみたんだけど、着てみてくれる?」

「ああっ……ありがとうございます。ご主人さまぁ……」

「それで、どうやって渡したらいいかな?」

「『トレード』で渡していただくことも可能ですが、わたくしはご主人様の使い魔ですから、直接、わたくしのアイテムを管理していただくことも可能です」

「どういうこと?」


 彼女に聞いた話によると、『召喚魔法』でテイムした使い魔の『アイテムストレージ』を直接操作することが可能になるらしい。元々、『召喚魔法』はモンスターを対象としているため、装備を渡したところで思った通りに使ってくれるか分からないためだろう。知能の高いモンスターならともかく、動物のようなモンスターも多いだろうし。

 例えば、馬のアーシュに『魔法の鞍』などの装備を『トレード』で渡そうとしても受け取らせることすら難しいことは想像に難くない。そのため、使い魔の主人が直接装備などの操作が行えるようになってるようだ。ちなみにフェリアの使い魔であるアーシュの『アイテムストレージ』は、僕は直接操作することができない。自分に刻まれた【サモン】の刻印に封じられた使い魔にしか干渉できないようだ。フェリアは、今まで通り、アーシュの『アイテムストレージ』を操作することができる。


 僕は、彼女から聞いた通りのやり方で彼女の装備を変更する。


『フェリアの装備1』


―――――――――――――――――――――――――――――


 武器:ミスリルの打刀+5

 鎧:ミスリルの胸当て+5

 鎧下:魔布のボディスーツ+5

 腰:魔布のスカート+5

 篭手:竜革の篭手+5

 脚:魔布のニーソックス+5

 足:竜革のブーツ+5

 背中:竜革のマント+5

 下着:黒のブラジャー

 下着:黒のパンティー


―――――――――――――――――――――――――――――


「フェリア、この装備名に付いてる『+5』っていうのは何?」

「それは、追加した素材の数を記しています」

「自分で付けたの?」

「はい。冒険者の装備は、そのように名付けるのが慣例となっているようです」


 僕が作った『フェリアのメイド服』にも+100と付けるべきだったようだ。今さら言われても後の祭りなので、このまま使ってもらうしかないだろう。後で確認してみたところ、『マジックリンネル』は全て無くなっていたので、全て使われてしまったようだ。


「『黒のブラジャー』や『黒のパンティー』もフェリアが作ったの?」

「はい、お恥ずかしながら、わたくしがデザインいたしました」

「他にも色があるの?」

「はい、他には同じデザインで色違いのものが白・赤・青とございます」

「へぇー、そうなんだ……」

「はい、いつでもご命令下さればお見せいたします」

「…………」


 次に、フェリアの他の装備も確認する。


『フェリアの装備2』


―――――――――――――――――――――――――――――


 武器:ミスリルの打刀+5

 鎧:竜革の胸当て+5

 鎧下:魔布のボディスーツ+5

 腰:魔布のミニスカート+5

 篭手:竜革の篭手+5

 脚:魔布のニーソックス+5

 足:竜革のブーツ+5

 下着:黒のブラジャー

 下着:黒のパンティー


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『フェリアの装備3』


―――――――――――――――――――――――――――――


 武器:ミスリルの打刀+5

 鎧:竜革の胸当て+5

 鎧下:魔布のボディスーツ+5

 腰:魔布のミニスカート+5

 篭手:竜革の篭手+5

 脚:魔布のニーソックス+5

 足:竜革のブーツ+5

 下着:白のブラジャー

 下着:白のパンティー


―――――――――――――――――――――――――――――


『フェリアの装備4』


―――――――――――――――――――――――――――――


 武器:ミスリルの打刀+5

 鎧:竜革の胸当て+5

 鎧下:魔布のボディスーツ+5

 腰:魔布のミニスカート+5

 篭手:竜革の篭手+5

 脚:魔布のニーソックス+5

 足:竜革のブーツ+5

 下着:赤のブラジャー

 下着:赤のパンティー


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『フェリアの装備5』


―――――――――――――――――――――――――――――


 武器:ミスリルの打刀+5

 鎧:竜革の胸当て+5

 鎧下:魔布のボディスーツ+5

 腰:魔布のミニスカート+5

 篭手:竜革の篭手+5

 脚:魔布のニーソックス+5

 足:竜革のブーツ+5

 下着:青のブラジャー

 下着:青のパンティー


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『フェリアの装備6』


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 鎧:竜革の胸当て+5

 鎧下:魔布のボディスーツ+5

 腰:魔布のミニスカート+5

 篭手:竜革の篭手+5

 脚:魔布のニーソックス+5

 足:竜革のブーツ+5

 下着:黒のブラジャー

 下着:黒のパンティー


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『フェリアの装備7』


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 服:浴衣

 足:草履


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『フェリアの装備8』


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 こうしてみると、フェリアの装備は、『装備1』がガチの戦闘用装備みたいだ。『装備2』~『装備5』は、やや軽装の戦闘用装備で違いは下着の色違い。『装備6』が武器を持たない防具のみの状態。『装備7』は、寝間着ねまきなのだろうか、今も着ている青い浴衣だ。『装備8』には何も装備されておらず、お風呂に入るときなどに一瞬で裸になるためのものだろう。

 こうして設定されている装備をみると、フェリアは女性にしてはファッションに無頓着のようだ。見せる相手も居なかったのだろうけど、もっといろいろな格好をしてもいいだろうに……。


「フェリア、『装備6』を変更しちゃってもいい?」

「ふふっ、勿論でございますわ。ご主人様のお好きなようにいじってくださいませ」


『フェリアの装備6』


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 鎧:竜革の胸当て+5

 鎧下:魔布のボディスーツ+5

 腰:魔布のミニスカート+5

 篭手:竜革の篭手+5

 脚:魔布のニーソックス+5

 足:竜革のブーツ+5

 下着:黒のブラジャー

 下着:黒のパンティー


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『全て外す』と念じる。


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 リストから全ての装備が外されたのを確認して、『「フェリアのメイド服」を装備』と念じる。

 しかし、『装備できません』と表示されてしまう。


「僕の作った装備品が装備できないんだけど、何でかな?」

「素材は、何をいくつご使用なさいましたか?」

「『マジックリンネル』を100個だけど?」

「それを装備するのは、難しいと思われます」

「どうして?」


 フェリアの話によれば、装備を作るときに使用する素材の数は、素材を持ってさえいればいくつでも使用できるらしいが、数を増やすと重くなってしまうので筋力が高い冒険者じゃないと装備できないようだ。布装備は素材が軽いので比較的ましなようだが、今回のようなケースは服を100枚重ね着するようなものなので、物凄い力持ちでも無い限り装備することはできないらしい。また、この装備で使ったお金――10万ゴールド――は無駄になってしまうのかと言えば、【工房】スキルの『分解』で素材に戻すことができるようだ。


「なるほど、じゃあ、作り直したほうが良さそうだね」

「お手数ですが、そうしていただけると嬉しいです」

「そういえば、武器によってサイズが違うよね? ナイフとロングソードでは大きさも重さも違うし。そういう場合の素材ってどうなってるの?」

「装備によって必要な素材の数が変わります。従って、『ナイフ』と『ロングソード』では最低限必要となる素材の数が違います。先ほどの『+5』というのは、最低限必要な素材数に追加した数を示しています。例えば、『ミスリルの打刀+5』の場合、打刀を作るために最低3つの鋼材が必要となりますので、8個のミスリル鋼を使って作ってあるということが分かります」

「そういうことだったのか……」


 僕は、単に使った素材の数が+の後に書いてあるものだと思っていたのだ。

 従って、最低4つの布素材が必要となるメイド服は、+96と表記すべきだったというわけだ。


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