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「僕、前にも言いましたよね。金糸雀にも、竜蹄にも属さないって。僕が産まれたのは大地だ。人にも、魔にも属さない者として……」
弦くんの告白に、レンたち輝華の世界の人たちは息を飲んで驚いたようだった。わたしがいまいちその事実を飲み込めないのは、この世界にとって大地や地上といったものがどのようなものかを、まだ完全には理解しきれていないせいなのかもしれない。恐らく重大なことなのだろう、ということは周囲の空気で理解できるものの、真に事の大きさを推し測るためには、色々なものが不足していた。
「そんな馬鹿な……今の地上は、子どもを産めるような環境になんてないはず」
「王族は地上に残る選択をした人々を見捨てたからね。だけどいるんだよ。少数だけど、凍れる泉のもたらす聖気を頼りに、地上で生活してる人もさ」
弦くんの発言は更に衝撃の事実だったようだ。ぼんやりしている讖箴ちゃん以外、目を丸くしているのが窺えた。
「僕はそんな中で産まれた。旧領土的には竜蹄王国だけど、今となってはそんなこと関係ないし。だけど半端者だった僕は、そのまま地上の人社会に属すことはできなかった。ただでさえ過酷な環境なのに、誰も僕の面倒を見切れる訳がない。だからといって、魔気の溢れる大地の上で一人で過ごすには魔力が足りなさ過ぎる。結局僕は、どこにも属さずして、どちらにも入り浸ることのできる手紙屋という仕事を編み出したのさ」
なんてことないように言う弦くんだけど、そんなこと、簡単にできるはずがない。事情がよく汲み取れてないわたしでさえ、それくらいのことはわかる。レンたちも、誰も口を挟まずに弦くんの語りに耳を傾けていた。
「空から廃材って結構降ってくるからね。幸い手先は器用だったから、それを利用して造船の真似事のようなことを普段からしていたんだ。そしたらある時、ふと思いついてね。一人乗り用の小型船を造れば、どこへでも自由に行けるんじゃないかって」
あとは言った通りだよ、と両手を上げて肩を竦める弦くん。自分を半端者だ、と卑下する割りには、悪びれたところは一切ない。今のこの現状を、仕方ない、人生そういうもんだ、などと完全に受け入れてるかのように見受けられた。
「どう? 僕の事情はこんなところ。これでご満足頂けたでしょうか?」
「いや……なんというか、悪かった。話しにくいことを無理に言わせたようで」
素直に謝るレンに対し、弦くんが投げたのは、最上級の爆弾だった。
「僕の事情なんて、禁忌の子の貴方に比べたら大したことないでしょ、皇子サマ」
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