4-8 酒の席で2

「がぁぁあああああ!」

 海輝が間違ってビールの上から酒を注いでしまったものにお茶を加え、それをご飯にかけて梅干を乗せて出来上がった、叶依特製のは、更に悲惨なことになっていた。

「なんでぇ~? 俺の飯……叶依に酒飲ませたの誰だよ?」

 酒ビール茶漬け海輝風の被害は拡大し、海輝がまだ箸をつけていなかった酢の物までそこにトッピングされていた。

「いいやん最後くらい~♪ 無礼講~」

「無礼講って……普段から無礼講じゃない」

「海輝君……これ食べる?」

 冬樹が自分の酢の物を海輝に提供しようとすると、

「それも一緒に入れ───」

「だぁめ! これ……俺が酢の物好きだって知ってるくせに……」

 冬樹の酢の物に手を伸ばそうとする叶依を片手で押さえながら、海輝はもう片方の手を冬樹の前まで伸ばしていた。

 太一は海輝がぐちゃぐちゃだと言ってから、そのまま眠ってしまっていた。

「ヒック……ヒッ……」

「叶依、飲みすぎじゃないの?」

 酒ビール茶漬け海輝風酢の物入りをどうしようかと思いながら海輝は言った。

「そんなヒッ……クヒッ……ク……」

「本当はこんな奴なんだって伸尋が知ったらびっくりするよ」

「ノブヒッ……ロ? ……あぁ……ヒック……ノブリン?」

 海輝と冬樹はノブリンが何を指すのか一瞬理解できなかった。

 叶依は完全に酔いつぶれているようだ。

「……酒って怖いね」

 意識が朦朧としかかっている叶依を見ながら冬樹が言った。

「うん……家で何回か飲んでるの見たことあったけど……」

 酒ビール茶漬け海輝風酢の物入りはやりすぎだ。

「~~~♪ ~~~♪ ~~……」

「え? あぁ……扉ね……」

 何故か叶依は『夢幻の扉~field of dream~』を歌いはじめた。

 酔っている割に目はしっかり開いているけれど、どこを見ているのかはわからなかった。

「そろそろ帰る?」

 冬樹は隣で眠っている太一を起こし、その間に海輝は満に電話をかけていた。

 太一や叶依に比べるとマシではあるけれど、冬樹も海輝も立ち上がるのがやっとでなかなか歩き出すことが出来ず、店の外に出るのに立ち上がってから十分かかった。もちろん、叶依が作った謎の食べ物の件で、店員にはちゃんと謝罪した。

 満に送られてマンションの前についたときには叶依は酔いから覚めていたけれど、まっすぐ歩くことは出来なかった。

 まず車から降りてすぐに、車道と歩道の段差で躓いた。海輝に引っ張られながら何とか起き上がったけれど、階段で三階まで上って行くのは二人には辛かった。

「やっと着いた……ってそこ段───」

 ドテッ。

 玄関の段差で躓いて、叶依はそのまま動かなくなった。

 叶依が海輝の家を出る数日前の深夜のことだった。

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