4-5 その繋がりは

 その数日後のクリスマス当日、コンサート会場は大阪に移った。

 前半は札幌・東京と同じようにして、やはり終盤になってから三人はあのことを話し始めた。

「みんなあれ気になってんだよね? 叶依が誰と結婚するのか」

 冬樹はギターを抱えたまま笑っていた。

「海輝君だと思う人ー?」

 冬樹が挙手を促すと、会場の半分くらいが手を上げた。

「結構いるね……え? もし海輝君だったらどうなるの? 僕ひとり?」

「ま……そういうことになるね」

 海輝はいつになく冷静だった。

「でも、もしそれだとしたらみんなはどうなの?」

 海輝は会場の客に向かって問いかけた。

「例えばあれよ? 叶依が、ね、家にいて家事とかしてさぁ、俺が帰ったらご飯とか味噌汁温めて、お椀に盛って『はい❤』って、どう? 俺、想像できないんだけど?」

「想像出来ないって、今一緒に住んでるんでしょ?」

 冬樹は笑っていた。

「……叶依ほとんど料理しないからね」

「え? しないの?」

「うん。たまにするけど……料理は海輝に任してたから」

「そう。ってこんなこと言ってたらますますあれなんだけど……あの……」

「相手は海輝じゃないでーす、海輝違いまーす」

 叶依が笑いながら言った。

「本当だからね。俺じゃなくてあの、今話題の、ね」

「ちょっと呼んでみる?」

「え? の、……来てんの?」

「ここ大阪でしょ? 昨日電話したら来てくれるって言ってたから」

 そう言っている間に照明が消え、再び明るくなった時には叶依の隣に伸尋が座っていた。

「こんばんは」

「こんばんはってえっ……ちょっ……の……ギャウッ」

 伸尋が登場することは、叶依に知らされていなかった。

「なに今のギャウッって」

「だ、だってさぁ」

「なんでこの日に大阪でするのか気にならなかった?」

「全っ然」

「俺たちからのクリスマスプレゼント」

 叶依が伸尋の方を向くと、伸尋は嬉しそうに笑っていた。

「あの……さっきの話……海輝じゃなくて……この……伸尋です」

 叶依が伸尋を紹介すると、伸尋は照れくさそうに笑った。

「伸尋……ドラマ出てるから顔知ってると思うけど……あの……ご本人、です。実際私この人と同級生で……ねぇ」

 叶依は伸尋に微妙な笑みを向けた。

「ねぇって……俺やけど……」

「前に言ったでしょ? ドラマに出てくる僕ら四人は本人だって」

 海輝は会場に向かって語り始めた。

「ほんとにこの……四人で、四人っていうか三人? いろいろあって。まぁ、これが最後かな? 何があったのかはまたドラマとか本を読んでもらったらわかると思うけど……あれ続き出るの? 続Uotagiraとか」

「続編? うーん……でもヤバくない?」

「どうして? あぁ、あれね。海帆ちゃん来た日」

「そうそう」

「じゃ代役で誰かに出てもらうとか」

「えーそれも嫌やぁ! でも続きあっても面白いかな。じゃ、気が向いたら書きまーす」

「つまり書けへんのやろー?」

 その口調から嫌な予感がして振り返ると、珠里亜が立っていた。

「……なんで珠里亜いてのよ?」

「なんでってここ珠里亜の国やん! もー、これあげるから続き書いて!」

「えっ……うそ……ありがとう……」

 珠里亜は叶依と伸尋に大きな花束を贈呈した。

 それがあまりに嬉しくて、叶依は初めて、珠里亜の前で泣いた。

「海輝と冬樹と、あと珠里亜……みんなありがとう……」

 溢れる涙を拭ってから叶依は再び口を開いた。

「今日、コンサート終わったらすぐ東京戻って、まだ仕事あるから……しばらく海輝の家にいるけど、年末にまた戻って、来年から伸尋と住んで……近いうちに結婚します。でもピ……Pin*lueは……あるし、パス……」

 叶依が喋れなくなってしまったので、代わりに伸尋が続けた。

 伸尋が喋り出してから、叶依は舞台袖へ走って行った。

「ドラマに出てきたから知ってる人いるかも知れんけど、俺、前はすごい、この……海輝のこと嫌いでした。でも今はもうほんまに兄貴って思えるし、信頼してるから……叶依にはPASTURE続けてもらうし、夏に北海道行っても良いって言ってます。俺は訳あってバスケ辞めるけど───」

「えぇっ、伸尋バスケやめるの?」

 海輝が驚いたので伸尋は小さく頷いた。

 伸尋が海輝と関わるようになったのは、彼がバスケをしていたからだ。

「辞めるけど、叶依には、まだまだこれから頑張ってもらいたいし。応援してあげてください」

 伸尋が言い終わる頃、叶依は舞台に戻ってきた。客席からはよく見えないけれど、目は真っ赤に腫れていた。

 それでも叶依はギターを持って元の位置に座り、海輝と冬樹に最後に一曲弾きたいと言った。

 叶依が選んだのは、やはり『夢幻の扉~field of dream~』だった。

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