4-4 楽屋で

 クリスマスまであと僅かとなった日の夜、札幌市内のとあるホールではPASTUREのクリスマスコンサートが行われていた。

 夏だけの活動といって始まったPASTUREがどうして冬なのか、誰もわからない。

「まぁ、良いんじゃない? 楽しければ」


 コンサートが終盤になってきた時、叶依は一人で喋りだした。

 海輝とニュースになっているけれど、実際は何もないこと。

 敢えて何も言わなかったのは、大切な人を守るためだったこと。

 それはもちろん、海輝ではなく、伸尋だということ。

「あ、でも私が結婚するからって急にPASTUREやめるっていうのには繋がらないんでね、安心?してください」

 叶依が結婚するという事実に観客の反応は様々だったけれど、相手が海輝ではないこととには全員が安心したらしい。

「一つだけ約束してください、コンサートあと二つ終わるまで誰にも言わないって。SNSでの拡散、ダメですよ!」

 数日後の都内の会場には、海帆と珠里亜を叶依が招待していたけれど。珠里亜は実家に戻らないといけなくなったので、代わりに海帆の友人、遊来と実湖が来ることになった。

 ちなみに珠里亜は大阪に、時織や夜宵と参加するらしい。


 コンサートが終わって楽屋に戻ると、何故か海帆とその友人が叶依を待っていた。

「ちょっと叶依! 聞いたで! おめでとう!」

「あぁ……ははは。あれ? そこ……友達?」

 叶依は海帆の横に座っている実湖と遊来を見て言った。

「うん。二人とも大阪出身やねん」

「ふーん。はじめまして。叶依でーす。うちの海帆がいつもお世話になってまーす」

「いつ親になったの?」

 突っ込んだのは海輝だ。

「え? ははは」

 遊来と実湖は叶依に適当に挨拶し、それからOCEAN TREEにも挨拶していた。

 笑ったままの叶依の顔は、ひきつっているように見えた。

「いつ結婚すんのよ?」

「まだ決めてないけど、うちが落ち着いたらしようって。あ、海輝ょんと冬樹っちゃんも呼ぶから来て

「もちろん。でも夏くらいにならないと休みないよ?」

「私もそれくらいまで休みなぁい……」

 叶依が冷蔵庫からお茶を出して飲もうとしていると、

「あのさぁ、……冬樹は……誰と結婚すんの?」

 大胆にも冬樹にこんなことを聞いたのは遊来だった。

「ちょっと遊来、そんなこと───」

「ははは。別に言っても良いんちゃん?」

 叶依はまだ笑っていた。

「まだするって決まったわけじゃないから……」

「叶依、知ってる人なん?」

「うん。って、海帆も絶対知ってるって。もしかしたら誰でも知ってる人やし」

 海帆や遊来は聞きたがっていたけれど、冬樹はもちろん言わない。

「ドラマで叶依と伸尋がステラ・ルークスの人って言ってたけど、あれって事実?」

 ほとんど忘れかけていた問題を、思い出させたのは実湖だ。

 実湖と遊来を連れてきたことを、海帆は少し後悔した。

「ステラ・ルークスって聞いたことないけど……あれがなかったら話が繋がらないでしょ?」

 実湖の言葉は正しい。

 叶依と伸尋が惑星人なのが嘘だとすれば、話の一部が繋がらなくなってしまう。

「どっちやと思う?」

 本当のことを悟られるのを防ごうと、叶依は挑戦的に笑った。

「信じにくい話やけど……でも嘘やったらなんで自殺しようとしたんかわからん」

「……生きる意味わからんようになったからって言ってたやろ? ってまだか。もうすぐ出ると思うけど……。よく、芸術してる人っておかしくなったりするって言うやん。それと一緒やと思う」

 実際どうなのか叶依自身よく分からなかったけれど、遊来も実湖も何故か納得していた。

 ちょうどそのとき叶依はマネージャーに呼ばれたので、海帆と友人たちは楽屋から出て行った。

 瑞穂が神様だと思った叶依と海帆だった。

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