3-7 彼にだけは

 叶依は荷物を瑞穂に預けて、史と歩いた。

 ちょうとお昼でお腹も空いていたので、学内で食べ物を買った。しばらくキャンパス内を歩いていたけれど、あまりに人が多すぎるので他の場所へ行くことにした。

 近くに公園を見つけ、そこで座ってから史はやっと口を開いた。

「実際どうなん?」

 史を見たときから、何を聞かれるのかはわかっていた。

 あの時もそうだった。

 叶依が最初に北海道から帰ってきた時も、史が間に入っていた。珠里亜や海帆でもなく、マネージャーでもなく、こういう時はいつも史だった。

 史にだけは、真実を言っても良いような気がした。

「実際……何もないよ。みんなは疑ってるけど……。それに、来年には出ようと思ってるし」

「なんで言わんの?」

「言っても良いんやけど、伸尋巻き込むの嫌やもん。私と海輝が悪いのに伸尋巻き込んで……ただでも今ドラマで大変やのに。余計追い回されそう。伸尋には平和が似合ってる」

 伸尋がテレビに映るようになってから、叶依と海輝の事件のニュースに彼が登場するようになった。問題は海輝のほうだったので大きく取り上げられることはなかったけれど、伸尋が苦しんでいることを、叶依は史と海帆を通して聞いていた。

「平和か……まぁ、あいつに主役は似合わんな」

「でもドラマでは主役やで? 今も一応王様やし」

「それはそうやけど……」

「もし私が海輝とは何もないって言ったら『じゃ伸尋は?』って来ると思うんやん。今私と離れて暮らしてんのにどうなってんのか追求されて───可哀想やん。もし史が伸尋の立場やったらどう? 嫌やろ?」

「まぁな……でもいつかは言わなあかんちゃん言わないとダメだろう?」

「うん。いつかは言うつもり」

「あいつは知ってのか? おまえらが何もないって」

「言ってないけど多分わかってると思う」

「そうか───。話変わるけど、昨日田礼から電話あってさぁ」

「なんで?」

「おまえさぁ、片瀬とデビューしたやろ? それで来て欲しいみたいやで」

「……こないだ高校でライブしてきたとこやのに」

「あいつにも連絡してあるみたいやから。空いてる時間聞きたいからまた電話してって」

 史と別れてマネージャーを呼び、叶依はそのまま母校へ向かった。

 田礼と電話なんかしたくなかったからだ。

 ついでに伸尋の家に寄らないのかと瑞穂に聞かれたけれど、叶依は寄らないと言った。

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