i-2 予想外の来客

 緑の木々に囲まれた都会のオアシスは、今日もたくさんの人で賑わっていた。いつもより早めにここへ来たPASTUREは午前中に途中で休憩をはさみ、それぞれがいろんな人とジュースを飲みながらくつろいでいた。

 叶依が相手をしていたのは、自分と同じ年頃の子供を持つ主婦だった。叶依みたいな子供なら育てやすそうだと言われたので「実は結構難しかったりするんですよ」と言うと、その女性は自分の娘よりはマシだろうと言っていた。

「叶依ー」

 遠くの方で懐かしい声が聞こえたのは、ジュースをおかわりしようと席を立った時だった。

 まさかそんなことがあるわけないと思っていたけれど、

「どぅぉわぁーっち!」

 叶依に向かって突進して来たのは、間違いなく、金髪と化した珠里亜だった。

「なっ……、えっ、みんなどうしたん?」

 珠里亜の後には海帆と史、それから伸尋もいた。

 こんな場所で会うとは思っていなかった。

「なんでるん?」

 危うく落としてしまいそうになったコップを机の上に置いてから叶依は聞いた。

「おまえ毎年この時期北海道来てるやん? だからそれ狙って……びっくりさせようと思って」

 史が笑いながら言った。

「えー、そんな……ほんまびっくりしたけど……あっ、もしかしてこないだ伸尋がラジオにファックスしたのって、それ聞くためやったん?」

「そうそう。書けって言ったの俺やけど」

 史と叶依が話をする横で伸尋は苦笑いをしていた。

「───でなんで……ここ来るためにわざわざ北海道来たん?」

「そんなわけないやん! 旅行に決まってるやろー」

 珠里亜が笑いながら答え、机の上に置いてあった水を勝手に飲んだ。

「ふーん……いつまでるん?」

「別に日決めんとぶらぶらしてるから、いつでも良いんやけど───」

 そう答えたあとで伸尋は、自分の方に近づいてくる影に気づいて向きを変えた。

 集団に近づいて来ていたのは冬樹だった。

「あー!」

 突然、珠里亜が叫んだ。

「冬樹っちゃんやー!」

 冬樹は一瞬、困った顔をしたけれど、すぐにいつもの顔に戻して珠里亜に話しかけた。

「久しぶりだね、珠里亜ちゃん。前会ったのいつだっけ?」

「イヤァーッ……!」

 何故か珠里亜は叫びながら遠くへ行ってしまった。

「……いつやったかな……去年の春くらい?」

「だったっけ? あんまり覚えてないんだけど」

 叶依と冬樹がそんな話をしていると、

「おーっ、久しぶり!」

 海輝が元気よく現れた。

「今日はどうしたの? 叶依が呼んだの?」

「ううん。なんかびっくりさせようと思ったって……」

「へぇ……あっ、久しぶりに会ったんだからさぁ、みんなと遊んでくれば? 僕ら四時くらいまでここにいるから」

 海輝はそう言ったけれど、休憩の後でPASTUREの新曲をする予定だった。

「良いん? PASTUREの……」

「いいよ。別に今やらないとダメなんじゃないし。札幌案内してあげたら? いろんな穴場とか」

「う~ん……じゃ行こっかな……」

 叶依が合流することになって伸尋は喜んだけれど。海輝と叶依が同じものを持っていることに気づいた時は、やっぱり気分は沈んだ。

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