2-11 プレゼントは

 叶依がラジオに出た日から、伸尋はずっとあることを考えていた。

 Uotagiraがドラマ化されるというのは自分自身も撮影に参加していたので知っているけれど、いざ自分がテレビに出るとなるとそれは見るべきなのか敢えて見ないほうが良いのか、かなり悩んでしまった。

 叶依と海輝の関係は、思い出したくはないけれど知っておきたいような気もする。けれど自分がテレビに出ているというのは、見たいものでもない。

 それに一部なら撮影で見ていたので何となくわかる。

(でもなぁ……はぁ……それよりラジオに叶依出ると思わんかったわ……しかもファックス読まれてるし……)

 叶依に『海輝と何があっても黙っていて欲しい』と言われたのに、夏にどうするのかと聞いてしまった。

 それも叶依の目の前で。

(嫌な予感するわ……)

 叶依から電話がかかって来たのは、それから数日後だった。

 ───良いよあれは。私だってラジオ出ると思ってなかったし。

「でも……聞いたのは俺やん」

 ───だから良いってもう……書いてあったやん。『叶依頼みます』って。あれでわかったから。

「あ───それで叶依───札幌行くん?」

 ───行くよ。十代最後やし。家でおっても暇やし。

「そうか……まぁ……頑張れよ」

 ラジオでは読まれていなかったけれど、あのコメントの近くには叶依を頼むという内容の文章が書かれていた。

 これは、伸尋が海輝を叶依の兄として見ると決心した証拠だった。

 もしそうでなければ『頼む』ということを言えるわけがない。叶依が海輝とどうなったのかはわからないけれど、伸尋は安心していた。

「先輩ー。今日良いっすか?」

 深沢ただし───史の弟に頼まれて、伸尋は彼に勉強を教えていた。バスケ部の後輩でもあるので、勉強を教えるのはほとんど夕方だ。

「そういえばこないだOCEAN TREEのラジオで言ってた伸尋って、先輩のことですよね?」

「……そやな」

「いや、先輩も大変やと思って。俺も彼女欲しいけどなぁ。大変そうやわ……兄貴も今遠距離してるし」

 直が言ったのは海帆のことだ。

 この二人は高校を卒業してからほとんど会っていないけれど、今も続いているらしいと叶依に聞いた。

 伸尋が帰ろうと直の部屋から出た時、ちょうど史が帰って来て部屋に呼ばれた。

「おまえさぁ、叶依……あいつのとこ行かしといて良いんか?」

「いいよ。多分問題ないし」

「多分って……俺、叶依迎えに行った時さぁ……めっちゃ怪しそうやってんけど」

「大丈夫やって。こないだ電話来て……。俺はわかんねん」


   ☆


 七月の下旬に差しかかった頃、叶依は北海道へ旅立つ準備を始めていた。

 北海道へ行くのは修学旅行を含めて十回目くらいになるけれど、毎回荷物が異様に多かった。しかも仕事関連で行く時はギターがあるので余計に重い。

「そういえば叶依、海輝君に誕生日プレゼント用意した?」

 既にカバンの中がパンパンになってしまっている叶依に冬樹が聞いた。

「あっ! 忘れてた! あーもー……そうや去年も持ってくの忘れて結局……何したっけ?」

「えーっと、去年は……隣の湖で花摘んできてあげたんじゃなかった?」

 前日の夜になっても何も準備できなかった叶依は、結局当日早起きして湖へ行き、花を数本摘んで海輝に渡した。

 きちんと包装されたプレゼントを用意していた冬樹や海輝の両親とは比べものにならなさすぎて、海輝は笑っていた。

「まさか今年も花はあかんしな……」

 しかし、いくら考えても良いものが思いつかず、結局叶依は何も用意せずに北海道へ行くことになってしまった。

 冬樹の車に荷物を積み、三人は北海道へ向けて出発した。

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