4-11 真実と現実

 叶依は元気にコンサートをしているように見えたけれど、実際は正反対だった。

 ───ええっ、あの子、なんで海輝と出てるの? あの子……伸尋と……。

 ───そんなこと私に聞かないでよ。それより叶依……そっちの世界の人間じゃないってこと知ってるのかしら?

 ───さぁ……。でも、ちょっとはわかってるんじゃない? もうすぐ十八になるんだから。

 ずっと女の人の声が聞こえていた。

 けれど叶依は驚かなかった。

 自分が地球の人間ではないことは、もうわかっていた。伸尋も同じだということも、ちゃんとわかっていた。自分たちはステラ・ルークスの王子・王女であり、いつか戻る日が来ることも、わかっていた。

 認めたくなかった。

 そんなことは忘れて普通の人間として、ずっと地球で生きていきたかった。幼少時に数年いただけの世界より、住みなれた世界でずっと暮らしていたかった。

 女の人の声が聞こえる時間は日毎に増え、高校三年になってからは、聞こえない時間のほうが珍しいくらいだった。

 その声から逃げようとして、叶依は仕事を増やした。この事実を、OCEAN TREEには既に打ち明けた。ひとりでMツボに出た日の夜、冬樹に連れられて海輝の部屋に行ったときだ。

 ステラ・ルークスに戻る日は、十八歳の誕生日───。

 けれど、いくら仕事を増やしても声が消えることはなく、他人の記憶まで見るようになってしまった。

 ───ねぇ、普通こんな早く私たちの声に気づくようになるの? 私は十八歳になったら初めて聞こえるようになるって聞いたんだけど。

 ───もしかしたら、あっちの方が早く成長するのかもしれないわね……

 ───あっ、じゃあ、もしそうなら……

 ───考えられなくもないわ。他人の記憶を見ることが出来るのは、王家の娘にだけ現れる力だから……。

『そんな力、何のために……』

 ───今はわからないでしょうけど……こっちでは必要なのよ。

『え? 私の、思ったこと……』

 ───あなたは私たちと繋がってるのよ。惑星の人たちはみんな、声に出さなくても思ったことだけで話が出来るの。

『じゃ、私が聞こえてる声が伸尋に聞こえてないのはなんで?』

 ───それはわからないわ。でも王家の血を引いてるのがあなたの方だから……伸尋は王家じゃないのよ。

『そんなん嫌や……』


「え? 叶依ちゃん、ここ嫌なの?」

「……? あ……ううん。いいですいいです」

 ラジオもMツボも収録が終わり、叶依はOCEAN TREEと野上太一の四人で、とある飲食店の前に立っていた。

(また女の人……しかも話してたし……)

 叶依はもう、どうしていいのかわからなくなっていた。

 意識しなくても、勝手に惑星に飛ばされている感じがする。

 自分の人生なのに、自分のしていることが全く頭にない。

(これプライバシーの侵害とかに当てはまるんかな……)

「叶依さぁ、今日はここ泊まって大丈夫なの? 伸尋にちゃんと言ってある?」

 いつの間にか食事も終わり、叶依は海輝の家で翌日の予定をチェックしているところだった。もちろん、食事をしたことも、移動したことも、何も覚えていない。

「あ───来る前にLINEしたから大丈夫とは思うけど……電話しようかな。───あ、伸尋? ゴメンなこんな時間に……うん、明日帰る……学校は行かれへんかもしれんけど……寮に着くのが二時くらいかな? ……うん……おやすみー」

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