2-10 朝の輝き

 それから約一ヵ月後の朝。

 悪い予感をもって叶依は目覚めた。

 自分の部屋のいつものベッド。カーテンの隙間から差し込む朝日は前ほど強くないだけで、特に変わったことはない。

 ベッドから降りて寝ぼけ眼でカーテンを開け、眩しすぎる日光を浴びながら、う~んと伸びをした。

 視界の端で何かが光った。

 海輝からもらったガラス細工のオルゴールだった。

 瞬間、おかしなことに気づいた。

(あれ? いっつもこれ光ってたっけ? それに今日、なんか明るくない?)

 ぐるっと部屋を見回して、最後に信じられないものを見た。

「うそー! もう九時?」

 急いで支度をして学校へ向かった。到着すると、学校は昼休みだった───つまり叶依が九時と思ったのは間違いで、時計の針は十二時前を指していたらしい。

「叶依、遅ーい!」

 珠里亜が叫んだ。

「ごめん、ちょっと、寝坊してん」

 全速力で走ってきたせいで、叶依は息切れだ。

「ちょっとちゃうで。もう十二時過ぎてんねんで。寝過ぎ」

「ごめん。そうや、ご飯食べな……」

 叶依は鞄を開けたけれど、

「あーっ! お弁当……作ってないんやった……」

 その声は教室中に響き渡り、全員が叶依を振り返った。

「あーもー……。食堂行ってパン買ってくるわー……って百円しか入ってないやん!」

 またもや叶依が全員の注目を浴びたことは言うまでもない。

「もういいわ……。今日は六時間で終わりやし。クラブもないから早く帰ろ」

「クラブあるで」

 海帆だった。

「今度またクリスマスにコンサートあるから、今週から練習増やすねんて」

「はぁ……。え? クリスマス? あ、いけるか。ラジオ九日やったよな」

 ふぅっ、と再び大きな溜息をついて叶依が机に突っ伏した時、

「叶依ー」

 誰かに呼ばれたけれど、聞き間違いかと思って顔は上げなかった。それでも再び呼ばれる声がして、叶依は声の主を探した。

「おまえなぁ、飯食わな元気出ぇへんやろ」

 夢を見ているのかと思った。

 前に立っているのは紛れもなく伸尋で、コンビニの袋を片手に持っていた。

「いいやん、別に……」

 本当は、好きなはずなのに。

 二か月ぶりに話すせいか、うまく言葉が出て来ない。

 文化祭の日、海輝は「伸尋とあとで話す」と言っていたけれど、その後、誰からも何の連絡もなかった。だから、伸尋とはもうダメになったのかと、諦めてしまっていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます