電脳空間の運び屋
★☆★☆★
「それから?」
ニーナがたのしげにたずねる。
「ノードをゆるがすばかりの
「クレアをスクリーンでみるようになるのも、そうとおくないってことかしら」
「お嬢ちゃんにそういったら
張りつめた空気が支配しがちな捜査局のオフィスに、やわらかな笑い声がひびいた。ニーナたちに視線をむけた他部署の捜査官たちも表情をやわらげる。
「
トラヴィスが口をひらいた。
「お嬢ちゃんがすぐに追跡してくれた。ミートパッキング・ディストリクトにあるネットカフェからの接続だったんだが、街頭の防犯カメラなんかをかわして姿をけしていたそうだ。このあいだのクンバカルナとやらとおなじ程度に、この手の行動になれている人間だということらしい」
「また面倒なのがわいてきましたね。そのうえコンピューター・アンド・プラウドまででてくるあたりがなんとも引きがつよいというか」
「有名なのか?」
「ここ数年のあいだにひろまった
気をつけろ、本人のまえでそれをいったらころされるぞ、と声をひそめたダニエルが、
「コンピューター・アンド・プラウドを追跡中だ。その噂が本当なら、すこし手こずるかもしれないな」
「で、そんな大活躍のクレアとは対照的に、教育係はなにをしてるのかしら」
ニーナがいたずらな視線をむける。
「私か? お嬢ちゃんにいわれていたサイバーテロの被害者の特定をおわらせたんだが、死亡者のリストに興味ぶかい人物を発見した。ちょっとみてくれるか」
ダニエルが
「カーティス・ドーソン、アスクレーピオスの主任技術者のひとりで専門はアンドロイドのAIだ」
「……違法アンドロイド開発疑惑の渦中の人物?」
「そうなるな」
「犯行現場ってこの疑惑をトピックにしていたんじゃなかったから」
「そのとおり。この場所で死亡した同期のデニスは、木の葉をかくすなら森のなか、という言葉をよく口にしていた」
「つまり、この場所で事件の関係者と面会してたかもしれないってこと?」
「先日アスクレーピオスのエントランスでデニスに再会したとき、まだ素性をしられたくないといっていた。組織犯罪班の
「――カーティス・ドーソン?」
「自然にかんがえればそういうことだ。そしてふたりのあいだで取引された何かが、コンピューター・アンド・プラウドにたくされた、というのはどうだろう」
「二度の襲撃がその何かをねらったものだとしたら、運び屋が危険ってことになるわね」
ニーナと
「クレアが噂の運び屋の追跡を完了したようだ。さすがわれらがヒロイン」
「ころされるんじゃなかったの?」
「大丈夫だ、聞かれさえしなければ」
「ああ、そう……」
ニーナが
「コンピューター・アンド・プラウドの接続元がわかったわ」
「本当に優秀ね。ダニエル、あなたもう必要ないんじゃない?」
「まったくだ。それでお嬢ちゃん、奴さんはどこのどいつだ?」
「施設の内部ネットワークからの接続だったから人物の特定まではできなかったけれど、いって調べればわかるでしょう」
「では、ご尊顔を拝しにいってみるか、それでどこのネットワークかな?」
「病院よ」
「は?」
「マンハッタン大学ジェイコブ医療センター」
ダニエルは
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