第116話

「ともあれ、あらためて意思を確認するわ。アタラ、メリーベル、ファルル。貴方たちはソウタの子供を身篭る覚悟はある?」


 リンからはすでに意思確認ができているのでエリはあえて問わなかった。


「陛下、私は閣下との子は切に望むところ」


 アタラはいつものように淡々と答える。


「アタシは閣下に抱いてもらえたらそれでいいんだけどね。まあ孕んじまったらその間できなくなっちまうけど、出来たんなら当然産んでやるよ」


「で、その時はどうするの?」


「そりゃあ女王陛下に献上するよ。アタシに子育てなんてできるとは思えないからね。あ、でも顔見たら変わっちまうかもしれないけど……。まぁどの道、陛下にもしっかり世話になってるから、借りを返すためにもこの国の悪いようにはしないよ!」


「ありがとうメリーベル」


「わ、わたしは……」


 ファルルは緊張して言葉が中々出てこなかったが、ようやく絞り出てきた。


「い、いままで村で子守をたくさんしてきたので、子守は大丈夫です!」


 ファルル以外の全員が思わず笑い出してしまう。


「も、もちろん子供を作るのは不慣れですが、せ、精一杯頑張ります!」


 さらに笑いが大きくなる。ファルルは顔を赤らめて小さくなってしまった。


「大丈夫だよルルちゃん。みんなそれは同じなんだから」


 ヒトミが優しく声を掛ける。


「だからみんなでがんばりましょう……」


「そうよ。それに抱かれるからには自分たちも気持ちよくならないといけないわ。だって純粋に仕込むだけならソウタをふん縛って搾り取ってから各々に注入すればいいんだから」


「でもそんなのは勘弁だよ。そんなんだったらアタシはとっとと降りちまってるよ」


 メリーベルの言葉に全員が頷く。


「じゃあローテーションだけど……、私とヒトミは本妻だから当然優先させてもらうわ。その上でだけど」


「奥方、陛下、宜しいか?」


「アタラさん、どうぞ」


 アタラが挙手したので発言を許可した。


「奥方に感謝する。我が白エルフ族の女は受胎期間が定まっていて、それはおよそ一か月程度なのだ。そして私は先日それを迎えている」


「そういえばそうだったわね」


「だからしばらくは私に多く機会を回して頂けないか?期間内であれば他の部族より遥かに高率なのだ。その代わり期間終了後は皆無になるから一切無しでも甘受する」


 アタラは今のうちでなければ受胎できないので、機会を増やすように求めた。


「わかりました。理由が理由だから、アタラはしばらく私やヒトミと同じ頻度にするわね。期間終了後はしばらく前のヒトミみたいに誰かの同伴としましょう」


 エリはアタラの申出を快諾。期間終了後も他の誰かとの同伴で許可するというのだ。


「陛下、宜しいのですか?!」


「だって皆無なんてあんまりじゃない!」


「有難い。あの快楽は平時でなお忘れられるとは思えなくてな……」


 顔を赤らめ体をすくめるアタラ。参加者一同もその気持ちが良く分かるので微笑んでいた。


「他にも予定日に体調が優れなくなるのはあり得るから、その時はすぐに申し出て。順番を代わってもらうことにするから」


 一同から異議は出なかった。


「あとエリちゃん。実は出撃前にアタラさんとメリーベルさんとは、四人で旅行しようって約束してたの」


「わかったわ。命を張ったんだからそれは当然ね。一ヶ月以内には何とか予定空く様に協力するわ」


「いよっしゃ!」


「陛下、申し訳ない」


「これは恩賞よ。気にする事はないわ」


 こうしてカレンダーに誰がいつ受け持つかが書き込まれていく。無論、そこにソウタの都合も意思も介在して無かった。


「とにかく、時間は絶対に無駄にできないわ。全員授かるのを目標に、しっかり頑張りましょう!」


 こうして女たちの会議は終了したのだった。


「……。ソウタ、そういう訳だから、これからは昼よりも夜の方を重点的に頑張ってもらうわよ!」


 完全に土気色になるソウタ。夜を頑張るのはともかく、眼前の6人同時は身が持たないと臆していたのだ。


「大丈夫だよソウタくん。“毎日”私たち全員を一度に相手して欲しいなんて言わないから」


「ほ、本当だよな?」


 ヒトミの言葉を聞いて多少顔色が戻るソウタ。


「そりゃそうよ。だってソウタは一晩に何回できるの?私たち全員相手に三回ずつ毎晩できるんなら問題ないけど、いくらなんでもそれは無茶でしょ?」


「ああ。無理だ。絶対に無理だ……」


 断言するソウタ。エリは当然だろうと数回頷く。


「あと受け入れる側の体調があるから、基本的に一晩に一人から二人。時々三人同時ってところね。で、予定はこんなところよ」


「……」


 先ほど書き込みがされたカレンダーを見せられて思わず顔が引きつるソウタ。


「なあみんな、本当にこれでいいのか……?」


 カレンダーの日付には執務は週二日の休みが確保されていたが、営みに休みは無いどころか、休日の方にこそ重点的に予定が詰められていたからだ。


「そりゃそうよ。平日は基本夜だけしかできないでしょうけど、休日は朝・昼・夜、休み挟んでできるでしょ」


 あっけらかんと告げるエリ。


「前にも似たような事言ったけど、ソウタの体力の事だけ考えるなら、毎日一回分搾り取って、それをみんなで分割して注入し続ければいいのよ」


 ソウタは決戦に赴く直前に、ヒトミから冗談めかして提示された光景を思い出す。


「でも私は嫌なの!というか誰だって嫌よ!愛も快楽も無い種付け作業なんて願い下げよ!」


 その言葉に一同が頷く。


「そういう訳だからソウタくん、精一杯がんばって!」


 ヒトミの言葉に弱々しく頷くソウタ。


「あ……ああ、精一杯頑張るよ」


 全員からの期待の眼差しが痛いほど刺さるのを感じる。


「で、早速今からなんだけど、せっかく全員揃ってるんだから、このまま手ぶらで帰すのはもったいないわ」


「まさか」


「だからソウタくん、早速頑張ってね!」


「oh」


 ヒトミの無垢な笑顔にソウタは思わず言葉を漏らしてしまう。と、同時にメリーベルが嬉々としてソウタをベッドに押し倒した。


「さあ六番勝負の先鋒はアタシだよ!閣下、腹ぁ括りな!」


 ソウタを呼びに行っている間に行われたくじ引きで、すでに順番は決められていたのだ。


 メリーベルが上を脱ぎ捨てると、ソウタは目を逸らして周囲を眺める。エリは顔をニヤつかせ、ヒトミとリンは羨ましそうに、アタラは表情をまったく崩さず、そしてファルルは顔を赤らめつつ食い入るように見つめていた。少なくとも止めようとする者は誰もいなかった。


「わかったよ!今夜は全員相手にしてやるさ!」


 開き直ったソウタに皆から喝采が送られる。


「さっすが閣下!そうこなくちゃ!」


 メリーベルがソウタに覆いかぶさり、その体でソウタを埋めてしまう。


 かくしてこの夜は一人一度ずつ、六人を相手にソウタは精を出す事に。そして最後にヒトミと伽を終えると、ソウタは力尽きて気絶するように床に沈んでしまったのだった。

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